第2話 俺だけ経験値が0にならない?

ビルチの両親が出してくれたシチューが口に運べなかった。

その様子を心配して声をかけてくれるが


「ごめんなさい。変なスキル貰っちゃった」


そう言って俺は料理を残して部屋に閉じこもった。



翌日から俺はハブられた。


みんな仲のいい奴らでパーティを組んで今日からモンスターを倒したりしてレベル上げをするらしい。


冒険者をめざしてるんだみんな。


そんな中俺みたいなゴミスキル持ちなんて誰も必要としなかった。

今まで仲良くしてくれてた奴からも見捨てられた。


他の奴らはサクサクレベルが上がっていくのに俺だけは獲得経験値1のせいで大幅に成長が遅れてしまう。


俺だけ、どのパーティにも入れて貰えなかった。


ビルチだけは近寄ってきてくれたけど俺から拒否した。


みんな俺の何倍もの速度で成長していく。

そんな成長速度に獲得経験値1で追いつける訳がなかった。


俺と他の奴らがスライム2体倒した時に生じる経験値差は2。

2体でこれだ。それをどんどん増やされたらいずれその差は凄まじいものになる。


100にもなるだろうし200にもなるだろう。


勝ち目なんてなかった。

でも


「ビルチのためだ。ちょっとでも強くならないと」


こんな無様な俺でも結婚してくれるって言ってくれるビルチのために恥はかかせたくない。


そんな俺は今日も1人でスライムを倒し始める。


みんながレベル3とかになってる中、俺は2になるのが限界だった。

この差はどんどん広がるんだろうなと思うと落ち込むしか無かった。


それと、俺が転生者じゃなければ現実をもっと甘く見ることが出来たのかな?



そんな日々が3日間続いた。


今日もスライムを倒しに行くのだが俺のレベルはやっと3になったところ。次のレベルアップに必要な経験値量は20だった。


俺はスライムを20体倒さないと次のレベルに上がれない。


だと言うのに他の奴らは既にその域を抜けていてレベル4とかになっていた。


俺の何倍もの速度で成長している。

そんなヤツらの話が聞こえた。


「そろそろスライム倒して得られる経験値が減衰しだしたよなぁ。レベル3の時に倒して得られる経験値が1になっちゃったし」

「レベル4から0だったよなたしか。狩場変えないといけないよな」


そんな会話が聞こえてきた。

話しているのはディーザ達のパーティだった。


そんなディーザが俺に目をやって近付いてくる。


「あーあ。俺達もお前と同じになっちまったよォ?アイル?スライム倒して経験値1だぜ?1?可愛そうだよなぁ俺たち」


うざったらしく話してるのは狙ってやってるんだろう。

でもそんなものに引っかからない。


「あ?お前もっと可哀想だったな。何せ初めから1固定だもんなぁ。かわいそーーーーー。まぁ俺たちは今日から基本経験値3のゴブリン狩ることにするわ〜」


そう言ってパーティメンバーのところに戻っていくディーザ。

そいつを横目に見て俺は今日もスライムを倒しに行く。


「はぁ、はぁ、」


朝から日が暮れるまでスライムと戦っていた。

そろそろ20匹は倒せたはずだ。


レベルアップ表示は見ていない。虚しくなるから。


でもそろそろ確認しておこう。


ディーザ達の話ではレベル4に上がった時点でスライムを倒したら経験値が0になるらしいし、あんまり経験値を無駄にしたくない。


そう思って


「ステータスオープン」


名前:アイル

レベル:4

次のレベルまで:15/35


「え?カウントされてる?」


どういうことだ?


たしかにディーザ達は言っていた。


レベル4からはスライムを倒しても経験値は0になると。


「スキルの効果、なのか?これは」


そう思いながら俺はその辺を跳ねていたスライムを倒す。


表示されるウィンドウ。


【アイルがスライムを撃破しました。経験値減衰がかかります。獲得経験値0】


0?じゃあ、あの既に獲得してる15の経験値はどこから?そう思っていたら


【アイルのスキルが発動しました。経験値を1獲得しました】


更新されたウィンドウの文字を見て俺は変な声が出た。


「え?」


驚きながらまじまじとスキルウィンドウを見てからもう一度ステータスを見てみる。


次のレベルまで:16/35


経験値が加算されていた。


まさか?!


このスキルは本来0になる経験値も1にしてしまうのか?!


次のレベルまでに必要な経験値量は19か。

もう少しスライムを倒してみよう。


そうして俺は20匹のスライムを倒してやっと帰る事にした。

もう既に真っ暗だった。


怒るだろうなぁ、みんな。

そう思いながら帰宅する。


「た、ただいま」


ビルチの両親達が駆け寄ってきた。


「アイル?!どこへ行ってたんだ?!」

「心配したのよ!」


2人とも俺のことを心配してくれていたらしい。


「ごめんなさい。ちょっとスライムを倒してて」


そう説明すると


「す、スライム倒しなんていつだって出来るだろう?」

「そ、そうよ。帰ってきなさいよ早く」


そう言ってくれてる2人の前で俺は


「ステータスオープン」


名前:アイル

レベル:5

次のレベルまで:1/50


となっているのを見せた。


「そ、そんな何でレベル5なのだ?」


それを見た父さんが驚く。


「す、スライムを倒してただなんて嘘だろう?」


俺の肩を掴んで前後に揺すってくる。


「ほ、本当のことを話しなさい。スライムを倒しても経験値は減衰するだろう?!スライムだけでレベル5になれるわけがない!」


そう否定するけど。俺本当にスライムしか倒してないんだよな。


「た、多分スキルの効果で経験値0になってなかったんだと思う」


そうやって報告する。


「な、何だって?!それは本当なのか?!」

「うん。だって、スキルが発動して1貰えたから、経験値」


な、なんて事だ。と呟く父さん。

何か不味いことでもしたかな?とか思うけど


「と、とにかく明日からは早く帰ってきなさい。分かったね?」


そう注意されたので頷くしか無かった。

そうだな。心配させるのは良くない。

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