第26話 やべぇのいるんだけど
翌日。
ギルドに用事があったので足を運ぶ。
「はぁ、冒険者じゃないのにギルドに行くなんてな」
一応冒険者ではあるけど同行以外で冒険に行ったことは無いしな。
ギルマスのルーシーを呼び付けて俺は依頼されていた書類を提出する。
なんか街の改善案を書いて出せとか訳のわかんないアンケートみたいなものだった。
その時俺の他にもその紙を持ってきた女の子がいた。
先に目を通すらしいルーシー。
見る見る顔が赤くなる。
「誰が官能小説を書けと言ったばか!」
その紙を少女に突き返すルーシー。
「書き直しだ!通ると思ったのか!」
ふえぇ頑張って書いたのにーと少女は出ていった。
変わった奴がいるなぁなんてことを思いながらルーシーのチェックを待っていた時だった。
バタン!!!!
ギルドの扉が大きな音を立てて開く。
そこにいたのは
「うぐ……」
シノだった。
頭から血を流して這うように中に入ってきた。
「シノ?」
ギルマスは直ぐに駆け寄る。
「私また負けちゃった……アイルお兄ちゃんに」
そう呟く彼女。
俺はここにいるんだけどな。
何の話だ?
そう思っていたらルーシーはシノを抱えてこっちにきた。
やべ。なんか冤罪じゃない?
「俺じゃないよ」
「だがアイルと言った」
ルーシーはそう言ったが思い当たる存在が俺にはいた。
その時そいつがギルドに入ってきた。
「いやー、ごめんね。急に襲いかかってきたから、力加減間違えちゃったー。大丈夫ー?お嬢ちゃん」
と、入って来たのは俺と瓜二つの存在。
兄貴のアーロイだった。
10年以上会ってなかったけど間違えるわけもない。
俺とアーロイを見比べるルーシー。
まぁ見分け方はあるけど。
アーロイの右目は潰れていた。
俺と別れたあとに付いたのだろう。縦に傷があった。
その右目に眼帯。
「な、何者だお前」
その質問には答えずアーロイは俺の近くまで歩いてきた。
「あれー?誰かと思ったらまさかアイル?」
俺の全身を見てくるアーロイ。
「うわーやっぱりアイルだ。10年ぶりくらいかなー。いやー悪いね俺がお前の能力全部吸い取っちゃって」
悪びれる様子もなく口にするアーロイ。
それからルーシーに目をやった。
「申し遅れたけど俺はアーロイ。王家直属の暗部の部隊さ」
そう口にしたアーロイだが、口を滑らしたことに気付いたらしい。
「あっ、やべ、暗部だから秘密なのに言っちゃった」
てへっという顔をする。
まぁいっかとアーロイが言って更に続ける。
「ステータスオープン」
名前:アーロイ
レベル:98
攻撃力:70
防御力:68
素早さ:80
魔力:94
スキル1:竜王の加護EX
スキル2:精霊王の加護EX
スキル3:神王の加護EX
スキル4:魔力回復速度UP EX
スキル5:攻撃力UP EX
スキル6:防御力UP EX
・
・
・
・
スキル94:ダメージ軽減EX
【スキル適応後の数値】
レベル:98
攻撃力:52488
防御力:48565
素早さ:62583
魔力:78052
俺の知らない加護とかスキルがズラーっと並んでいるアーロイ。
何十個ものスキルが見切れる程のスキル量。
シノも神に愛された人間だけどこいつは別格。
神に寵愛されている類の人間。
「な、何だ……このスキル数」
1番驚いていたのはルーシー。
俺は知っていたから別に何とも思わない。
「これ、全部アイルから奪い取ったものさ。悪いねアイル」
そう答えるアーロイ。
実際のとこ奪い取ったのかどうかは知らないけど俺は加護なんて1つもないのにこいつだけ山のように盛られて生まれてきた。
だから比較されて俺はいつも可哀想って言われてた。
全部才能を吸われたんだろうなぁって。
「アイルには悪かったと思うけどねー。俺だけこんなに持っててアイルは何も持ってないんだからー。いやー1つくらい分けてやりたいけどねー」
そう言ってアーロイはステータスを閉じると俺を見てきた。
「まぁいいや。こんなところで会えると思わなかったな。じゃあ、俺これから王城に帰るから、また会おうぜ」
アーロイは去り際にクエストの依頼書を俺に突きつけてからギルドを出ていった。その際に「いやー、強かったわー」と口にしていた。
「あ、あんなのが兄なのか?アイル」
聞いてくるルーシーに頷く。
そう。
ゲームに出てきたらクソキャラ一直線だろうとしか思えないバケモノこそが俺の兄。
ちなみに当然ながら喧嘩して勝てたことは1度もない。
そもそも触れることすらできなかった。
勇者やシノとは文字通り別格の存在。
でもあいつ、右目無くなってたよな。
あれ、俺と別れてからあいつに触ることが出来たやつがいるってことだよな。
どうやったんだろう?
ま、気にしても仕方ないか。
あんなものスルー推奨敵だからな。ほら、いるだろ?ゲームでもスルーしなきゃいけない敵。あいつはその類。
そもそも戦わなくていいんだよ。
そう思いながら俺は押し付けられたクエストの依頼書を開いた。
クエスト名:極秘任務105
クリア条件:怨念に支配されしデーモンスライム(レベル235)一体の討伐
攻略状況:1/1
参加人数制限:1人まで
難易度:測定不能
詳細:最近深夜に巨人スライムの化け物が草原や森に出現するとの噂がある。これの真偽を確認し可能ならば討伐せよ。
俺が臭いからと蓋をして考えないようにしていた化け物の討伐依頼書だった。
討伐したのか?あれを?うん。ほんとにバケモンだな、あいつ。
てか極秘任務って書いてるのにこんなもん寄越していいのかよ。
でもさ。この化け物後1体いるんだよね。
俺は見ないフリを続けるけどさ。
しーらね。臭いんだから蓋しとけばおっけーだよね。
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