第29話

一応、夜が明けるまで待ってからルーシーと外に出てきた。

その際に


「ありがとうございますアイルさん。あなたの声がなければもう少しで落ちてきた瓶で怪我するところでした」


と冒険者に感謝された。

これからも同じように対応してくれと伝えてから街の被害状況を確認していく。


魔法でこらえている人達が大勢いて大事にはなっていないが。


「さっさとあのスライムどうにかしないともっと被害が出るよなぁ」


呑気に俺の手を取ってこようとするルーシーの両肩を掴んでお願いする。


「ルーシー。王城に行ってくれないか?」

「えー、地震怖いよぉ」


あんた何歳だよ。

まぁいい。


「分かった俺が行く」


正直また行き直すの面倒臭いんだけど。




王様にはまた地震が起きるかもしれず、その際生活インフラが止まる可能性があることを話して、各家庭で水とか用意しとくように伝えてくれと話す。


わかったと答えた王様を見てから俺は訓練場へ向かった。

その際もう少しサボりたかったけど訓練場へ向かう。

沢山の候補生がそこにはいた。


「全員聞いてくれ。俺が君たちの練習を見るように頼まれたアイル」


そう名乗ると


「え?!アイルさん?!」

「本物だぁ!!」


みたいな歓声が響く。

そして女の子がかなりの数俺のところに寄ってきた。


「アイルさんが教えてくれるんですかぁ?!うれしー」

「アイル様!アイル様!何を教えてくれるんですか?!」


そんな声が届く中俺は数名ばかりいた男の候補生を見たが誰も近付いてこなかったが声をかける。

しかし


「ちっ。うぜぇ、だりぃ」


そんな言葉を残して数名の男たちは去っていった。

あーあ、俺しーらね。


この緊急時というのに自己中な奴らだな。

途中で店によってイレーナ達にスライムを投げ入れるように伝えてあるのでとりあえずレベリングから始めよう。


「わー!すごい!ほんとにレベルが上がった!!!!」


少女達が喜んでいる。

平均レベル30くらいだった少女達のレベルは60になっていた。


そのレベリング中にこれからの流れは説明してある。

まず砦に向かい砦に魔力を込めること。


魔力を込めると後は勝手に魔道具が火を吹かしてくれる。

その後は一旦下がって大魔術の準備に入り、大魔術でとどめを刺すこと。


ちなみに候補生は女の子が60人くらいで後数人男がいるだけだ。

この異常な比率は旧勇者ユシャーの要望らしい。


あいつはビルチにしか手は出さなかったらしいけど。


「はぁ、面倒くさがらずに低レベルの内に処理しておくべきだったな」


呟いて候補生を連れて砦に移動する。

その際は一応男共も着いてきていた。


王都を出る時にちゃんと参加しているかのチェックがあるので。それのためだろう。


王都を出ると砦が予定通り出来ていた。

後俺に出来ることは無い。


候補生に任せよう。

流れは説明してある。


「はぁ、 」


溜息を吐いて砦内の司令室の椅子に座る。

何でこんなことなってんだ。


俺ただの経験値屋さんじゃんよ。

まぁここでサボったらこの王国自体消えるから動くしかないんだけど。

王様はアーロイを最後まで使わないらしいし。


個人的な理由もあるけど、アーロイに追いつきたいっていう気持ちもあった。


あいつはこの化け物を倒した。たった1人で。


俺は誰かの力を借りる形になってるけどそれでも、アーロイには頼らずに倒してみたい気持ちもある。


窓から覗いてみるとスライムが燃えながら王都に向っていた。


体力:258/586


砦の火で大分削れているらしい。

それから巨人自体の大きさも小さくなりつつあるように思う。


スライムには悪いんだけどこれがこの世界なんだよ。

お前らには俺の経験値になってもらう。


このまま何も無いといいんだけどさ。

こういうボスって基本的に第二段階目とかある訳じゃん?


それを見越して俺は候補生達に異常を感じたら下がるように伝えてあるんだが男連中は効いていなかった。


ふと窓を見ると


「オォォォォォォォォォォォォォォ」


スライムが天に向って咆哮していた。

候補生達に下がるように叫ぶ。


女の子たちは黙って指示に従うけど男共はだるそうにちんたら歩いてスライムを殴っていた。

次の瞬間、パーーーーーーン!!!!!!


とスライムが破裂。


男共は消し飛んだ。


ほら、言うこと聞かないから。

第二段階あるかもしれないって言った時も「はい、はい」って言ってただけだからなぁあいつら。


「オォォォォォォォォォォォォォォ」


そうしてまた歩き始めるスライム、だったが


さっきの爆発は体力を削って使うものなのか、


体力:13/586


となっていた。

数秒後


「オォォォォォォォォォォォォォォ」


体力が0になってその場で立ち止まり消滅していくスライム。


「やたーーーー!!!倒しましたーーーーー!!!!!」

「あの化け物倒しちゃったーーーー!!!!!」


と喜んでいる女の子達。

俺は司令室を出て彼女達を迎えに行く。


大魔術まで要らなかったな。

保険が強すぎたようだ。


「アイルさんのお陰ですね!!!!」

「死んで行ったのはアイル様の言うこと聞いてなかった男の子だけですし、作戦は大成功ですね!」


そんなことを言ってくる彼女達。


「大魔術前に終わったのはやっぱりこのアイル様の砦が凄いからなんですかね!」

「すごいですアイル様!!これ王様に言って国の周りに作ってもらいましょうよ!!!」

「アイルさん。後でデートしてください!」

「あんただけずるーい。私も」

「私もしてくださーい」


そんなことを言ってくる彼女達を連れて俺は王都に戻ることにした。

正直悪いんだけど誰1人名前覚えてない。


学校の教師の大変さがよく分かるよ。

俺一人も覚えてないもん名前。


ちなみにこの砦は後に【アイルの鉄壁要塞】と名付けられてこの王国の周りに張り巡らされることになるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る