第22話 この世界でこの効果を有効的に利用できるのは俺だけ


翌日。

王城にやって来た。


俺は出来るだけレベリングをしてから来たけど


名前:ユシャー

ジョブ:勇者

スキル:勇者の加護

スキル詳細:常時ステータス1.3倍


レベル:70

体力:120

攻撃力:65

防御力:60

素早さ:60

魔力:60



名前:アイル

レベル:83

次のレベルまで:150,000/290,000

体力:150

攻撃力:83

防御力:80

素早さ:85

魔力:80


にはなったけどユシャーはあのステータスから1.5倍になる。

全てのステータスが俺より上回ることになる。


そして俺には何も無い。

普通にぶつかり合えば確実に、絶対に俺が負ける。

決まっている事だこれは。


今回のユシャーは腐っても勇者だ。

練習には打ち込んできているしシノのように簡単には行かないだろう。


だから確実に負ける。

初めから負けるのなんて確定してる。


どんな馬鹿でもわかる。


「逃げずにここに立てていることは褒めてやるよ。ゴミスキル野郎」

「そうよね。ダーリン。こんなゴミスキル野郎に負けないでよ」


すっかりビルチもうしらないひとは勇者のケツ持ちをしていた。


「はっ。ゴミスキル野郎。お前には応援の一つもないようだな?」


勇者が周りを見た。

確かに今この場にイレーナ達はいない。


ユイ達はいたけど勇者法がある手前下手なことは口にしないように伝えてあるし理解してるんだろう。


俺とユシャーが睨み合っている中ギルマスのルーシーが現れた。


「この決闘には両者同意していると聞く。私の合図で始めるが問題ないか?」


どちらかと言えば勇者法がある手前俺は断れないから同意せざるを得なかったんだけど。

頷いて答える。


「はっ。俺ももういいぜ。怪我は治ったからな」


ユシャーは杖を捨てた。


「さぁ、始めようやゴミスキル野郎」


ユシャーは剣を抜き俺はナイフを抜いた。


「始め!!!!!」


ルーシーの手によって戦闘が開始した。


「がっ!」


数分後、俺は壁まで突き飛ばされていた。


「げほっ!げほっ!」


咳き込んで迫り来るユシャーを見上げた。

強いなほんとに。これが勇者か。


でも俺だって粘ったんだぜ?


現状の戦況はこうだった。


名前:ユシャー

体力:58/120


名前:アイル

体力:28/150


俺は誰でも覚える汎用スキルを使った。


「スキル発動、ガッツ」


【アイルがガッツを発動しました。次に体力0になる時体力1残して耐えます】


呟きながらユシャーの攻撃を避けて追撃を入れる。


しかし


「がっ!」


相打ち覚悟でユシャーの振った攻撃をモロに貰った。


【ガッツが発動しました。体力1で耐えます】


名前:アイル

体力:1/150


レベル:83

次のレベルまで:289,999/290,000


そんな俺を見下ろしながら近付いてくるユシャー。


「はぁ、はぁ、しぶてぇなお前。ここまで耐えた事は褒めてやるよ。こんなに体力削られるなんて思わなかったぜ」


剣を引きずりながら近付いてくる。

そんな事しなくちゃならないくらいには、あいつも相当疲れているらしい。


誰かここまで耐えたことを褒めてくれ。

俺みたいなノースキルがここまで耐えたんだぜ?

誰も褒めてなんてくれないけどさ。


「なぁ、勇者」


俺は勇者に話しかけた。

時間稼ぎでも何でもない。

もう勝てると思って、最後に種明かしでもしてやろうかと思って。


「あ?何だよ」


俺を見てくる勇者。


「俺が何でここに一人で来たか分かる?」

「見捨てられたんだろうが?」


何を分かりきったようなことを、と口にするユシャー。

そんな俺の顔を見てそういうことか、と呟く。


「お前の店にいる女も路頭に迷わないように全員俺が貰ってやるからよ、感謝しろ?」

「はっ」


鼻で笑う。

はははは、何を勘違いしているのやら。


「なんなんだ?お前どうしようも無くて笑うしかねぇのかよ?」

「勇者パーティ候補の女の子達がいないのは何でだと思う?」

「サボってんだろうがよ」

「昨日注意されたのにか?」


こいつは昨日自分で注意したことを覚えていないのだろうか。

サボるなと。自分で女の子達に言ったのに。

なのに、彼女たちがサボるとでも思ってるのだろうか。


「俺に味方してくれたんだよ」


そう言いながら立ち上がる。

もうおしまいにしようか。


【アイルがスライムを1匹撃破しました。経験値を1獲得しました】


この表示はユシャーにも見せてやる。

本当はこんなところでレベルを無駄に上げたく無かったんだけどな。


俺の切り札が減るし。


「お前にこれ以上ない絶望を見せてやるよ」

「な、何のことだよ?」


【アイルのレベルが上がりました。レベル83→84】


名前:アイル

レベル:84

次のレベルまで:0/300,000

体力:151

攻撃力:84

防御力:81

素早さ:86

魔力:81


【レベルアップにより体力回復効果発動。アイルの体力1→151】


そう、これが俺の切り札。

俺の自動レベリングシステムは常に動かしているから戦闘中にだって経験値が手に入り、レベルが上がる。


俺だけこの世界のレベルアップによる体力回復する仕様を戦闘中に戦略として使える。


「な、何だよ、体力回復?!そ、そんな馬鹿な!!!!」

「知らないのか?レベルアップによる体力回復効果を」


この世界では基本的にレベルアップは戦闘後に行われるもの。


だから今ここ戦闘中に回復したのは本当に予想外だったのだろう。

俺は聞いてやる。


「問題です。ここからお前が勝てる確率はどれくらいあるでしょうか?」


レベルアップ前に削りきれなかったのは痛かっただろう。

残念ながらこのラウンドで俺の勝ちだ。


この決闘に関しては俺だけ体力2倍だったのだから。


「じゃあな!ユシャー!」


ザン!!!!!!

俺は背中に背負っていた剣を抜いてユシャーを切り付けた。


「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


叫ぶユシャーの体力がどんどん減っていく。

最早逆転の目などない。


俺の負けなど有り得ない。


ドサリと倒れるユシャーを見た。

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