第4話 ゴミ×ゴミは?

エンカウント倍加。


前世の記憶と照らし合わせてみると敵とのエンカウントが増加するというだけのスキルだと思う。


実際にイレーナがしてくれた説明はそれと同じものだった。


「ちょっと前は私だけのユニークスキルとして王都に呼ばれたんだけど。半年で要らないって送り返されちゃったよ」


そう呟く彼女。

俺たちの前でスライムがふよふよと跳ねている。


「こんなスライムしかいないところで何をするの?」


そう聞かれて俺はとりあえず俺はその辺にいたスライムを1発殴る。


【アイルがスライムを撃破しました。経験値を1獲得しました】


「え?!スライムで経験値貰えるの?!」


驚く彼女。

王都にいただけあって流石に経験値減衰のことは知っているようだ。


「俺のスキルは経験値を1しか入手出来ないんだけど逆の言い方をすれば1絶対に貰える」


そこで考えてたずっと。

俺はスライムを殴り続ければ経験値を稼げてこつこつレベルをあげることはできるけど、自然湧きだけではどうしても効率が悪くなる。


そこで俺はスライムの数を増やせたらなぁって思ってた。

そんな時に来たのがこのイレーナ。


再度湧いてくるスライムを指さしながら頼む。


「スキル使ってみてくれないか?」

「う、うん」


イレーナがスキルを発動する。


【追加エンカウントが発生しました。スライムを1匹追加します】


合計2匹になったスライム。


俺のスキルは1匹辺りの獲得経験値が1固定なだけでまとめて倒しても獲得経験値が1にはならないことは既に確認してある。


【アイルがスライムを2匹倒しました。経験値を2獲得しました】


「す、すごい!経験値が2も貰えてる!普通0なのに!」


そう言ってるイレーナの肩に手を置いて俺は口を開いた。


「ほら、君のスキルはゴミなんかじゃないよ。俺のスキルと相性がいい。手伝ってくれないかな?俺のレベル上げ」


そう言うとイレーナは顔を俯けた。


「ごめん、言い方悪いけど要らなくなったら捨てるんでしょ?」

「そんなことしないよ」


そう言って俺は彼女に自分のステータスを見るように言う。


「ス、ステータスオープン」


ステータスを開くイレーナ。


名前:イレーナ

ジョブ:聖女

スキル:エンカウント増加

レベル:30

次のレベルまで:2/19400


「わ、私の経験値も増えてる!ど、どうして?」


俺は自分のスキル欄をイレーナに見せる。


パッシブスキル:

・獲得経験値1固定

・経験値シェア


「この2つ目の経験値シェアは仲間に自分の手に入れた分だけ経験値を配れるんだ。今はイレーナの分しか配れないけど」


そう言ってこのスキルを手に入れた時のことを思い出す。

レベルを上げているとスキルを覚えることがあるんだけど俺の場合覚えたスキルがこれだった。


「君だけ置いていったりしないよ。俺と一緒に強くなろうよ」


そう言ってイレーナの目を見るとジワジワと涙を流し始めた。


「ひ、ひっぐ……うぅ……」


そうしてしゃがみこんでしまう。


「ど、どうしたのさ」

「う、嬉しくて、今までこんな優しいこと言ってくれる人いなかったから」


そう言ってギュッと俺に抱きついてくるイレーナ。


「約束。私の事、捨てないでね?」


そう耳元で囁いてくる。


「捨てないさ」


そう答えてイレーナの背中をポンポンと撫でる。


「嬉しいよ。アイルが私のスキル使っていいって言ってくれて。いつも敵を増やすことしか出来ないゴミスキルって言われていじめられてたの」

「今度いじめられたら言いなよ。そんなヤツ俺がぶっ飛ばしてやるから」

「うん。ありがとうアイル」


そう言って俺は小指を立ててイレーナに見せる。


「ほら、約束するよ」

「う、うん!約束だよ!」


俺たちは小指を絡めて約束する。

この先2人で強くなっていこうって。



その後2人でスライムを適当に倒して今日は早めに終わることにした。

前みたいに怒られても嫌だし。

今日はイリーナもいるしあんまり遅くまで出来ない。


「だ、誰かと手を繋ぐなんて久しぶりだよアイル」


俺の手を見ながらそう言ってくるイレーナ。


「アイルの手あったかい」

「そう?」

「うん。あったかいよ。アイルの優しさが伝わってきてる感じするよ」


そんな会話をしながら俺は家に戻った。


ビルチの両親に出されたご飯を食べてから部屋に戻る。明日はどうしようかなぁとか考えることにしたんだけど、コンコンと部屋をノックされた。


普段ビルチの家族は俺にあんまり干渉してこないんだけどな。


「どうぞー?」

「は、入るよ」


入ってきたのはパジャマ姿のイレーナだった。


「どうしたの?」

「一緒に寝てもいいかな?そ、その一人は寂しくて」

「別にいいけど」


そう答えると笑顔になったイリーナが俺の布団に潜り込んできた。

俺は目を合わせるのがなんだか恥ずかしくなってきて反対側をむく。


「アイルー?明日は何するのー?」


無邪気に聞いてくるイレーナ。

明日か。


いつも通りならスライムをぶん殴って一日を終えるつもりだったんだけど。

俺にはそれしか出来ないし。

でも


「新しいことに挑戦したいと思うんだよね」

「新しいこと?」


不思議に思ったのか聞いてくる彼女に頷く。


俺は布団から出ると本棚に入れてある必要経験値表を手に取った。


そこにはレベル31で必要経験値21,000レベル32で23,000とある。


いくらイレーナのスキルがあるとは言え1レベル上げるのにスライム1万体以上倒すのは骨が折れる。


とは言え俺はそれを今までやってきた馬鹿なんだけど。


「もう少し楽に出来ないかなーって思っててさレベリング」

「そうなの?」

「うん。それに付き合って欲しいかなって思って」

「うん!私に出来ることがあったら言ってね」


そう言ってくれるイレーナ。

さて、明日も早くからスライムをぶん殴りに行く予定だから今日はもう寝よう。


「おやすみイレーナ」

「おやすみアイル」


俺たちは互いに挨拶をして寝ることにした。

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