第27話 唐突な暴露話
マイコーさんが、『大事件だ』という。
「事件?コンビニさんがとうとうコンビニ運営に舵を切ったとかですか?」
「それは、まだ先。そー娘に子供が出来たって、相手がモジャ夫」
「うわぁ」
何かと失礼な行動が多いCチームリーダー:モジャ夫が、あのトラブルメーカー総務部長の娘:そー娘を妊娠させたわけだ。
「あれ、あの二人が付き合ってたってことですか?」
マイコーさんが解説。
「そー娘が体調不良を訴えたので、内科行ったら、産婦人科へ行くように言われ分かったって。それを、朝一で、モジャ夫にそー娘が話してた。周囲に丸聞こえでさ、みんなびっくりしちゃって。でも、付き合ってないみたい」
「なんだか分からない間柄ですね」
そっと、Cチームの席を見ると、ざわついてた。
しばらくして、またマイコーさんが来た。
「久しぶりにどうだね、『居酒屋 酔々』に招集してみては。良ければ、スズモリっちも」
「サポ班の招集場所ですね。良い飲み屋だよ、あそこ」
「行っていいんですか?」
「では、今度の金曜日に」
それから数日経ち、招集された。初招集なので、スズモリさんを引き連れて居酒屋まで歩く。先の方にサポ班メンバーが見えている。
「あの方々、仲良いですよね」
「年が近いのと、共通の話題が多いのかもね」
そんな話をしながら、店前で合流し店内へ。5人ということもあってか、座敷席に通された。個室なので、多少騒ぐことになっても、他には迷惑かけないか。
上着を脱いで、カバンを端っこに寄せている間に、注文がすでに始まっていた。
「生中5、おすすめ刺し身、ポテサラ山、辛々手羽先、だし巻きMAX、枝豆、いろいろ揚げたん、以上で」
なんか、すげぇ量だけど、一番食べるのが、サワコさんだったりする。太らない体型はすごいな。
続々と運ばれる料理をみながら、腕まくりをしたり、携帯をマナーモードにしたり、それぞれの準備がある。
「ほれ、エプロンの君よ。乾杯の音頭を取り給え」
コンビニさんが私に言う。
「高々とジョッキを持ったら、はーぃ、かんぱーい」
「かんぱーい!」
もりもり食べる皆の衆。スズモリさんが小さくなってるかと思ったけど、サポ班との飲みは経験済みなので気兼ねなく会話しながら楽しんでいるようだ。ひとまず、胃に入れたからか、話のネタが投入された。
「この前のそー娘懐妊話。あれは、2階のみんなで飲んだ時あったでしょ。あの後、モジャ夫が、そー娘とサシ飲みして一夜を共にしたんだって」
マイコーさんが話した。まだ、続きがあるようで
「それを、そー娘が普通に話してた。聞かれたら、答えるって感じで」
コンビニさんが思い出したかのように、後に続いた。
「確かにね~、私の席から見えるんだけど、角に座っているそー娘に、普段からモジャ夫が付きっきりで指導してて、そー娘は分かってないんだろうけど、モジャ夫は可愛がってるつもりなんじゃないの」
私が、ぼやいた。
「大変な二人がくっついて、総務部長は、義父と、おじいちゃんになり、ブチギレたりして」
「子供は、ギフトだけど」
サワコさんが、小声で言う。そして、顔が真っ赤になった。
「お、酔うて来たね」
マイコーさんがつっこんだ。その後も、おでんを食べながら、あれこれ話す。
サワコさんが、スズモリさんに話しかけた。
「聞いてるよ~、二人で出張が、またあるんだってね」
「はい、トナリ社長達に付いていく形です」
「そこのエプロンから、何かされなかった?」
「何も無かったですよ」
すかさず、私が割り込んだ。
「私、エプロンの民は、手出ししておりません」
マイコーさんが、ジロリと私を見て
「本当かね、スズモリンを安全に送り届けたのかね?」
「もちろんです。(今度は、スズモリっちとは呼ばないんだ)」
スズモリさんが言う。
「そりゃ~、そこのエプロンは、経理部長じゃないんで、変なことはしないですよ」
酔いって、怖いよね~。聞かれてもないのに、当人が地雷踏んで、『あ゛、余計な事言った』てなるもの。
お互いの顔を見合いつつ『それに触れていいのかしら?』という距離が近いのに、空間が歪んで遠く遠くにスズモリさんがいるように感じた。
「はい、おまちどう様です。おでん盛り合わせに、追加のサワーセットでーす」
この空気を断ち切った、お店の女将さんの勢い。流れが変わったので、皆が動き、自分達でレモンサワーを作り出す。濃いめだの、薄めが丁度いい等、ワイワイ言い出す。それくらいやらないと、気が飲まれたままだし。
でもね、すごい葛藤があったと思うんだ。この状況で、スズモリさんが口を開いた。話してもいい相手に、皆が選ばれたんだと思う。ちょっと大げさな言い方だけど。
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