前略、転職しました
まるま堂本舗
第1話 転職しました
職業というか、仕事というか、その現場で起こる出来事は、似ていることが案外多い。周りが見えない上司、言われなければ何もやらない部下、必要以上は息をひそめる同僚。しかし、その立場になってみると、同じことしてたりする自分。何か仕事しないと、生活できないので、働くのですよ。選びたいけど、選べない職種。かと言って、何でもいいわけじゃなくて、合わないことは、会社から『NO!』と言われるんだよ。
仕事のために生きてるわけじゃないんだけど、仕事が生きがいになっている。そんなんじゃないと思うんだけど生き方すら下手なんだろう。全力で振り切れる楽しみってのも、なんだか分からないからな。
無職期間って、時間があるから、閉塞感な思考になっちゃって、沈み込んでしまうよ。
年度末まで契約社員として働いていたが、契約更新・延長ならず。そういや、面接の時に期間は、延長されない、あくまで臨時採用扱いと言われてたか。
それからの職探し。要資格な専門職や離職率の高い会社の営業職ばかり求人が出ており、ずるずると無職期間が延びるわけで、精神的にもキツイ状況が半年続いた。パソコン操作は、これまでの職場環境で覚えたが転職先次第では、出来て当然!と言われるわけで、あまり強くアピールできなくなってきている。
たまたま見たCMの求人サイトをなんとなく見てみれば、求人条件が限定されすぎない会社があり応募~面接と進み、どうにか無職を抜け出せたんだ。
中途採用された会社『音成環境設備株式会社』(おとなりかんきょうせつび)といい、2ヶ月の試用期間を経て本採用になった。
配属先は、サポート班(サポ班)と呼ばれ、書類作成やデータ処理等を担当する補佐係みたいなもの。
この会社の2階にあり、サポート班への主な作業依頼は、同じ室内にあるA、B、Cの3グループ。
たまに、A~Cチームの統括部からも頼まれる。
「おーい、マルタ君。作業分担頼める?」
隣の席のサワコさんが、データ更新作業の指示を言われる。
「最優先ってやつですか?」
「ん、そだね」
サポ班は、分業でやることもあり、そのため資料も多く、私を含め4人だが、現時点でサポ班の机は7個もある。雑に資料を置かれると雪崩を起こすので、普段、物静かなサポ班が荒れることがある。
顔ぶれとして、サワコさんは、サポ班のまとめ役。冷静な分析力に他チームからも信頼が厚い。
その他に、いずれはコンビニ経営を目論む通称コンビニさんやマイケル・ジャクソンを愛してやまないマイコーさんがいる。ただ、主任の席は空いたまま。試用期間中も誰かが固定で座ることがなく統括部長が印鑑押すために座ってみたり、資料置き場になったり。
業務に慣れてきたある日、統括部長から同じ階にある会議室に呼び出された。
「仕事もだいぶ慣れてきたみたいね」
「はい、サポ班の方々が丁寧に指導して頂いてますので」
統括部長との会話だが、現状確認なのか、何かの探りか?世間話のために、わざわざ会議室に呼ばないよなぁ。
そして、その言葉は、唐突だった。
「主任代理、やってみない?」
思わず答えた。
「主任っているんですか?」
すんごい苦笑いされた。少し間があって、統括部長が説明を始められた。
元々主任はいたんだが、私が採用される前から、主任はメンタルの不調から出社できない状態になり、主任不在が半年以上続いている。最近になって、退社の届け出があったので、『代理を置きますか?』って、話になったそうな。
そこで、私が質問した。
「サポ班の先輩方おられますが、何故に自分が主任代理候補に?」
「それね。あの女性3人から断られた。名ばかり主任の役割なんだけどね」
「名ばかり? では、主任代理も同じ?」
「書類にハンコ押す権限が与えられる。あとは普段通り」
なんか臭うな~。肩書つくんだから、それなりの責任とかあるでしょうよ。以前からいる3人が引き受けないくらいだから、厄介なんだろう。
なんとも困り顔をしていると、統括部長がまた言うんだ。
「名ばかりなんで、どうにかなるよ。あと、インターネット接続権限与えられたノートパソコンも支給されるからね」
今時のネットワークセキュリティだから、閲覧許可サイト以外は見ることができない。グループリーダーや役職付きは、外部とのやりとりや情報収集が必要なため、閲覧制限がない状態となっている。
結局、『名ばかり主任代理』を強引に任命された。
拝命しましたよ、無言の笑顔圧力だったし。
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