第10話 開拓?
これまでの配属先である2階で使われていた旧会議室。それなりの広さはあるが、建物の柱があって凸凹した空間となって使いづらい。そういう理由で、いつしか、古いパソコン等機材を置く物置のような場所になった。
統括部長が、旧会議室の鍵を預かっており、中に通された。以前、そー娘用パソコンを持ち出したのは、ここだったから多少中身は知っていたが、なんとも埃っぽい。床を見れば、LANケーブルが複数転がっており、通信は出来そうだ。しかし、どうしたものやら。
「総務部長の所に行って、必要そうな道具はもらってきなさい」
と、統括部長は言い、自分に鍵を渡した。自分の荷物を置き、一旦、鍵を締め、3階の総務部に向かった。
初めて来た3階。用がないから来ることもないが、入り口から左側が経理部~総務部となっていてジロジロ見られる。さらに、奥には社長席がある。社長室を作らず、オープンな職場ってことかな?離席してるのがひと目で分かるし。『はいはい、よそ者通りますよ~』そんな感じで総務部長席へ。
「いや~、来てもらって悪いね。何でも言って」
総務部長の低姿勢な事。そりゃ、娘のせいで、アタシこんな感じになってますから~。
掃除用に使えるウェットシートや粘着シート等を受け取り、工具類が余ってないか探してもらったが見当たらず。同じ3階にあるネットワーク管理部が持ってそうだが、普段2階のBチームと帯同して現地調整なので、社内にいることが、まずないそうな。だから、無断利用・貸出は出来ないとのこと。当然の話だよ。
「申し訳ないね」
また、総務部長に謝られながら、2階へ戻る。
2階に戻ったら、戻ったで、チラチラと見られる。いろいろと話されてるんだろうよ。『アイツ、しくじったみたいよ』と事実は知らず、勝手に言われるわけだ。
旧会議室に入り、ドアを開けっ放しにして、サボってないことは見せないとな。というより、埃がすごいし、配置換えもしないと、作業がやりにくい。入り口側に長机を持ってきて、軽くバリケードのようにして、侵入しづらくして、奥で掃除をやろう。大した時間かけずとも、パソコンや資料の移動で黒のスラックスが白っぽくなった。どの色のスラックスだろうが、汚れるけどな。作業着欲しいかも。
昼休みになり、コンビニさんが覗きに来た。ちょっと表情が暗い。無言のまま、コンビニに行き、室内がまだ汚いので、昼食はパンで済ませることにした。
戻り際、コンビニさんが言う。
「憂さ晴らしの『マルタ ライブ 2days!』は、いつ開催するのかね?」
「株式会社トナリの屋上でやりましょうか。ビヤガーデンも併設で」
そう答えると、やっと笑ってくれた。
午後も、ひたすら片付け。パソコンの確認どころではない。ま、時間はあるからな。しかし、8畳分くらいの広さの中によくもまぁ集めたな~というパソコンの数。パッと見た感じで、40台以上はある。
椅子に座り、なんとなく机の配置やパソコンの分解・清掃用の作業場所を紙に書き出していると、統括部長が様子を見に来た。皆、気を使ってくれてるんだろうか?過保護というより、恐る恐る腫れ物触る感じ。
「あのね、3階の奥の部屋にも、相当数のパソコンあるから。覚悟しといて」
「何の覚悟ですか」
「部署変わったからって、暇にはならないよ」
ニヤッと笑みを浮かべながら、統括部長が去っていった。
・・・なんで、こんなにあるんだろう。大抵の会社って、パソコンはリース品が多いはずだけど、まとめ買いして値引きしてもらってるのかな。
ひたすら掃除で、終業の時間になった。しかし、床カーペットの埃が気になり、粘着シートでコロコロとゴミを取っていく。・・・ちょっとでも帰る時間をずらしたいんだよ、ネチネチ何があったか聞かれたくないから。
少々時間を使って、鍵をかけ、統括部長に鍵を返却して、会社を出た。
「すごく疲れたが、寄り道をしていくか」
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