第12話 動作確認
まずは、確実に動作可能なパソコンを選出していくことにした。掃除済みのキーボードとマウス、液晶モニターを設置して、順番にパソコン本体に接続しては、電源を入れていく。パソコンの外側は拭き掃除をしているが、本体ケースをまだ外していないので、電源を入れるたびに『燃えたろ?』という匂いが、ほんのり漂う。窓は開けているので換気は十分だが、火が出ないか心配だ。
次に、動作したパソコンの内部掃除。ケースを開け、中を見る。たまにある話だが、埃や虫が原因でショートすることもあるので、変なモノが見つからないか慎重に作業した。幸い、埃だけで虫がおらず、拭き取ったりエアスプレーで吹き飛ばしたりして、きれいにしていく。これは、順調な作業といえる。
今度は、動かないパソコンの原因を探る。大変なんだよ、これ。パソコン内部を見て、各パーツを外して、掃除して再接続して動くか?ダメなら、電源を交換してみたり等、いろんなパターンがある。うんざりするけど、ネット検索しつつ、さまざまな組み合わせをしてみると、パーツが目を覚ます時がある。独りで、ガッツポーズをする。
何気なく外を見てみると、株式会社トナリのビルの5階辺りで、こちらを見ている制服姿の女性がいた。見られてたようで、こちらに向かってガッツポーズのマネをしてみせた。すげぇ、恥ずかしい。その後、小さく手を振ってきたので、会釈をして返した。
また作業に戻り、パソコンを分解しては、パーツを取り出し、組み合わせて動作確認。この作業をしつつ思った事が並行作業として、何が使えて、どれがダメなのか、作業結果一覧表を作らないと、今後の作業に支障が出るし在庫としても管理できない。なので、作業を一時中断して、誰が見ても分かりやすい事を目的とした一覧表を
作成し、入力しながら、作業を進めていった。
ん~、パソコン修理の業者ですよ。パソコンリサイクルショップなのですよ。実際、お店ではこうやってるのか全く知らないけど、積み重ねな内容のお仕事。
それなりの台数を確認していくと、見た目で分かるのが、電子部品の膨張・液漏れが起きており、年代物の寿命というものだと思われる。どうしても使う必要があるなら、今売ってある部品で交換し補うことをすべきだが私には、それを求められていない。誰の指示もないので。ただ、この機械を動くようにしたら面白いだろうな、という個人的な欲はある。それは、やりすぎなんだろうな。難しいな、どこまですべきかという境界線は。
ちょっとずつ気持ちを抑えながら、現在の職場環境で動いているべきパソコンを再生させつつ、一つ一つ確認していく。使えそうな部品が残りはするけど、保管用の棚や引き出しがあるわけではない。考える、状況を他に置き換えながら。『ぁ~、発送した時の手順か』と思い出し、3階の総務部長に伺うべく、足を運んでいた。
「エプロンも違和感無くなってきたね」
総務部長が言う。
「すみません、そのまま来てしまいました。ところで、プチプチって扱ってますか?」
梱包用資材である緩衝材のプチプチと潰しちゃう、例のアレ。総務部長が指差す方向にロール状のプチプチが立てかけられていた。
「適度な大きさで切り取ってみたら」
「はい、頂きます」
若干大きく切り取って巻き取り、プチプチを頂いた。実は、パソコンパーツをコピー用紙で個別包装して保管を考えたがコピー機から用紙を抜き取っていくと、確実に突っ込まれるし、モジャ夫の目の届く範囲なので、非常に面倒くさい。また、発送可能な品扱いとも考えて、緩衝材に包むことを考えていたんだ。
2階に戻り、使えるパソコンパーツを適度な大きさのプチプチに包んで、外側に[部品名][型番][備考]といった内容が分かる用紙を貼り付けた。保管場所は、部品を取り外したパソコンケースを利用した。ケースを閉じていたら部品専用箱として再利用していることが、バレにくく、勝手に使われにくいのでは?と思ったのです。ちょっと疑り深くなっているのは事実。モジャ夫だけでなく、見物社員も変に多いので、警戒は必要なんですよ。
隔離されたような旧会議室で、数週間。唐突に統括部長が言ってきた。
「明日、マルタ君の作業報告を聞くので、まとめておいて」
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