第28話 経緯と次の計画
スズモリさんが言わなきゃって思ったんだろうね、話し始めたんだ。
「ワタシですね、今の旧会議室に来たのは、経理部長との間を不倫と疑われて、経理の人達から仲間外れにされ仕事もあまり回してもらえなくなって。ワタシは、そもそも経理部長とは何の関係もないんですけど、他の人より何もなくても話しかけられて、誤解され続けて。ただ、隣の部署(総務と人事)からも、デキてるんじゃないか?と見られるようになってしまって」
重苦しい空気がある中、私が聞いてみた。
「何度か言おうとしたことあるのは、今の話?」
「そうです。マルタさんのそー娘に巻き込まれた話を聞いてたので、ワタシの事を話そうかと思ってたんです」
次にマイコーさんが話し始めた。
「あのね、スズモリン。経理部長の噂聞いたことある?あの人は、多くの女性社員に声かけて、どうにか口説こうとしてんだよ。実際、引っかかった人がいるのか知らないけど、手癖の悪いヤツよ。それと、経理の人達の嫌がらせは嫉妬みたいね」
「んじゃ、経理の中に、不倫相手がいるんじゃないの?」
コンビニさんが言う。
「そんな感じの人はいます。経理部長は気がなくても、女性社員の方が好意を寄せてるように見えます」
そう、スズモリさんが答えると、コンビニさんのドヤ顔『ホレ、見ろ』が炸裂。あまりにもドヤ顔過ぎてサワコさんが、おでんの玉子を吹き出した。
「サワコの出産シーン」
マイコーさんの下品さが出て、周りが笑い出し、また、場の空気が和んだ。
その後、安定の『マイコーライブ』が開催され、マイコーさんがスズモリさんにねっとり絡んで歌わせたり、他の面々も、スズモリさんをねぎらうことにシフトしたカラオケライブとなり、大いに騒いだ。
それから、しばらく経ち、そー娘は出産準備のため退社させられ、モジャ夫は、そー娘と結婚することとなった。総務部長は、なんとも言えない表情をして疲れ果てていた。
旧会議室で、作業をしていると、例のごとく統括部長がやってきた。
「二人共、ちょっといいかな?」
「はい、何でしょうか」
株式会社トナリの二人分の入室許可証を渡された。
「次の出張について、トナリ社長と打ち合わせをしたいそうだ。日程が決まり次第、また連絡がある」
「トナリの場合、外部からの許可が厳し目なんですね」
「手広くやってるから、情報漏洩されるとマズイものもあるんだろうね、当然だけど」
統括部長が部屋を出られてから、許可証を見ていると、しっかり名前が書かれていた。
「この許可証、すごく手作り感があるね」
「ですね、印刷もかすれてて、体裁整えてるような急ごしらえですよ」
視線を感じ、ハッと外を見上げると、やはりフチガミさんがこちらを見ていた。そして、メールが届く。
「慌てて作ったんだよ、入室許可証」
「なぜに、また?」
「トナリ社長が、トナリ社員に対して『お客さんが来た』をアピールさせたいって。普段も来客あるのに」
その後、統括部長から、トナリでの打ち合わせ日程が伝えられた。
いざ、株式会社トナリでの出張打ち合わせ。非常に乗り気しないが、行かないと、またあの怒号が浴びせられる。こちらとしては、下準備として、全国規模展示イベントの紹介記事等を調べ、内容を把握したくらい。そもそもその業種について知らないことしかないので、手探り状態。
指定の時刻になり、許可証をぶらさげトナリに入った。すでに、フチガミさんが待っていてくれて受付を通さず、直に、社長室へ向かう。
「会議室とか、もっと小さい部屋なかったんですか?」
「ん~、社長室を見せたいんだと思う」
エレベーター内で、ちょっと会話したら、もう着いてしまった。
社長室のある5階で降りると、広いし、社員数の多いこと。こちらが来たことに気付いた社員には会釈をして社長室に入った。勝手なイメージだと、社長室は、社長机と応接セットがあると思っていたが、机と資料だなだけ。入り口から正面には社長机と大きな窓がある。日差しが強いので、普段はブラインドを閉めているそうな。
「はい、お疲れさん」
トナリ社長が声をかけられた。
「今日は、よろしくお願いします」
こちらも、挨拶を返し、社長面接のような対面でパイプイスに座った。フチガミさんから、A4用紙1枚渡され、おおまかな日時がかかれた予定表を渡された。
「今回の展示会は規模が大きいので、まず回りきれることはないし、混雑もするから、コチラが目星つけた箇所だけ挨拶することとなる。キミ達が同行するのは、いろんな企業があるので、それを知ることかな」
トナリ社長がそういうと、スズモリさんが質問した。
「トナリ社員の方は、同行しないんですか?」
「ん~、仕事持ってるからね」
なんだか我々が行かなきゃいけない理由が見えてこないが、同行した後に聞かないと怒鳴りそうだな。そう思いつつ、資料をよく見ると、2泊3日の予定となっている。1日目移動で、2日目が展示会視察、3日目の予定が書いてない。
「あの3日目の行動予定は、どこか企業を見学ですか?」
私が伺ってみると、トナリ社長の自由な発言。
「あ、帰る日ね。朝から自由行動。観光しないでどうすんのよ。夕方の飛行機に乗れればいいから」
「あっは~、了解です」
声が裏返ったので、一斉に笑われた。
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