27 衛星核爆弾を刀で斬る。

 「ハカーイが降って来た楽しいな、ハイ、楽しいな、よし!。」





 大丈夫か?




 破滅ちゃんは、わけのわからない事を、言い、愉悦に浸って逝っていた。




 地球は、もう殆どが更地になっていた。




 街や海、森も、川も、村も、存在しない。




 「最高だよ、破壊くうん、いっぱい、いーぱい、殺せたねえぐへへ。もう、地球も終わりが近いね。」




 破滅ちゃんは、二ヤりと、笑った。




 「どう、気持ちよかったかしら、粉々にされて容器に詰められて、10億回爆発して、さらに、粉々になって、再生複製を繰り返しては、爆死を繰り返す気分は?」




 ドスッ。




 破滅ちゃんは、爆撃直後で、疲労困憊している僕の顔面を、右足で、思いっきり蹴った。




 歯が折れて、飛んでいく。



 

 「ううぅッ。グハっ。」




 痛みのあまり、声が出る。




 ドス、ドス、ドス。




 「おら、おら、おら、おらああああ。」




 破滅ちゃんは、何度も僕の頭を踏みつけた。



 

 「どうだったのお、正直に言ってみ、本当は、何度も死んだり、人や生き物を皆殺しに、できて、気持ちよかったんでしょ?」




 破滅ちゃんは、とろけるような、声で、問いかけた。




 「う、違う。僕は―。」




 死ぬのが気持ちいなんて、はずがない。




 痛いし、苦しい。




 人や生き物を殺して、いい気分になれるはずが―




 「へへへ、ふははははは。」




 あれ、どうして、笑ってんだ、僕。




 興奮が止まれねえや、僕は、殺しを楽しんでたんだ。




 酷い、サイテーだな。




 「はいいい。僕は人を殺すの、気持ちよかったんです、死ぬのも、苦しいのも痛いのも、気持ちくて、仕様がないんですうう、快楽すごくって、逝っちゃってましたあ。」




 僕は、涙を流し、グチャグチャの顔になって、言った。




 「よしよし。いい子だ。わかったか、人というものの欲望の本質が。」




 バゴーン!




 破滅ちゃんは、サッカーボールを蹴るように、僕の顔面を蹴り飛ばした。




 ヒュ―――――ン




 首から、千切れて、顔が飛んでいく。




 グルリン!




 地球を10周回った。




 「キャッチっと。」




 破滅ちゃんは、回ってきた、僕の顔を両手で受け取った。




 「よしよし、いいボールだ。」




 破滅ちゃんは、僕を頭を優しく撫でた。




 「あたしに、無茶苦茶されて、殺されたり、切り刻まれたりするのも、興奮して、気持ちよくって、仕方がないんでしょ?」




 破滅ちゃんは、僕の右耳元で、囁いた。




 声帯がなくて、返事ができない。




 「言わなくても、わかるわよ。」




 破滅ちゃんは、千切れた首と頭の付け根を触って、グリグリした。




 「どう、痛いでしょ?」



 

 意地悪な笑みを浮かべた。




 うう、痛い、痛くて、痛くて、でも嬉しいよお。




 もっと、痛めてほしいよ。




 「欲張りさんだねえ。」




 グサッ。




 破滅ちゃんは、僕の両目に指を突っ込んだ。




 両目から、血が噴き出す。




 「破壊くん。君にも、あたしにも、あらゆる、生き物は、醜い欲望を持っているのよ。」




 破滅ちゃんは、苦悩の表情を浮かべた。




 「酷くて、恐ろしいことでしょ。破壊行動に、興奮したり、戦争や、殺し合いが楽しくなっちゃうなんて。」




 破滅ちゃんは、沈んだ声で、続けた。




 ニュロ、ニュロ、ニュ、ニュ、ニュ二―




 首から、再生していく。




 「破壊くんは、心優しくて、傷つけたあったり、争うことをしない、健気な少年だったのに命の危険と殺し合い、痛みと死の中で、いつの間にか、苦しみが、快楽に変換されるようになってしまったのよ。」




 破滅ちゃんは、涙した。




 「欲望を認めて、受け入れて、ちゃんと向き合っていくことが大事なんだ。ほんとうは、争いや殺し合いは、いいことじゃない。」




 破滅ちゃんは、呟いた。




 「矛盾しているじゃないか。」




 僕は、疑問に思って、反論した。




 「矛盾していていいんだ、間違いを抱えて生きてくんだ。悩みながら、じぶんと向き合っていけ、欲望に折り合いをつけていくんだ。」




 破滅ちゃんは、言った。




 「折り合い?」




 僕は、ききかえした。




 「ええ、つまり、愛だよ。傷つけたくない誰かの為に、子供たちの未来を壊さないように、じぶんから、エゴによる欲望を絶つということだ。」




 破滅ちゃんは、答えた。




 わからなかった。




 難しい話だ。




 次第に、頭が冷えていった。




 「どうして、僕たちは、世界を滅亡させないとダメなんだ。」




 僕は、頭を抱え込んだ。




 「ごめんね。君には、重い役をしてもらっていると思ってるよ。」




 破滅ちゃんは、頭を下げた。




 「いいんだ。破滅ちゃんの為だし、じぶん自身、生きていながら生きている心地がずっと、なかったんだ。でも、今は、死を感じながら、生を強く感じていられる。」




 僕は、慌てて、破滅ちゃんを、許した。




 許したというより、恨んでも、憎んでもなかった。




 「よかったね。」




 破滅ちゃんは、笑った。




 やっぱり、破滅ちゃんには、笑顔がよく、似合う。




 ピカーン!



 

空高くに、光が輝いた。




 「光?」




 僕は呟いた。




「マズいわねえ。」




 破滅ちゃんは、空を見上げて、右手で、後ろ髪をパサァとなびかせた。




 ギュルルルルルルル




 奇妙な音が、辺りに響き渡る。




 バッコーン!




 「破壊くん、よけて!。」




 破滅ちゃんは、僕の前に出て、両手を横に大きく広げた。




 「破滅ちゃあああああああああああああん!!!!」




 辺りが光で包まれ、耳が潰れるほどの爆音が鳴り響く。




ドリュリュリュリュリュリュリュ―




 穴が開き、地形が変わる。




 「破滅ちゃん?」




 破滅ちゃんは、真っ黒になっていた。




 僕の為に、身を犠牲にし、盾になったのだ。




 「ヤバい、ぞ。衛星核爆撃だ。」




 破滅ちゃんは、振り返って僕をみて、言った。




 衛星核爆撃?




 人類は、もう、滅んだんじゃなかったのか。




 わけがわからないよ。




 「地球の周りをグルグル衛星が回っててな、人も住んでるんだ。」




 破滅ちゃんは、解説した。




「地球の外には、宇宙が広がってる。まだ、完全に滅ぼせたわけじゃあないんだ。」




 破滅ちゃんは、続ける。




 バッコーン!バッコーン!バッコーン!




 空高く宇宙から、連続で、僕と破滅ちゃんを狙って、ピンポイントで、核爆弾が飛んでくる。




 「凄まじい精度ね。あたしたちが、逃げれれないように、計算して、地形を破壊し、狙ってくる。」




 破滅ちゃんは、不敵な笑みを浮かべた。




 シュラランピキピキピキ、チャリ―ン、シュシュシュ




 胸から、白く輝く、刀を取り出した。




 「ていや!。」




 シュパットシュパシュパ!




 破滅ちゃんは、刀で、宇宙から飛んでくる核爆弾を斬り落としていく。




 物理法則なんて、無視だ。




 綺麗に、真っ二つに、斬れて、どうしたわけか、爆発もせず、放射能も出さない。




 「どういう仕組みなんだ。」




 僕は、理解が追いつかず、目をパチパチさせた。




 「理解しようとするな、目の前で起こっていることが現実だ。真実だ。」




 破滅ちゃんは、楽しそうに白い歯を覗かせて笑って、目を見開きギラギラ輝かせ、核爆弾を斬り落としていく。




 「破壊くん、宇宙に行こう。」




 破滅ちゃんは、呼びかけた。




 宇宙か、どんなところなんだろうか。




 想像もできなかった、地球に外があるだなんて。




 「行こう!破壊くん、宇宙は、無限だ。」




 破滅ちゃんは、僕の手を取った。




 綺麗な目。




 曇りのない澄んだ目の破滅ちゃんをみていると、新鮮な気持ちになれる。




 「ありがとう。行こう、宇宙へ。」




  僕は、破滅ちゃんの手を握り返した。




 「あたしたちの故郷、心だ。」




 破滅ちゃんは、にっこりと、笑った。




 「還ってくんだ。」



 核爆弾の雨が宇宙から降り注ぐ中、破滅ちゃんは、ポツリと呟いた。



 ギラーン




 シュラララララ




 破滅ちゃんは、黒く燃え盛る焔の翼を背中に、飛んだ。




 シュルルルルル




 僕は、白く燃え盛る焔の翼を背中に、空を飛んで、破滅ちゃんを追いかける。




 ヒュ―ン、ヒュ―ン、ヒュ―ン―




 宇宙の空高くから、核爆弾の雨が降りしきりる。




 ヒラヒラと爆弾を躱しながら、宇宙へ向かって飛んでいく。


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