11 残虐な人類と、歴史の一部。

 1939年 9月




 「ぎゃあああああああああああ。」

 人々の叫び声がきこえる。




 「あれはいったい?」




 「第二次世界大戦よ。」

 破滅ちゃんは、答えた。




 第二次世界大戦?きいたこともない。




 人がゴミのように死んでいく。




 砲台のついた巨大な車が、走り、人を撃つ。




 「戦車ね。」

 破滅ちゃんは、戦車を指さした。




 ドッカーン!





 ドッカーン!




 撃ち合っている。




 迷彩色の服を着て、ヘルメットを被り、銃を装備した、男たちが、道を歩いている。




 「ああ。っ。」

 突然、地面が爆発して、足が吹き飛んだ。




「地雷ね。地面に、爆弾を仕掛けておいて、踏んだら爆発するのよ。」

 破滅ちゃんは、解説した。




 急に、人がバタバタと倒れ始めた。




 「どうしたの?」




 「毒ガスよ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「口や鼻、皮膚から、入って肉体や精神をおかしくして、死に至らしめるのよ。」

 破滅ちゃんは、説明した。




 「空に行くわよ。」

 破滅ちゃんは、宙を浮かんで飛んだ。




 「わー。どうなってるんだ。」

 僕の身体も宙を浮き、飛んでいく。




 ビュウウウウウン!




 ドッカーン!



 

 ビュウウウウウン!




 「凄い!。」




 「戦闘機だよ。撃ち合ってるね。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「殺し合いよ。ふふふ」

 破滅ちゃん、愉快そうに、殺し合いをみていた。




 残酷だ。




 狂暴だ。




 人間とは、破壊の化身なのか?




 「海に行ってみようか?」

 破滅ちゃんは、僕の背中に手を当てた。




 ビュン!




 海へやってきた。




 「巨大な船だ。」




 「空母と戦艦ね。みてみなさい、撃ち合うわよ。空からの攻撃も来る。」




 ビュウウウううううん、ドッカーン!





 空から、戦闘機が、爆撃する。




 空母に直撃する。




 戦艦が、やってきて、空母を狙って、砲撃する。




 バッコーン!




 鼓膜が破れそうなほどの音だ。




 空母は沈んだ。




 まだ殺し合いは続いた。




 戦艦同士で、撃ち合う。




 残酷で狂暴だ。



 

 「最後に、もっと恐ろしいものをみせてあげるよ。」




 1945年 8月




 ビュドルルドバババルドーン!




 途轍もない、爆音が轟く。




 悍ましさと寒気がした。




 「一体?」




 「原子力爆弾だよ。」

 破滅ちゃんは、目をキラキラとさせて、原子力爆弾が爆発するのをみていた。




 凄まじい威力だ。




 街一つが一撃で、吹き飛んだ。




 絶句した。




 「おそろしい。」

 恐怖。




 「原子爆弾の恐ろしさは、威力だけじゃあない。あとに残る放射能にある。」

 破滅ちゃんは、楽し気に、言った。




 「放射能?」



 

 「ええ。めにみえない、猛毒でね。細胞を破壊して、癌にするし、大量に被爆すると、即死だぜ。」

 破滅ちゃんは、二ヤついた。




 「我が国は、戦争に負けました。降伏します。」

 ラジオで、国中に、流れる、神の声。




 「あれは?」




 「当時の国の王だよ。原子爆弾を落とされ、降伏を決意したんだ。当時の人たちは、王の事を神様だと、信じていたらしい。」

 破滅ちゃんは、鼻で笑った。




 「国は占領されたが、運よく、国民の努力もあって復興した。」




 「へえ。」




 「ただ、未だに、敗戦国で、属国のままだ。」

 破滅ちゃんは、愉快そうに笑った。




 破滅ちゃんは、繁栄し、高層ビルが立ち並び、車が飛ぶように売れている、国の街々の姿をみせた。




 「おえ。ゴホ、ゴホ。」




 「苦しいだろ。二酸化炭素に、一酸化炭素、その他石油を燃やすと、出てくる有毒なガスさ。」




 煙突から、黒い煙が、絶えず、出ている。




 「身体が溶けそうな、雨だ。」




 「酸性雨だね。ほら、建物が溶けてる。」




 破滅ちゃんは、説明した。




 「○○島は、海面上昇で、海に沈んだ。」




 破滅ちゃんは、にこやかに、笑う。




 「海洋生物の8割は絶滅した。陸上にすむ生物も人間と家畜を除き、死滅しようとしている。」

 破滅ちゃんは、続けた。




 「環境破壊。悪い事だとは、思わない。」




 1955年 11月




 「人々は、第二次世界大戦が終わっても戦争をやめられなかった。」

 破滅ちゃんは、人々の殺し合うのをみて、ずっと笑っていた。




 「冷戦ってやつだね。代理戦争をして、殺し合わせた。」

 破滅ちゃんは、解説した。




 「平和なんて、嘘っぱちだ、国も、いつやられたっておかしくはない。」

 破滅ちゃんは、鼻で、笑った。




 1960年




 「国の連中が、腐り始めるときだ。」

 破滅ちゃんは、嘆いた。




 「税金の無駄遣い、宗教と政治の癒着。企業と政治との癒着。組織化が進んで、凝り固まっていく。」

 破滅ちゃんは、淡々と説明する。




 「戦後復興、高度経済成長。表向きは、上手く行っているが、国の中枢が腐り始める。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 1980年 




 「ものすごく、よさそうな時代だよ。」

 人々は、活気に満ち溢れ、土地の値段が、異常なほど上がっていた。




 「バブルだね。いい時代だった、終焉するがね。」




 1990年

 



 「どんよりと、した雰囲気だ。」




 「バブルが崩壊しても立ち直れていないんだ。子供の数も減っていっているのに、放置だ。」

 破滅ちゃんは、説明する。




 「ぎゃあああああああ。」

 店が経営できなくなり、泣き叫ぶ人たち。




 多くの企業、お店が倒産した。




 1995年 1月




 ゴオおおおおおおおおおお




 「地震だね。」

 破滅ちゃんは、爆笑した。




 「地震?」




 「ああ。火力発電所が爆発し、建物が倒壊し、地獄をみた。」

 破滅ちゃんは、ニヤニヤしている。




 「5000人死んだ。」




 1995年 3月




 「ぶわあああああああ。」

 人々の苦しみ、逃げ惑う姿。




 「地下鉄に毒が撒かれたんだ。」

 破滅ちゃんは、呟いた。




 「どうして?」




 「宗教を規制出来なかった、国の中枢と国民の怠慢さ。」

 破滅ちゃんは、鼻で笑った。




 「もう、すでに、国の在り方に、ガタがきているのに、修正しようとはしなかった。すでに、年寄り連中による、権力維持体制が、完成しようとしていたんだ。」

 破滅ちゃんは、人間という生き物に心底、呆れ、絶望している様子だった。




 「2000年からは、没落の時代さ。」




 「没落?」




 「みてみろ。」

 1980年代には、活気のあった町には、人がいなくなり、年寄りばかりになっていた。




 「世界が、人工知能、ITに必死になっているとき、遊んでいた。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「電気自動車になっていく中、対策を講じなかった。」

 破滅ちゃんは、嘆き、笑う。




 「国は、間違った古いバブルの頃のやり方ばかりを試みるが、時代はもう別の次元にあった。」

 破滅ちゃんは、スマホをポケットから取り出した。




 「インターネットだ。すべてを変えた。ゲームチェンジャーだ。」

 破滅ちゃんは、笑う。




 「人間というのは、面白いものを作るものもいる。稀に現れる天才だな。」

 破滅ちゃんは、スマホを触った。




 「国は、IT企業の経営者を、目の敵にして、牢獄に入れた。」




 「どうして?」




 「さあね。」

 破滅ちゃんは、首を傾げた。




 「まさに、破滅さ。」

 破滅ちゃんは、皮肉を言った。




 「海外じゃ、ほぼ数十万で、受けられる大学教育も、国じゃあ、何百万とかかる。」




 「わけがわからないよ。」




 「奨学金と言う名の、借金を、10代20代の若者に、背負わせて、一生、借金返済の労働をさせる。」

 破滅ちゃんは、にこやかに、笑った。




 「隣の国は、発展して、国を追い抜いた。」

 破滅ちゃんは、俯いた。




 「きっと、あと数十年と、国は、変わらないし、世界も変わらない。」




 2011年 3月




 ゴおおおおおおおおおお




 ドシャアアアアアン




 物凄い地震だ。




 海から、巨大な波が、やってくる。




 バあああああああああん




 「うわああ。」




 「津波だね。」




 バコーン!




 巨大な施設が爆破して、骨組みだけになった。




 「原子炉の炉心溶融だね。」




 「原子炉?炉心溶融?」




 僕は首を捻った。




 「原子炉ってのは、原爆の原理を利用した発電方法さ。常に、冷やし続ける必要があるのだが、津波に飲まれて電源が喪失し、建屋がぶっ壊れた。」

 破滅ちゃんは、爆笑して転げまわった。




 「電力会社と、国の怠慢さ。ちゃんと、設備を整えれば、エコロジーで最高の発電方法なのに―。」




 破滅ちゃんは、呆れた様子で、爆発し、燃える、原子炉と施設をみていた。




 僕の目には、この世の終わりにしか、みえなかった。




 2019年 12月




 疫病が流行り出し、人々はマスク消毒をし、外出を避けるようになっていた。




 「新型のウイルスさ。」




 「へえ。」



 

 「多くの人が死んだり、熱を出して、苦しんだ。」

 破滅ちゃんは、憂鬱な雰囲気を醸し出した。




 「ウイルスは、おそろしいものではあるが、社会は、必要以上にウイルスをおそれすぎた。」

 破滅ちゃんは、話した。

 



「ワクチンが開発され、8割以上の人が接種した。半年に1度のペースで、打っていた時もあった。」

 破滅ちゃんは、昔を懐かしむような目をした。




 「ワクチン接種による、免疫力の低下や、副反応に、後遺症。過剰な政府による医療が逆に死者を増やしもした。ワクチンも、リスクがある。」

 破滅ちゃんは続けた。




 「じゃあ、ワクチンは打たない方がいいじゃないですか?」

 僕は、きいた。




 「慎重であるべきだ。ワクチンにより助かる命もある。データに基づいた調査と、判断が大事なんだ。」

 破滅ちゃんは、説明した。

 




 2022年 2月




 「また、戦争だ。」

 破滅ちゃんは、苦悩の笑みを浮かべた。




 「すぐに、戦争したがる、年寄りもいたものだ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「2022年に、侵略戦争だ、なんて、冗談にしてくれ。人類は、学ばなかったのか?。」

 破滅ちゃんは、苦しみの、笑顔を向ける。




 2022年 7月



 

 バン!




 「きゃあああ。」

 人が撃たれた。




 「元首相が、一般人に暗殺されたんだ。」




 「首相?」




 「実質、国のトップの人のことだ。」

 破滅ちゃんは、答えた。




 「へえ。どうして?」




 「理由はいろいろあるだろうさ、社会システムに、ガタが来てるんだ。」

 破滅ちゃんは、答えた。




 「そろそろ、わかってきただろ?人間というのは、碌な生き物ではない。」




 「社会システムは、変えられないのか?」

 僕は、首を傾げた




 「ああ、変えられないよ。」

 破滅ちゃんは、答えた。




 「どうして?」

 僕は、聞き返した。




「一度、死ぬしかない。生き物が必ず死ぬように、社会や国、世界も、死が必要だ。細胞分裂が終わって、頭が凝り固まって、考えが変えにくく、頑固になっていくように、終わりがないと、どうしようないくらい凝り固まっていく。」

 破滅ちゃんは、残念そうに、目を伏せた。




 「死んだら、全て終わりなんじゃないのか。」

 僕は、俯いた。




 「死んで終わりじゃないよ。新しい、風が吹く、命が芽吹く。世界は、創造と、維持、破滅を繰り返してきた。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 破滅ちゃんは、僕の背中に両手を当てた。




 ビュン!




 車の中に、戻ってきた。




 「不思議な体験だった。」

 僕は、言った。




 「記憶をみせていたのさ。あたしは、こうみえて、5000年生きてるからね。」

 破滅ちゃんは、二ヤリと、笑った。




 「どうだ、世界を滅ぼす気になったか。」

 破滅ちゃんは、きいた。




 人間は、ろくでもない生き物だ。




 助けてやったところで、また、過ちを繰り返し、戦争したり、環境破壊したり、権力維持体制で、国民を苦しめる。




 人々は、権力の、奴隷であることを受け入れている。




 不自然に、生きながらえようとして、新しい命の灯を、殺している。




 ダメだ。




 不死身である、僕たちが、ちゃんと滅ぼして、終わらせてあげないと。




 人類は、調子に乗りすぎた。




 「ああ、破滅ちゃんの為に、絶対、滅ぼすよ。」

 僕は、心に誓った。

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