10 世界を滅亡させることは、いい事なのでしょうか。

 「おはよう。破壊くん。生きてる?」

 破滅ちゃんの声が、きこえた。




 「いっぱい死んだねえ?床が、君の頭で埋め尽くされているよ。」

 破滅ちゃんは、床に落ちた僕の頭の一つを、右手に持った。




 「うぅんっ。メルシィ。」

 破滅ちゃんは、僕の切断された顔を食べる。




 ゴクン



 

 「君の顔は美味しいねえ?」

 破滅ちゃんは、にこやかな笑みを浮かべる。




 「よく、一日、我慢できたねえ。えらいえらい。」

 破滅ちゃんは、僕の頭を撫でて、抱きしめた。




 「縄を解いてあげるよ。」

 破滅ちゃんは、僕から、縄を解いた。




 腕や、手首、胸元、首、太もも、足首には、縄の跡が、赤く、腫れている。




 久しぶりに、身体を動かせる。




 「ゆっくり休もうか。おいで。」

 破滅ちゃんは、ゆっくり歩き始めた。




 豪邸の二階へ上がる。




 破滅ちゃんは、青色に塗装された、アンティークな木の片開き戸を開ける。




 中は、20畳ほどの、部屋であった。




 白色の石で、作られた机に、木製の茶色いニスの塗られた椅子が中央にある。




 青色のカーペットが敷かれていて、ソファと、ベッドにもなる椅子が、3台ほどおかれている。




 「君、インターネットは、知っているかい?」

 破滅ちゃんは、ポケットから、長方形のガラスの着いた機械を取り出した。




 「スマートフォンだよ、君も見たことくらいはあるだろう?」




 「スマートフォン?」




 「ああ、君にあげるよ。」

 破滅ちゃんは、スマートフォンを僕に投げた。




 ピロロロロン




 スマートフォンから音が鳴った。




 「もしもし、破壊くん?きこえているかい。」

 スマートフォンから破滅ちゃんの声がきこえる。




 「うわあ。破滅ちゃんの声が、きこえる。」

 僕は、驚いて、身体を強張らせた。




 スマホの画面をみてみると、破滅ちゃんが、映っていた。




 「便利だろ? あと、映画や漫画もみれるし、ゲームや、調べものもできる。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「SNSってやつを使えば、世界を乗っ取ることも出来る。」

 破滅ちゃんは、スマホの画面をみせた。




 「あたしの、SNSアカウントのフォロワーは18億人で世界一だ。」




 「フォロワー?」




 僕は、首を傾げた。




 「ええ。支持者みたいなものね。あたしの美しさに、世界がメロメロなのよ。」

 破滅ちゃんは、ドヤった。




 ドヤ顔の破滅ちゃんも、美しく、神々しく、かわいい。




 「今の世の中、フォロワーの多いやつが、世界の支配者になれる時代。あたしにかかれば、人間どもの統治も容易いわ。」

 破滅ちゃんは、スマホの画面をみた。




 「ま、全員、殺しますけれどね。ふふ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「今日も、破壊しに行きますか。」

 破滅ちゃんは、外に出た。




 「破壊くん、乗りなよ。」

 破滅ちゃんは、車を出した。




 乗る。




 「国会だねえ。」

 破滅ちゃんは、国会を指さして言った。




 「国会?」

 僕は、首を傾げた。




 「国のルールと方針を決める場所よ。」

 破滅ちゃんは、説明した。




 「ルールと方針を決めているのは、害悪な老人連中ばかり、死んでもらった方がいいくらいだね。」

 破滅ちゃんは、苦言を吐いた。




「稼いだ金の、45パーセントほどは、国に税金として取られ、使い道は、国会で決められる。」

 破滅ちゃんは、続けた。




 国会を通り過ぎる。




 「裁判所だ。」

 破滅ちゃんは、裁判所をみた。




 「法律を破った人間を、裁く場所だよ。牢屋に閉じ込められるのか、死刑になるのか、決められる。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「人間の分際で、神様の真似事か?世の中、破壊くんみたい、日の当たらない所で、何度も殺されていた人がいるってのに―。」

 破滅ちゃんは、憎しみの籠った声をあげる。




 僕のために、怒ってくれているような気がして嬉しかった。




 「いいですよ。僕は、殺されなれてますから。」

 僕は、笑った。




 裁判所を通り過ぎる。




 「官邸だ。」

 破滅ちゃんは、官邸の方をみて、呟いた。




 「官邸?」




 「国会で決まったことを、実行する人たちの集まる場所だよ。」

 破滅ちゃんは、説明する。




 「組織化されて、身動きを取るのも遅い、老人たちの集いさ。」

 破滅ちゃんは、鼻で笑った。




 官邸を通りすぎる。




 「中央銀行だねえ。」




 「中央銀行?」




 「ええ。国の金を作っている組織ですよ。」

 破滅ちゃんは、中央銀行を、みて、溜息をついた。




 「どうして、中央銀行の連中は、いつまでも、古い考えを捨てられないのか?中央銀行は迷走していて、国は、景気後退、物価上昇。永遠の低成長さ。」

 破滅ちゃんは、呆れた様子である。




 「すべての責任が、彼らにあるわけではないがね。」

 破滅ちゃんは、呟いた。




 中央銀行を通り過ぎる。




 「警視庁本部ね。」




 「警視庁本部?」




 

 「警察の指揮を執ったり、事務をしたり、コンピュータを運用している所だよ。」 

 破滅ちゃんは説明した。




 「へえ。」




 「警察がいなけりゃ、悪いやつを捕まえられない。警察は、命を張る仕事、国を守る仕事、世界滅亡の為には、破壊すべき存在だ。」

 破滅ちゃんは、続けた。




 「国会、裁判所、官邸、中央銀行、いずれも、働いている人間たちは、使い物にならない、ゴミであり、害虫だ。困ったものだなあ。」

 破滅ちゃんは、優しい表情で、目を細めた。




 「ただ、人を見下すのはいいことではないな―、やはり、どうしようもないのだろう。仕組みが、ダメなんだ。生まれ変わらないと、腐っていくだけだ。」

 破滅ちゃんは、こめかみ、をしかめた。




 国に、国会、裁判所、官邸、中央銀行、警察本部があることを知らなかった。




 「あれは?」




 「王家の家だよ。」

 破滅ちゃんは、答えた。




 「王?」




 「ああ、国には、王がいるんだ。偉大な血筋だが、勿論、いずれは死んでもらう。」

 破滅ちゃんは、喜々として、言った。




 破滅ちゃんは、国を壊滅させたいのだ。




 いずれは、世界を壊滅させ、終わらせるのだろう。




 いいのだろうか?




 罪のない人たちは殺すのは、よくない事ではないのだろうか?




 「どうした?」

 破滅ちゃんは、僕の心情を察した様子で、声をかけた。




 「世界を滅亡する事は、いいことなのでしょうか?」

 僕は、きいた。




 「いいか悪いかなんて、どうだっていいのよ。人間という弱い生き物は、あたしたち不死身に殺されればいいの。面白いじゃない?」

 破滅ちゃんは、笑った。




 わからなかった。




 弱いものを助けるのが、強いものではないのだろうか―。




 「あなたは、優しすぎるのよ。何度も殺されてきているのに、人間を信用しすぎよ。」

 破滅ちゃんは、呆れた様子で、僕をみた。




 「だったら、いいものをみせてあげるわよ。」

 破滅ちゃんは、僕の頭に、記憶を流し込んだ。



______________________________________


物語の中で、破滅ちゃんは、国の事を痛烈に批判していますが、本当は、どうだっていい話です。


国が悪いわけでもないし、世界が悪いわけでもない。


誰かを批判したり、攻撃しても現状は、変わりませんからね。


心とか、情緒が大事なんです。


世界を滅亡させる話なので、滅亡させる動機に、揚げ足取りみたいな理由を書きました。


ごめんなさい。

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