15 戦車、犬型ロボット兵を爆破した、空からの戦闘機により空襲。

 「ごめんなさい。ごめん、ごめんよおおおお。」

 僕は、灰となった街を歩きつつ、泣き謝っていた。




 特攻爆撃の興奮が冷めたのだ。




 興奮している時は、たかぶって、ハイになっていた。




 我に返ると、自分がした事の恐ろしさに、寒気がした。




 「おえええええ。」

 ゲロをぶちまける。




 キモチ悪いよおお。




 僕は、酷い人間だ。




 不死身だから、えらいわけでもない。




 ただの人。




 虚しいだけだ。




 世界を滅ぼすだなんて、考えただけでも悍ましい。




 許されていいはずもない。




 「やれよ。」

 声がきこえる。




 亡霊の声だ。




 死者の声。




 「もう、止まれると、思うなよ。」

 幻聴だろうか。




 頭が痛い。




 「お前には、破壊しか、ないだろうがよ。」

 僕は自傷気味に笑った。




 「ほら、ほら、ほらああああああ。」




 グシャ。




 僕は、自分の目に指を突っ込んだ。




 目が潰れる。




 「あああああああああ。」

 ダメだ、足りるもんか。




 「死んじゃえ、死んじゃえ、こんなやつ。」




 ガン、ガン、ガン、ガン―




 僕は、地面に顔面を叩きつけた。




 頭から、脳みそが飛び出す。




 血が流れる。




 ドドドドドドドドド―




 車か?



 

 近づいてくる音がきこえる。




 「やっぱり、人がいるぞ!生き残りか?いや、まさか―。」

 戦車だ。




 男1が、入口から顔を出して、目をしばしばさせている。




 「おい!あの少年。おかしいぞ、脳みそが飛び出てる、目もない、血まみれだ。」

 男2は、よく通る声で、言った。




 「大丈夫かい、きみいいい?」

 男1は手を振る。




 人間だ。




 コワい。




 キュウウウウ




 車が止まった。




 ドアが開き、扉から人が出てくる。




 「君、平気かい?酷い怪我だ。」

 男1は、心配そうな顔で僕をみた。





 どうしてだ?




 やめてくれ、優しくしないでくれ。




 グニョ、グリョリョ




 身体が再生していく。




 グリョ、ヌニョ。




 「ば、バケモノのおおおおおお!。」

 男1は、びっくり驚き、転げて腰をついた。




 「まさか。お前が、爆破させたのか?」

 男2は、怒りと不安の入り混じった声を上げる。




 「おい、なんとか、言えよ。化け物!。どうすんだよ。」

 男2は足をガクガク震えさせていた。




 バン!バン!バン!




 え?




 ピストルで、撃たれた。




 「はは。ごめんよ。生きてるか?」

 戦車の後ろから、男3が、出てきた。




 痛い。




 どうして、撃つんだ。




 僕は、酷い事をしたけれど、撃たなくてもいいじゃないか、話をきいてくれたっていいじゃないか。




 グリョ、グリョ、ニュロロ




 「ひええ。もう、再生しはじめやがった。殺されるううう。」

 男3は、怯え切った様子で、わなわな震えていた。




 「戦車に戻れ、撤退だ。」

 男1は、叫んだ。




 撤退して行った。




 どうして、僕が、酷い目に遭わなくちゃダメなんだ。




 ビューン




 空から、戦闘機が飛んできた。




 ドドドドドドドドド




 辺りを埋め尽くす、戦車が僕を囲うように、走ってくる。




 「今すぐ、両手をあげて、真っすぐ歩きなさい。」

 空から、アナウンスがきこえる。




 僕は両手を上げて歩き出した。




 戦車から、男4が出てくる。




 カチャ




 男4は僕に手錠をはめた。




 「抵抗するなよ。」

 男4は、緊張した面持ちで言った。




 どうなるのだろう。




 「入れ。」

 男4は僕を、厳重な金属で作られた四角い檻に入れた。




 真っ暗だ。




 運ばれている。




 暗くてみえないが、運ばれている事はわかる。




 「着いたぞ。」

 男4は、檻を開けた。




 バン!




 撃たれた。




 眠い。




 強い眠気に襲われた。




 僕は、倒れてしまった。




 ピ、ピ、ピ、ピ―




 首、手足、肩、胴体、腰を金属で台に固定され、寝かされていた。




 「おお、起きましたか。」

 白衣を着た、男5が、僕をみていた。




 グサッ、グサッ、グサり。




 ナイフが腕に刺される。




 「うん。やっぱ、人間じゃないねえ。どういう原理なんだ。」

 男5は不思議そうに、僕の腕が再生するのをみている。




 「君、名前は?」

 男5はきいた。




 誰が、言うものか。




 「だんまりか。残念だ。」

 男5は、ナイフを僕の首に刺した。




 「殺しても、生き返るんだろ?君が目覚めるまでに、もう89回殺してるからわかってる。」

 男5は、ニヤニヤと、興奮した様子で、笑った。




 「おえ。」

 キモチわるい。




 破滅ちゃん以外の人に、身体がけがされている気がして、吐き気がした。




 「どうして、僕ばかりが、酷い目に遭わなくちゃダメなんだろう。」

 僕は呟いた。




 「君が、人間じゃないからだよ。化け物だからだ、ちゃんと研究しないとね。」

 男5は、鼻で笑った。




 「不死身なんて、凄い発見だ。人類の夢だ。生老病死の苦しみから逃れられるかも知れない。」

 男5は、二ヤついた。




 醜い生き物だ。




 死を受け入れろ、人間。




 自然を受け入れろ




 「不死身になる事が、幸せだと思っているのか?」

 不死身は、孤独なだけだ。




 永遠に生きられたとしても、苦しみからは逃れられない。




 運命を受け入れよ許せよ、人間。




 「幸せ、なにそれ、美味しいの?、金を稼いだ人が、えらい。新しい発見をした人が、えらい、素晴らしい発明をした、人がえらい。」




 グサり、ブシャ、グサり、ブシャー




 男5は、ナイフで僕の心臓を、刺して、抜いて、グリグリした。




 やめてくれ




 穢さないでよ




 僕は、破滅ちゃん、だけのものだ。



「結果、残せず、勝てなかった敗北者は、死ねよ。幸せは、勝ち続ける事。欲しいものを力で、手に入れる事。他人を意の儘に操り、思い通りにする事。ちがうか?」

 僕は、男5が、本当の愛と思い遣り、優しさを、失ってしまった、欲望に支配された、悪魔にみえた。




 ダメだ。




 人間は、救いようがない。




 不毛な競争の果てに、残るのは、虚しさと、荒野だけだ。




 喰らい尽くされた未来を生きるのは,次の世代の子供たちなのだ。




 運命を受け入れ、許せず、傲慢に喰らい尽くそうとする、ツケは、弱者と、次の世代に降りかかる。




 愛するものの為に、今を諦めて、未来の為に、自己犠牲しない世の中に、未来はない。




 「もうダメだ、限界だよ。」

 僕は、項垂れ、呟いた。




 破滅ちゃん、僕、殺るよ。




 人間は、滅亡させる。




 目にモノみせてやるぞおおお!




 「皆殺しだよ。」




 ボソりと、告げ、ニヤついた。




 「皆殺しだって?身体中が拘束された、君に、何が出来るのだね。」

 男5は、挑発し、煽り、揶揄からかうようすで、僕をみて、鼻で笑った。




 「いくぞおおお、おらあああ。大爆発だあああ。」




 バッコーン、ドガ、ポゴ、ドガガガガガ




 バゴーン!ドカ、ドカ、ヒューン、バッコン!

 



 身体が溶けるうううううううう




 死んじゃうよおおおおおおおお




 痛い、痛い、痛い




 凄まじい光に包まれた。




 辺り一面、真っ白だ。




 建物は、破壊され、灰となった。




 人の姿は、なかった。




 飛び散った血の跡だけはある。




 血まみれの場所もある。




 僕はちりとなり、散らばった。




 ニョロ、ニュロ、ニョルロン




 再生していく。




 「よし。」

 僕は、復活し、生き返った




 「復讐じゃあない。」

 呟いた。




 「終わらせるんだ、世界を無にかえす。」

 歩き出した。




 「ワン、ワン、ワン!。」

 犬の鳴き声?




 「ロボットか?」

 犬のロボットが、爆発の外から、やってきた。




 僕を囲んでいる。




 かなりの数だ、300体はいる。




 ズドドドドドドドドドド




 一斉に僕へ、マシンガンを飛ばしてきた。




 ああああああああああああああああ




 めっちゃ、痛てええええええ




 急所ばかり狙ってくる。




 身体は銃弾が貫通して、穴だらけになってしまった。




 うわあああああああああ。




 「破壊してやるよ。」




  バゴーン!ドカ、ドカ、ヒューン、バッコン!



  僕は、爆発した。




  犬型ロボットは、灰になった。




  僕は塵になった。



 

  ニョロ、ニュロ、ニョルロン




  再生していく。

 



  「よし、再生した。」

  再生速度も、だいぶ、はやくなってきた。




  恐ろしい、ロボットだったな。




  はやく、破滅ちゃんのところに、帰らないと。




  ドドドドドドドドドドドド




  戦車が、やってきて、僕を囲んだ。



 

 「君は包囲されている、抵抗はやめなさい。」




 戦車から、アナウンスがきこえる。




 「うるさいな、もう、いやだ。何度だって、死んで、爆発して、無にかえしてやるよ。」

 僕は、吐き捨てるように、言った。




 「爆発だ。」

 僕は、戦車の方へ走っていった。




 バッコーン、ドガ、ポゴ、ドガガガガガ




 バゴーン!ドカ、ドカ、ヒューン、バッコン!




 明るい光が、辺りを包み込む。




 爆破した。




 前方の戦車が、灰に変わる。




 僕は、塵となった。




 数が多すぎる。




 まだ、後方と左右の戦車は、動いている。




 はやく、殺さないと―。




 僕は、塵を集めて、肉を作っていく。




 小さな肉の状態だ。




 よし、飛びついてやる。




 ブリュ、ブリュ、ベチャ、ベチャベチャ。



 

 辺り一面に散らばっていた、肉の塵たちが、戦車に、くっつく。




 「な、なんだ、こりゃ、気味が悪い。肉片か?」

 戦車の中から、男たちの声が、きこえる。




 戦車の中で、人々は、疑問と不安の声をあげていた。




 爆発だ。




 バコ、ボコ、バコ、ボコ、ブチャ、ボチャ、ブチュ、ニュ、ヒュヒュ―




 バチバチと、花火が連続で、弾けるかのように、肉片が爆発していく。




 痛いなんてものではない。




 おぎゃあああああああああああああああああ




 分散された身体たちが、全部、塵じりになっていく、果てしない、痛み、苦しみ。




 焼けている、また、焼けている、ちぎれていく。




 ああ、へっへへへ、もう、キモチいなあ。




 痛すぎて、感覚が、麻痺して、気持ちよくしてしまうほどに、苦しい、痛い。




 ああ、ふっひょえへへえ。




 戦車は、灰になっていく。




 爆発しては、また、塵となった肉たちが、戦車に飛びついて爆発するのだ。




 辺りを、完全に死に滅ぼすまで、爆発し続ける、永久機関である。




 僕は、爆弾、完全に排除するまで、爆発し続ける。




 ボコ、バコ、ドガ、ドコ




 バコーン、ボ、ボ、バコ、ビコニュ、ボロロドン―




 爆発が、きらめき、ピカピカ光る。




 あたりの、戦車は完全に、灰となった。




 ニョロ、ニュロ、ニョルロン




 再生する。




 「よし、復活。」



 

 ヒュウウウウウウウウウウウウ―




 空から、音がきこえる。




 ビュウウウウウ、ドガーン!



 

 空中から、爆弾が落ちて僕に直撃した。




 痛てええええええええ、やめとくれえええええええ。




 ヤバすぎる、一瞬で、身体が粉々になった。




 戦闘機が、空から、爆撃しているのだ。


 


 空から、狙われたら、どうしようもないよ―。




 ニョロ、ニュロ、ニョルロン




 粉々になった、身体が再生していく。




 再生しても、すぐに、上空から、爆撃で、粉々にされる。




 痛い、苦しい、おかしくなってしまう。




 心が、持たない。




 しんどいよ。




 再生しても、再生しても、上空からの爆撃に対応する術を持ち合わせていなかった。




 助けて―、破滅ちゃん、僕、もう、ダメかも知れない。




 僕は、気を失ってしまった。




 



 

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