16 世界滅亡は、破滅ちゃんだって、本当はつらい。

 「おはよう、破壊くん。」

 破滅ちゃんの声がきこえる。




 僕は、死んだのじゃなかったのか。




 目を開けると、天井がみえた。




 ベッドで、横になっているようだ。




 ひょい




 破滅ちゃんは、僕の顔を覗き込む。




 「やあ、おはよ。あたしの家だよ。寝室だね。」

 破滅ちゃんは、目を細めた。




 ベッドが、3台と、黒いソファ、黒い木のテーブルが置いてある。




 白い壁の部屋だ。



 

 青色のカーペットが敷かれている。




 「わからない、どうして僕は、生きているんだ、破滅ちゃんの家にいるんだ?」

 僕は、首を傾げ、破滅ちゃんをみて、言った。




 「あたしが、ちょちょいと、気絶してた、君を連れて帰ったんだよ。」

 破滅ちゃんは、事も無げにかえした。




 「どうやって、空を埋め尽くす戦闘機に爆撃されていた僕を、助け出したんだ?」

 僕は、きいた。




 「あなたを背中に背負って、音速の100倍、秒速33.1㎞で、移動して、帰宅したのよ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 冗談みたいな話だ。



 

 破滅ちゃんの身体能力は、異次元だ。




 「流石です。」

 僕は、目を丸くした。




 「もっと、スピードを出そうと思えば出せるわよ。」

 破滅ちゃんは、にこやかな表情を向けた。



 

 「破壊くん。あらためて、久しぶりね。あなた、3日、目を覚まさなかったのよ。」

 破滅ちゃんは、僕に向き直って、口を開いた。




 3日、気を失っていたのか。




 「よく、やったわね。国会は、消え去ったわ。王も、官邸も、多くの一般人も、葬ったわね。」

 破滅ちゃんは、明るい、喜々とした声で、僕を褒めた。




 やってしまったのか。




 本当に、殺ったのだ、僕は、国家反逆者、大量殺人者、もう、あとには引けない。




 「どうしたの、暗い顔して?」

 破滅ちゃんは僕の顔を覗き込んだ。




 「…。」




 僕は、押し黙った。




 「大丈夫よ。あたしは、あなたの味方よ、世界のすべてを敵に回しても、全然気にしない。」

 破滅ちゃんは、ニコりと、笑った。




 僕には、破滅ちゃんしかいない。




 天使にみえる、美しい。




 「ありがとう。破滅ちゃんが、助けてくれなかったら、死んでた。」

 僕は、涙を流す。




 「おいで。」

 破滅ちゃんは、両手を前に広げ、僕の方へ寄る。




 「破滅ちゃん。」

 僕は、破滅ちゃんの腕の中に、入っていく。




 ギュ




 「よしよし。頑張ったねえ、いい子だよ。えらいえらい。」

 破滅ちゃんの手が、優しく僕を包み込む。




 破滅ちゃんの、息、仕草、心音を感じる。




 ぬくもりを感じる。




 すべてが、許された感覚を覚える。




 「いつも、ありがとう、破滅ちゃん。」

 僕は、ニッコり笑った。




 「ええ。こちらこそよ。」

 破滅ちゃんは、少し驚いた様子で僕をみた。




 「どうしたの?」

 僕は、首を傾げた。



 

 「あなたが、愛おしくて―。」

 破滅ちゃんは、微笑んだ。




 「大事な、破壊くん。あたしの、光だわ。」

 破滅ちゃんは、僕の頭をポンポン、叩いた。




 「じゃ、ご褒美あげないとね。」

 破滅ちゃんは、ニコりと笑った。




 僕は、破滅ちゃんに、抱きしめて、貰えるだけでも、十分だ。




 破滅ちゃんと、会って話ができるだけで、幸せだ。




 「こっち向いて。」

 破滅ちゃんは、僕の顎を、右手で上げて、左手を肩に回した。




 チュ




 優しく、口づけをした。




 とろけるように、甘い。



 

 破滅ちゃんの吐息、香り、唇を感じる。




 「んんっつ。」




 チュウウウ、チュッ、チュパッ、ブチュ。




 何度も、口づけを交わす。



 

 キスなんていらない。




 破滅ちゃんが、僕を大切に思ってくれているのならば、十分幸せ。




 ありがとう、破滅ちゃん。




 「うん。ごめんね、破壊くん。世界を滅亡させるなんて、本当は、したくないんでしょ?」

 破滅ちゃんは、物憂げな表情で、僕をみた。




 「…。」




 「あたし、自分が悪魔なんだって、思える。世界を滅ぼすことをやめて、二人で幸せに過ごすことだってきっとできたはず、どうして、破滅させなきゃダメなんだろう。」

 破滅ちゃんは、疑問を口にした。




 「僕にだって、わからない。君が望むから、一緒に、背負おうと思うんだ。」

  僕は、返した。




 「ありがとう。世界は、また崩壊させないと、ダメだ、だから、あたしは生まれてきた。」

 破滅ちゃんは、空を仰いだ。




「一度0に初期化して、作り直さないといけない、ずっと繰り返されてきたことだ。」

 破滅ちゃんは、遠くをみた。




 「壊す役に、あたしが選ばれただけ。」

 破滅ちゃんは、運命を受け入れていた。




 「一人で、やるつもりだったけれど、あなたを巻き込んじゃった。」

 破滅ちゃんは、目を伏せた。




 「いいんだよ。僕は、これでよかった。破滅ちゃんと一緒にいたいから。」

 僕は、笑った。




 「ありがとう。」

 破滅ちゃんは、微笑んだ。




 「世界の滅亡には、まだまだ、やることがある。軍事施設壊滅と、原子力発電所爆破よ。」

 破滅ちゃんは、元気よく、言った。




 軍事施設壊滅と原子力発電所爆破ですってえええええええええ!!!







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