24 海が消滅!?

 「僕は、どうして、世界を破壊させたんだ?わからない。」

 爆発で、辺りは、更地となっていた。




 人々の姿はなく、塵だけが、宙を舞っている。




 「まだ、生き残っている人や動植物が、あるな。」

 僕は、道を歩き始めた。




 破滅ちゃん、僕やったよ。




 「よくできました。破壊くん。」

 破滅ちゃんの声が、きこえる。




 前をみると、破滅ちゃんが、目の前にいた。




 「おいで、ほうら。」

 破滅ちゃんは、両手を前方に広げ、胸へ僕を呼び寄せた。




 「破滅ちゃあああんんん。」

 僕は、破滅ちゃんの胸に向かって、飛び込んだ。




 「よしよし。えらいねえ、いっぱい、いーぱい、殺せて、街を破壊できたねえ。えらい、えらい。」

 破滅ちゃんは、僕を胸、押し付けて、抱きしめた。




 いい匂い。



 

 「顔、赤くしちゃって、かわいいよ。」

 破滅ちゃんは、僕の表情をみて、楽しんだ。




 「ごめんね。核爆弾は、ちょっと、痛かったよね。」

 破滅ちゃんは、涙を流し、僕の、頭を撫でた。




 「痛かったよおお、破滅ちゃああああんん。あれ、ヤバすぎたよ。」

 僕は、赤ん坊に戻ったように、泣きついた。




 「うん、うん。また、ひとつ、世界滅亡に近づいたね。よかった、よかった。」

 破滅ちゃんは、優しく頷き、微笑んだ。




 「どう、世界を滅亡させていくのは、気分はいい?」

 僕は、わからない、どうして、世界を滅亡させるのかが、破滅ちゃんのためなのか?




 じぶんは、どうなりたいのだろうか。




 どうして、僕は、生きるのか、心があるのか。




 世界を滅亡寸前まで、追い込んでも、尚、心は消えない。




 じぶんが、どこへ向かっているのか、何者で、いま、いっしょにすごせているのは、とても、ふしぎなことに思えてきた。



 

 破滅ちゃんと、いたいから、ただ、それだけの理由。




 きっと、僕が生まれてきたことに、たいした理由なんて、なかった、今、幸せを感じていられる、世界を滅ぼしてみるのも、ありかもしれないとおもえる。




 「僕は、社会から虐げられてきたけれど、逆に、虐げる側になってしまった。ただ、破滅ちゃんと一緒にいたいというエゴで。」

 僕は、ポツり、ポツりと話始めた。




 「うん。」

 破滅ちゃんは、相槌を打って、僕の話をきいてくれている。




 破滅ちゃんが望むのだったら、死んでもいいし、何だって、できる。




 破滅ちゃんも、僕のことを大事に思っていてくれている。




 他の人たちは、僕をみると、まるで、ゴミを捨てたり、ゴキブリを叩き殺すのを同じように、平然と掃除しようとしてくる。




 破滅ちゃんは、違った、僕を、肯定してくれた。




 他の人たちは、僕をまったく、思ってはくれなかった、利用しようとしたり、世の中から抹殺しようとした。




 社会にとって、僕は、厭なもので、みたくないものなのだ。




 破滅ちゃんは、僕をちゃんとみて、愛してくれた。




 「どうでも、いいんだ。世界の事なんて、僕は、大事な人のために、自分の身を削ってみたかった。どういう感覚なのか、知りたかったんだ。」

 僕は、笑った。




 「嬉しいな。大事に思われてるんだね、あたし。」

 破滅ちゃんは、少し照れている様子で、髪の毛を弄った。




 気恥ずかしくなって、しばらく沈黙が続いた。




 「あたしの愛は、重いでしょ?きっと、君しか耐えられないね。」

 破滅ちゃんは、顔を僕に近づけて、目を細めた。




 「破壊も破滅も、全部、受け止められる。」

 僕は、涙を流した。




 「一緒に、終わらせよう世界を。誰かが、やらないと、ダメなんだ。」

 破滅ちゃんは、目を閉じて、覚悟を決めたように開いた。




 「どうして?」

 僕は、俯いた。




 「終わらせてみて、わかることもある。知ってほしいことがあるんだ。」

 破滅ちゃんは、ニコりと笑った。




 「知ってほしいこと?」

 僕は、ききかえした。




 「ああ、全て失ってからじゃないとわからないこともある。」

 破滅ちゃんは、優しく微笑んだ。




 「ちょっと、ついてこい。」

 破滅ちゃんは黒い翼の焔を出して、飛び出した。




 ギラーン




 シュラララララ




 「まってくださいよおお。」




 シュルルルルル




 白き焔の翼を背中に、破滅ちゃんを追いかける。



 

 「街が世界から、まったくなくなっちまったなあ。」

 破滅ちゃんは、空から、更地となった地面を見下ろしながら、言った。




 「なんだか、寂しいです。」

 僕は、呟いた。




 「でしょ。いない方がいいなんてないんだよ。あたしがみせたかった景色のひとつだ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「自然って凄いよね。放射能でやられても、植物も動物も力強く生きようとしてる。ほらみて。」

 破滅ちゃんは、巨大な樹木を指さした。




 空には鳥も飛んでいた。




 「別の生き物が、いるって、いいですね。」

 僕は、心が少し、軽くなった。




 「ああ。だのに、あたしたちは、生きる為に、殺し合って、食べなきゃならない。残酷だよな。」

 破滅ちゃんは、苦々しい表情を浮かべた。




 「人類は、生き物を必要以上に殺してきた、生き物に感謝しなくちゃならない。食べ物に感謝しなくちゃならない。いいや、感謝することしかできない。」

 破滅ちゃんは、目を瞑った。




 「尊いだろ?命ってのは、力強くて、偉大だ。ずっと、続いてきたものだ。」

 破滅ちゃんは、拳を握った。




 「世界中の国々を、破壊してみてどうだった?」

 破滅ちゃんは、僕の方を向いて、きいた。




 「生きてた。僕に破壊されまいと、必死に戦ってた。」

 僕は、答えた。




 「命の危険があるからね。富裕層も、貧乏も、権力者も、非権力者も、おかまいなしだしね。強大な力の前には、身分もなにもなくなるのさ。人ってのは、本来、そういうもんさ。」

 破滅ちゃんは、返した。




 「ほら、破壊くん。森林だ。みてみなあ。」

 木々が生い茂っている。




 「大昔、人は、山や森、川や海に感謝し、奉ってきた。」

 破滅ちゃんは、口を開いた。





 「自然破壊しましょう。」

 破滅ちゃんは、少し遠くを、ぼんやりと眺め、やがて、決心したように、言って、目を細めた。




 「自然破壊ですって?」

 僕は、目を丸くしてききかえした。




 正気だろうか。




 寂しいじゃないか。




 「壊してみないとわからない。まずは、海の生物を滅ぼしましょうか。」

 破滅ちゃんは、宙を歩きながら、手を顔の前で優しく合わせて、ニコりと、笑った。




 ゾクりとした。




 破滅ちゃんは、本当に、世界の全てを滅ぼす気なのだ。




 「放射能がばら撒かれたといって、海に生物が住めなくなるわけじゃあるまいし、森の生物や木々、村の人々まで絶滅するわけではないでしょ?」

 破滅ちゃんは、首を傾げて、僕の方へ歩み寄って、腰を少し屈めて、下から顔を覗いた。




 「ほうら。ポケーっとしてないで、ついてきなさい。」

 破滅ちゃんは、黒く燃え盛る焔の翼をはためかせて、飛んでいく。




 「速いよ。破滅ちゃああああん。」

 僕は、破滅ちゃんの後をついていく。




 「みえるか。青く美しい大海原が。」

 破滅ちゃんは、目を輝かせ、海を、みた。




 「すごい、綺麗だ。」

 太陽の光に照らされ、青い海がピカピカと輝いている。




 水平線がみえる。




 雲は紅く照らされ、夕暮れを感じる。




 「だろ。いい景色だ。世界は美しい。」

 破滅ちゃんは、満足そうに微笑んだ。




 「飛び込んでよ、破壊くん、泳ぐの好きでしょ?」

 破滅ちゃんは、顔を僕の右頬に近づけて、目を細めた。




 「飛び込んじゃいなさいよ。ほおら。」

 破滅ちゃんは僕の頭を海に向けて、押した。




 「あ?」




 うぎゃあああああああああああああああああ。




 なんて、力だ。




 グルグルグルグル―




 バッチャーン




 上空3000mから、落下だ。




 どうにか、両手を頭の後ろで伸ばし、右手の平と左手の甲を合わせた。




 蹴伸びのポーズは取れたぞ。




 海に向かって、飛び込んでいく。




 バッチャーン




 海面に突入した。




 波の輪っかが綺麗に、1つだけ立っていく。




 「飛び込み、上手ね。」

 破滅ちゃんは、手を叩いて笑った。




 深く海中に沈んでいく。




 溺れる―




 死んじゃうよ。




 沈んじゃうよ。




 やがて、死体が海中に浮いた。



 

 「あーあ、破壊くん、死んじゃったあ。」

 破滅ちゃんは、面白いものをみた様子で、ニヤニヤ笑った。




 シャアアアアアアアアク!




 サメ!?




 食べられる。




 「大丈夫だよ。サメは滅多に人を襲わない。」

 破滅ちゃんは、慌てふためく、僕をみて笑った。




 ガブ、ガブ、ガブり




 食ってるじゃあねえか。




 痛てええ。




 腕が食われ、足が食われ、身体中が粉々にされる。




 「ありゃりゃあ、ま、腹が減っている場合は危ない。」

 破滅ちゃんは、頭を掻いて、申し訳なさそうに、苦笑いした。




 「破壊くんは、あたしのよ。泥棒サメめえええ。」

 破滅ちゃんは、サメに向かって、地上3000mから、両足を揃えて、蹴った。




 鮫の腹を貫通し、血が噴き出す。




 鮫が集まって来る。




 「血におびき寄せられたみたいだね。」

 破滅ちゃんは、呟いた。




 「悪いが、死んでもらうよ。」

 破滅ちゃんは、鮫たちを、殴ったり蹴ったり、刺したりして、皆殺しにした。




 海の一部が血の色で染まる。




 鮫たちは、跡形もなくなり、塵となった。




 「汚い鮫め。」

 破滅ちゃんは、吐き捨てるようにして言った。




 「潜るぞ。」

 破滅ちゃんは、海へ潜っていった。




 「まってよ、破滅ちゃん。」

 僕は、破滅ちゃんの後について、潜っていく。




 「ダメだ。息が持たないよ。」

 僕は、30mほど潜ると、苦しくなって、耐えられなくなった。




 「情けないやつだな。」

 破滅ちゃんは、我が子を見守る親のような表情で僕をみた。




 ブク、ブク、ブク―




 溺れちゃうよぉ




 息が出来ないよおお。




 死んだ。




 死体が浮いていき、水面に上がろうとする。




 「おい、かってに上がってくんじゃねえよ。」

 破滅ちゃんは、僕が浮き上がっていかないように、僕を抱きしめて、海の底へ潜っていった。




 ニュロ、ニューロン




 生き返る。




 「ぶはあ。」




 ブク、ブク、ブクブク




 「生き返ったね。どうだい、深海1000mの気分は?」




 「うぐッ。ぶわあ。」




 死ぬ。




 身体が潰される。




 深海の水圧に耐えられないよ。




 「もっと、潜ってくぞ。」

 破滅ちゃんは、潜る勢いを強めた。




 うええええ、苦しいよおお。




 死んでるよおおお




 「身体をもっと、柔らかくしろ。」

 破滅ちゃんは、生き返っては死ぬ僕をみて、呆れた様子で、助言した。




 柔らかくって、わけがわからないよ。





 呼吸もできない、内臓がすぐに破裂する。




 「水の中で呼吸しろ。」

 破滅ちゃんは、わけのわからないことをいった。




 水の中で、呼吸なんてできないよ。




 「死に続けるのは、つらいだろ、深海を泳げ。 できるだろ?」

 破滅ちゃんは、まるで、水中ではなく、地上を歩くかのごとく、水中を歩いて移動した。




 まるで、重力を感じさせない。




 下に向かって沈むわけでも、上に向かって浮くわけでもなく、横に地面があるかのごとく、海底に向かって歩いている。




 トコ、トコ、トコ、トコ―




 一体、どうなってんだ。




 僕の右手を、右手で、持ったまま、破滅ちゃんは、海底の奥底に向けて、歩く続ける。




 「水に慣れないと、ちゃんと、泳げないぞ。大丈夫、ゆっくり、息を吸って。」

 破滅ちゃんは、僕に優しく、手解きする。



 

 フーハ、スウハア




 水中で、息を吸う。




 身体に水が流れ込んでくる。



 

 「溺れてんぞ。水から空気を吸えよ。」

 破滅ちゃんは、指南を続ける。




 「心に中に潜ってけ。」

 破滅ちゃんは、言った。




 心の中に潜る。




 深い、深い、心の奥は、深海みたいだ。




 生きたい。




 破滅ちゃんと、一緒にいたい。




 僕は―




 「え?」

 驚いた。




 深海なのに、水中の中なのに、圧力を感じない。




 「どうだ、気分は?気持ちいだろ、深海ウォークは。」

 破滅ちゃんは、二コりと、笑った。




 面白い感覚だ。




 ポ




 灯りが付いた。




 「懐中電灯だ。明るいだろ、深海は、暗くて、目じゃ、なにもみえないからな。」

 破滅ちゃんは、灯りを僕へむけた。




 「明るいですね。」

 僕は、灯りに照らされた、深海をみて、明るい心地よさを感じていた。




 灯りに深海の生物たちが集まってきていた。




 「深海には、面白い生物がたくさんいるだろ。」

 破滅ちゃんは、深海を泳ぐ生物をみた。




 地球上の生物だとは思われないほど、歪な形をした、深海の生物たちが、泳ぎ、命のやり取りをしていた。




 「自然とは、醜いが美しいものだ。」

 破滅ちゃんは、深海生物が殺し合い、喰らい合う様をみて、言った




 「ついてこい。」

 破滅ちゃんは、深海を走って移動していく。




 ブシャアアアアアア




 深海大地の裂け目から、熱水が噴き出していた。




 「あたたかい場所ですね。」

 僕は、ポカポカした気分でいった。




 深海は暗くて寒いが、熱水が噴き出す大地の裂け目付近は、あたたかく、懐かしさを感じさせる場所だった。




 「熱水噴出孔っていわれててな、生命の、はじまりに近い場所らしい。」

 破滅ちゃんは、熱水噴出孔に近づいて、手を広げた。




 「生命って、いつ、どこで、はじまったんだろうな。宇宙から来たのかな、地球から、はじまったのかな―。」

 破滅ちゃんは、生命に思いを馳せていた。




 「いいですね。深海、ロマンがあります。」

 僕は、自然の奥深さに感動を覚えていた。




 「破壊しとうこうか。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「破壊?まさか―。」

 僕は、悍ましさを感じた。




 「ええ。想像の通りよ。君に爆弾になってもらって、海底を血で埋め尽くしましょ。」

 破滅ちゃんは、僕をナイフで、切り刻んだ。




 「破壊くんには、魚雷になってもらおーっと。」

 魚雷ですって!




 おそろしい。




 「分裂複製して、海を埋め尽くしましょうねえ。」




 シュパリ、シュッパシュパ、パパパ、シュ、グリュ、ニュニュニュシュ―




 破滅ちゃんは、僕をナイフで切り裂いて、微塵にした。




 肉が、粉々の粉末となる。




 シュパ、シュパ、ボォオオオオオ




 粉末となった肉を、切って、切って、焼いた。




 塵となった。




 「ようし、分裂できたね。複製してねえ?」

 破滅ちゃんは、ニコニコしながら、僕の複製を促す。




 促されるううう。




 「できるよねえ?いっぱい、破壊くんが、産まれるねえ。」




 グリョンリョン、ニュニュニュ、グニョ




 複製していく。




 「海を、破壊くんで、埋め尽くして、爆発させよう。」

 破滅ちゃんは、複製していく、僕をみて、話を進める。




 「君の肉塵を、海にバラまかないとね。」

 破滅ちゃんは、胸から袋を取り出すと、僕の身体をバラバラ粉々にしてできた塵を中にいれて、海中に撒きに行った。




 パラ、パラ、パラ、パラ―




 10秒もしないうちに、世界中の海を深海まで、潜り、回って、塵をバラまいた。




 僕が、複製され、産まれる。




 70億は増えただろうか。




 海を、埋め尽くさんとする、僕、僕、僕。




 シャラララーン




 破滅ちゃんは、70億体の僕の近くに、一体づつ、分裂複製した。




 「魚雷になれよ、破壊くうううん!。」

 破滅ちゃんは、僕たちの足に、エンジン、プロペラ、爆薬を取り付けた。




 「素晴らしい、装置だぞ、水中でもマッハ20は出る、優れものさ。」

 破滅ちゃんは、誇らしげに、言った。




 「よし、発射台を用意してと。」

 破滅ちゃんは、胸から、発射台を取り出すと、僕をセットした。




 「破壊くん魚雷準備完了。」

 破滅ちゃんは、大きく明るい声で、告げる。




 「破壊くん。わかってるよねえ?ちゃんと爆発しなさいよ。」




 ペチン




 顔を、左頬を、右手の平で、ビンタして、命令した。




 「はいいいい。ちゃんと、爆発しますうううう。」

 僕は、興奮して、返事した。




 「行くぞ、おらああああああ。3 2 1―。」

 破滅ちゃんは、カウントダウンをはじめた。




 「ゼロおおおおおおおおおおおおおおおお!ぶっ飛べええええええ。」




 シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥ




 ババババババババアアアアンンン!




 70億の僕が、魚雷として、マッハ20で、海を突っ込んで、爆発していく。




 物凄い、威力だ。




 海中の、生き物が、丸焦げ、粉々となり、死に絶えていく。




 70億の僕が、死に絶え、粉々となり、また、分裂し、複製されていき、数が増えていく。




 「わあお。」

 破滅ちゃんは、空を飛んで、上空から、見下ろして、声を上げた。




 海は、僕の肉で、埋め尽くされていた。




 バッコーン!




 海を埋め尽くす、僕の肉たちが、全て、一斉に爆発する。




 痛い、痛い、おかしいよ。




 もう、感覚なんてないよ、無だ。




 「素晴らしいですよ、破壊くん!。」

 破滅ちゃんは、満足そうに、興奮した様子で、頷いた。




 海が干上がり、崖や、岩場、砂場となった。




 粉々になっていた僕は、やがて、再生していき、生き返っていく。




 「ま、まさか、海がなくなるなんて―。」

 驚いた。




 海の水は、完全になくなっていた。




 深海は、底のみえない、暗い溝になっている。




 「空が、青くない。」

 灰色の空が広がっていた。




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