2 破滅ちゃんとお風呂で、あちち。

 「あら、起きたのね。おはよう、ちゃんと、生き返れてえらいわね。」

 破滅ちゃんは、僕を、みつめ、微笑んだ。




 「あなた、お風呂に入ったことないでしょ。入れてあげるわ。いらっしゃい。」

 破滅ちゃんは、僕をお風呂に入れた。




 広いお風呂だった。




 そもそも、お風呂ってなんだ?




 池みたいな、ところに、お湯が張ってある。




 シャアアアアアア




 ホースに繋がれた、棒の先が円状になっていて、小さな穴がたくさんついている、穴から、水が勢いよくミストとなって出てくる。




 「ほら、シャワー浴びて?」

 破滅ちゃんは、僕を、小さな椅子に座らせた。




 気持ちい




 水が身体に当たる。




 浄化されている。




 「いいでしょ、シャワー。身体の汚れが取れるのよ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 皮膚の隙間の汚れに入り込んで、流されていくのがわかる。




 ピチャ、ピチュ、ピチュ




 破滅ちゃんは、音を立てて、容器から出した白い液体の、泡をたてはじめた。




 「身体、洗ってあげるわ。」

 破滅ちゃんは、僕の身体に、泡をつけた。




 「泡?」

 僕は、首を傾げた。




 「ボディソープよ。スベスベになるわ。」

 破滅ちゃんは、僕の身体を、隈なく、洗った。




 恥ずかしい気持ちと、嬉しい気持ち、破滅ちゃんの手と、吐息を感じて、身体がそわそわする。




 生きているのが、不思議だ。




 スベ、スベ、アワワ




 「どう?癖になっちゃうでしょ?」




 足裏


 足指と足指の間


 すね

 

 ふくらはぎ


 足関節


 ふともも


 股


 背中


 お腹


 胸


 首すじ


 下から順に、マッサージして、洗っていき、僕の耳元で、囁いた。




 ゾクりと、身体が、強張る。




 「かわいい。」

 破滅ちゃんは、身体を僕の、背中に押し付けてきた。




 スベスベで―




 プニプニで―




 心地いい、破滅ちゃんを感じる。




 シャアアアア




 破滅ちゃんは、僕の身体についている泡と汚れを、シャワーで流した。




 「ピカピカになったわね。」

 破滅ちゃんは、ニコリと笑った。




 「次は、髪の毛ねえ。長い髪なのに、ボサボサで勿体ないわ。」

 破滅ちゃんは、僕の髪の毛を触った。




 先刻とは違う容器から、白い液体を出すと、泡を立て始めた。




 シュワ、シュワ、シュワ




 「シャンプーよ、髪の毛を洗うのに使う液体。」

 破滅ちゃんの手が、髪の毛を洗い、頭皮を刺激する。




 気持ちい



 

 「シャンプー気持ちい?」

 破滅ちゃんは、頭皮をマッサージして、老廃物を取り除く

 



 「うう。破滅ちゃん、気持ぢぃよぉ。」

 幸せだ、罰が当たりそうで、コワくなる。




 「んふふ。よかったわねえ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 シャアアアアアア




 髪の毛と頭皮の泡と汚れが、シャワーで流される。




 「最後に、リンスつけるわね。」

 破滅ちゃんは、白く透明な泡立たない透明の液体を、手に取って、僕の髪の毛につけた。




 シャアアアアア




 「髪の毛が、整うのよ。」

 破滅ちゃんは、シャワーで、リンスを洗い流した。




 「あなた、綺麗な目をしてるわね。」

 破滅ちゃんは、僕の目を覗き込む。



 「いただきまーす。」

 破滅ちゃんは、僕の右目の辺りに吸い付いて、舐める。




 破滅ちゃん?




 目に唾液と舌が入ってきて、痛い。




 思わず目を閉じる




 「んっ。」

 破滅ちゃんは、閉じられた目に舌を尖らせて、侵入させてくる。




 「んんんっ。」




 チュウウウウウ




 右目が吸い取られた。




 血が流れているのがわかる。




 ダラダラ




 「んっふふ。破壊くんの、右目、美味ひいなあ。」

 破滅ちゃんは、僕の右目を咀嚼している。




 モグモグ




 ゴクン




 「左目もちょーだい?」

 破滅ちゃんは、とろける魔性のボイスで、囁く。




 彼女をみていると、すべてを許してしまう。



 

 破滅ちゃんは、僕の左目に吸い付いた。




 チュウウウウウウ




 「えらいわねえ、今度は、目を閉じなかった。よしよし。」

 破滅ちゃんは、僕の頭を撫でて、目を細めた。




 左目のあった眼窩は空っぽになった。




 両目を失って、目がみえない。




 真っ暗だ。




 破滅ちゃんは?




 「破壊くーん。」

 破滅ちゃんは、僕の背筋を指でなぞった。




 ビクン、ビクッ




 身体が、破滅ちゃんの指に反応して、ビクン、ビクン、強張る。




 「んふふ。」

 破滅ちゃんは、僕の背筋を舐めた。


  


 「どう?」

 破滅ちゃんは、目のなくなった僕の眼窩をなめて、鼻と口を、吸った。




 「あれ?もう、目が治ってきてるねえ、再生速度、あがったのかな。凄いねえ、よかったねえ。」




 グさ




 破滅ちゃんは、再生しかけている両目に指を刺して潰した。




 「うう。」

 僕は呻いた。



 

 痛い。




 ギュウうううう




 「破壊くううん。かわいいねえ。」

 破滅ちゃんは、僕の首を思いっきり両手で締め付けた。




 破滅ちゃんの両手を首で強く感じる。




 涙が流れてくる、呼吸ができない。




 苦しいよ、破滅ちゃん。




 「苦しいでしょ?ほら、はやく死んでもいいんだよお。」

 破滅ちゃんは、魔性の笑みを浮かべて、耳元で、籠った声を出して、囁いた。




 死ぬよ―、破滅ちゃん




 待っててね、生き返るから―。




 「死んじゃったか。」

 破滅ちゃんは、死んだ僕の遺体に、蝋燭の熱い蝋を流し、火傷させた。



 

 「あつっ。」

 数秒後、僕は、生まれた。




 「ふふふ。気持ちいでしょ。」

 破滅ちゃんは、笑った。

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