28 大気圏を超えて、人工衛星に突撃。

 「うぅ、苦しい。」




 宇宙まで、あとどれくらいだろうか。




 ビューン、ヒュ―ン、ヒューン!




 衛星核爆弾は、やまない。



 

 「まだ、地球で一番高い山と同じくらいの高さよ。成層圏、上空10㎞ほどね」



 

 破滅ちゃんは、酸素欠乏症を起こしている僕をみて、微笑んだ。




 「死ぬよ。」




 僕は、白目を剥いて、泡を吹き出した。




 「死ぬな。まだ、宇宙まで390㎞あるんだぞ。」




 破滅ちゃんは、僕の肩に正面から、両手をかけて、揺すった。




 死なせてくれよ。




 苦しい、肺が痛い、喉が痛い、血液に酸素が足りない。




 「おまえ、まさか、酸素を吸ってるんじゃあ、ないだろうな。」




 破滅ちゃんは、目を見開き、呆れた様子で、僕をみた。




 酸素は吸うものだろ。




 「環境に適応しろ。あたりにあるエネルギーを変換しろ。」




 エネルギーを変換?




 わけがわからないよ。




 「太陽の光があるだろ、風もある、音もある。自然から、作り出せ。」




 温かい、太陽の光。




 心地いい風。




 空気の振動。




 わかってきた。




 呼吸だけが、生存ではない。




 自然が、命を与えてくれるんだ。




 また、殺しもする。




 「ありがとう。」




 僕は、空気を吸った。




 酸素ではない。




 命を貰ったのだ。




 「命のありがたみが、わかったみたいだな。」




 破滅ちゃんは、僕の頭をポンポンと叩いて、撫でた。




 「シアノバクテリアには、感謝してる。だが、宇宙では、酸素はない。」




 破滅ちゃんは、わけのわからないことを言った。




 「シアノバクテリア?」




 僕は、首を傾げた。




 「地球で、最初に光合成をはじめた生き物だよ、酸素呼吸が当たり前に出来るのも、彼彼女らのおかげだ。」




 破滅ちゃんは、答えた。




 「寒いよ。破滅ちゃん。」




 僕は、ブルブルと震えた。




 「マイナス70℃といったところかな。熱圏までは、ずっと温度が下がっていくよ。」




 破滅ちゃんは、震える僕をみて、目を細めた。




 「凍ってきましたねえ―。」




 破滅ちゃんは、凍り付く僕をみて、呟いた。




 「どっこいしょっと。」



 破滅ちゃんは、胸から筒と、ボトルが繋がった機械を取り出した。




 「えい。燃えろやああ。」




 筒から、炎が放出され、僕に直撃する。




 あっちいいいいいい、やりすぎだよおおおおお。




 「うぎゃあ。」




 悲痛な声が漏れた。




 「火炎放射器だよ。いい気持ちでしょ?」




 見事に僕は解凍され、丸焦げになった。




 「死んでしまったかあ―。がっくり。」




 破滅ちゃんは、物足りなさそうな様子で、死んだ僕を右足で蹴ってくれた。




 ニョロ、ニュロ、ニョルロン




 「寒いよおお。」




 生き返ると、凍える寒さに、震えた。




 「命の炎を燃やせ。」




 破滅ちゃんは、寒さに凍える僕を、見かねて、助言した。





 

 「胸に手を当ててみろ、命の鼓動がきこえるだろ?」




 破滅ちゃんは、僕の右耳元で、囁いた。




 ドクン、ドクン、ドクン―




 胸に手を当てると、心臓が脈打ち、血液が身体中に巡っているのがわかった。




 「心臓の鼓動しかきこえないよ。」




 僕は、項垂れた。




 寒くて死にそうだ。




 「命を燃して、炎になっちまえ。」




 破滅ちゃんは、僕の胸に手を突っ込んだ。




 胸からは、血が流れ、血吐した。




 「うぐ、おえ。」




 血反吐が、止まらない。




 出血も、止まらない。




 生暖かい血が流れる。




 白く美しい、破滅ちゃんの手や体身体に、赤い血が、流れ、美しい桜色に染まる。




 グギュウ!




 破滅ちゃんは、僕の心臓を右手で、鷲掴みにした。




 燃えるように、胸が痛い。




 「わかるか!これが、恋だ!。」




 破滅ちゃんは、わけのわからない事を、叫んで、笑った。




 恋!




 なんて、熱く、燃えるように苦しいのだろうか!




 「命を燃やせ。血液を絶やすな。」




 破滅ちゃんは、僕の心臓に力を込めた。




 ジュワアアア!




 心臓が燃え盛っていた。




 「熱い、熱いぞ!。」




 声が出た。




 胸の奥から、心の声が、やって来たのだ。




 ドクン、ドクン、ドクン!




 「綺麗だよ。破壊くん、赤く輝いてる。」




 破滅ちゃんは、目を輝かせた。




 ポカポカと温かい。




 本当に、マイナス70℃なのだろうか。




 流れていた血は乾き、傷は塞がっていた。




 「成層圏も、もうすぐ抜けるね、高度50kmを超えるよ。」




 破滅ちゃんは、地上をみた。




 「ずいぶんと、あたたかくなったな。」




 僕は、首を傾げた。




 上昇するにつれて、あたたかくなっているのだ。




 「オゾンってのがあってね、太陽の熱を吸収して、放出して、空気があっためられてるんだ、といっても、気温は0℃だ。まあ、まあ寒い」




 破滅ちゃんは、説明した。




 オゾンというのがあることはわかった。




 「中間圏に到達だ。」




 破滅ちゃんは、両手を広げた。




 中間圏を登っていく。




 「だんだんと、寒くなってきましたね。」




 僕は、命を燃やして身体を温める。




 「オゾンが薄くなってきてるからね、あと、二酸化炭素が、熱を放出して、辺りを冷やしてる。冷蔵庫と同じだよ、中は冷えてるんだ、外に熱を放出してね。」




 難しいな、とにかく、寒くなるってことだ。




 「中間層の最も上、上空80kmほどは、マイナス100℃、地球が自然に作り出す、もっとも寒い場所だ。」




 破滅ちゃんは、言った。




 「上空100㎞を超えた。熱圏だ。」




 破滅ちゃんは、黒く燃える焔の翼をはためかせた。




 「よし。」




 破滅ちゃんは、少し考えると、決心した様子で、手を叩いた。




 「お尻を出しなさい。」




 破滅ちゃんは、突然、真顔で、命令した。




 「お、お尻ですか?」




 僕は、不審に思って、ききかえした。




 「そうだ、お尻だ。」




 破滅ちゃんは、少し、顔を赤らめた。




 「はい。わかりました。」




 僕は、お尻を出した。




 「よし。ケツ穴に、ロケットエンジン、突っ込むぞ。ごめんな。」




 破滅ちゃんは、胸から長さ30cmほど、周長15cmほどの、小型ロケットを取り出した。




 「いくぞ、破壊くん!。」




 グサ!




 「うああん!。」




 ケツ穴にロケットのエンジン入れられちゃいました。




 「もう、わかってるよなあ?」




 破滅ちゃんは、ニチャりと、笑った。




 「ひええ。」




 何をされるのでしょう?




 コワいです。




 「ケツをこっちに向けろ。」




 ケツ穴から、ロケットが出た状態で、破滅ちゃんにケツを向けています。




 恥ずかしい。




 「よし。」




 破滅ちゃんは、胸から、金属の棒を取り出しました。




 「金属バットだ。」




 破滅ちゃんは、言いました。




 「ふええ。」



 

 僕は後ろを振り返りました。




 おそろしくて、震えた。




 「こいつで、ホームランするぞ。」



 

 ビュン!




 破滅ちゃんは、金属バットを、綺麗にスイングしてみせた。




 「ケツが砕けても、恨まないでくれよ。」



 

 「ケツ穴しっかり、絞めとけよ、いくぞ、破壊くん!。」




 破滅ちゃんは、大きく、バットを、振り上げる。




 カキ―ン!




 ケツにバットが直撃した。




 破滅ちゃんのフルスイングだ。




 ドドン!




 どういう原理なのか、バットで打たれた瞬間、僕がグニャグニャに丸められて、ボールになりました。




 バットから離れ、凄まじい速度で、飛んでいく。




 「凄いです、破滅ちゃん選手! 伸びる、伸びる、どこまで伸びる! ホームランですううう!」




 破滅ちゃんは、一人で、実況する。




 うわあああああ!




 ケツが、潰れる。




 骨がバキバキに折れて、痛い。




 ビューン!




 空高くへ、飛んでいく。




 やがて、失速していく。




 「ロケットエンジンが発動します。」




 ケツ穴から、アナウンスが流れた。




 ブルブルと、ケツ穴で機械が振動している。




 ボールになっていた、身体が元に戻る。




 ブル、ブル、ブル、ブル―




 ケツ穴で、ロケットが、音をあげて、震えています。




 「発射 3秒前 3 2 1―。」




 ケツ穴からのアナウンスが、流暢に、カウントダウンをはじめる。




 「ゼロ! 逝ってらっしゃいませ。」




 ケツ穴アナウンスは、僕を送り出しました。




 ブシュゥゥゥゥゥ、ビュビュビュー!




 ケツが、砕けるううううううう!




 ロケットは、激しく、上へ上へと、推進し、僕を空へ飛ばす。




 凄まじい速度だ。




 マッハ10はありそうだ。




 ケツ穴からは、液体燃料が、激しい炎となって、煙と共に、噴出される。




 どこへむかっているのだろうか。




 焼けて、熱く痛いケツ。




 もう使い物にならないだろう。




 数秒、飛ぶと、目の前に、大きな機械がみえた。




 「宇宙統合開発人工衛星うちゅうとうごうかいはつじんこうえいせいに突撃します。」




 ケツ穴アナウンスは、告げた。




 宇宙統合開発人工衛星ってなんだ?




 うわああああああああああああああ!




 ドガーン!ノガンガン!ブシュゥゥゥ!




 巨大な人工衛星という機械に、ぶつかり、爆発貫通し、穴を空け、中に乗り込んだ。







 

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