19 原子炉プールで、泳ぐ青春だ。

 「やったわね、破壊くん。」

 8月15日 午後8時53分




 破滅ちゃんの家にいた。




 「8月15日、今日、午前10時31分ごろ、突如、襲われた肉の爆弾により、国の軍事施設と周辺の街が、完全に、なくなりました。」

 テレビニュースが流れる。




 「流石ね。あなたが、やったよ。」

 破滅ちゃんは、僕の頭をポンポンと、叩いて、撫でた。




 「えらいわねえ。」




 ギュ




 破滅ちゃんは、僕を優しく、両手で抱きしめた。




 破滅ちゃん、ありがとう。




 すべてのテレビ局は、軍事施設の爆撃で持ち切りだ。




 「インターネットの世界でも、世界急上昇トレンド1位、検索1位、記事数1位よ。おめでとう。」

 破滅ちゃんは、スマホをみながら、笑った。




 世界中が、興味を持っているのだ。




 「その内、国に、外国から、軍隊が、君を殺すか、生け捕りにするために、やってくるでしょうね。世界不安になっているんだもの。」

 破滅ちゃんは、愉快そうに、喜々として、声を弾ませて、言った。




 「世界不安ねえ―。」

 僕は、実感が、持てなかった。




 「ええ。得体のしれない未知な不死身が、いきなり出てきて、攻撃して、軍事施設を壊滅させたとなると、世界中が、恐怖するわ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「海外メディアも、あなたの軍事施設爆破で持ちきりよ。」

 破滅ちゃんは、海外の記事をみせた。




 「今、国は、大混乱ね。首相も、国会議員も全員死んだし、防衛する為の、軍事基地も壊滅させられた、どうするのかしら。ふふふ。壊れていく様が、いとをかし、おもしろし。」

 破滅ちゃんは、腹を抱えて、笑っていた。




 「外国の軍が来る前に、やることやっとかないとね。」




 グシャ




 破滅ちゃんは、僕の目玉に、人指し指をそれぞれ、刺して、にっこり、笑った。




 「ふふふ。原子力発電所爆破しないとね。」

 破滅ちゃんは、僕の口に腕を突っ込んで、喉元をグリグリした。




 「んん。んぅん。」

 涙が出る。




 息ができない。




 「んふ。かわいい。」




 ブシュウ



 

 破滅ちゃんは、口から入れた腕で、胃を突き破って、肺を握りつぶし、肋骨を折って、心臓を握りつぶした。




 死んだ。




 「一緒に、炉心溶融させようね?世界を絶望にドン底に落としてあげようね。」

 破滅ちゃんは、死んだ僕の唇に、キスをした。




 ブチュ、チュぅ、ベロォ、ジュプ




 「ふふ、美味しい。」

 破滅ちゃんの舌と、僕の舌が激しく絡み合う。




 「んん。メルシィな、キスなの。」

 破滅ちゃんは、微笑んだ。



 

 幸せだ。




 僕には、勿体ないほどだ。




 破滅ちゃんの舌、唾液、唇、―口の中、美味しいな。




 美しい。




 「破壊くん。原子炉に行くわよ。素晴らしい体験を、あなたに、してもらうわ。」

 破滅ちゃんは、二ヤりと、魔性の笑みを浮かべた。




 今日の朝昼に、290ある軍事施設を壊滅させたばっかりじゃないか。




 最高の体験って、いったい?




 「もっと、もおっと、地獄をみせてあげないとね。嬉しいでしょ、破壊くん。」




 ジュプ、ペロり



 

 破滅ちゃんは、僕の右耳に、かぶりついた。




 ボリ、ボリ、ボリ




 右耳を、食べられた。




 ゴックン




 「いい顔よ。ゾクゾクしちゃうでしょ?」

 破滅ちゃんは、微笑んだ。




 右耳がなくなり、血が、だらだらと流れ出る。




 「もう片っぽも、貰っちゃおっと。」




 ガブぅ



 

 「おいひい。」




 ボリ、ボリ、ムシャ、ムシャ




 「ふふふ。気持ちいでしょ?」




 ペチン




 破滅ちゃんは、僕の右頬を、右手で、ぶった。




 ペチン



 

 ペチン、ペチン、ペチン―




 往復ビンタを、ぺっちんぺっちん、楽しそうにしている。




 グシャ。




 破滅ちゃんは、僕の首を、思い切り絞めて、引き千切った。




 「へへへ。」

 破滅ちゃんは、僕の頭を食べる。




 ムシャ、ムシャ、ボリボリ―




 ゴリ、ゴリ、ゴリ―




 破滅ちゃんは、四肢を両手で、引き千切る。




 両腕、両足が、なくなった。




 「ははは。四肢もお顔もなくなっちゃったねえ。かわいい。」

 破滅ちゃんは、僕の右腕を食べている。




 優しく微笑み、僕の身体をみつめる。




 「おいしいなあ、破壊くんの腕、足、顔。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 両腕、両足と、顔を食べ終わった。




 ギコギコギコギコ―




 「え?」

 破滅ちゃんは、胸から、細かい刃の付いた、器具を取り出して、僕の身体を、ギコギコ、切っていた。




 「ノコギリだよ。ほうら、身体が、捩じ切れて気持ちいでしょ?」

 破滅ちゃんは、僕の胸の辺りから、ノコギリで、ギコギコと切っていた。




 ギコギコ




 ギコギコギコ




 身体が、5等分にされてしまった。




 「バラバラだね。ノコギリ、気持ちよかったでしょ?」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「はやく、再生して?とっとと行くわよ。」




 バシッ。




 破滅ちゃんは、僕の身体を蹴飛ばした。




 ニョロ、ニュロ、ニョルロン




 再生した。




 「ついてきて。飛んでいくわよ。」




 ギラーン




 破滅ちゃんの背中に、黒い焔が燃えている。




 羽の形をしている。




 シュラララララ




 破滅ちゃんは、宙を浮き、飛んでいく。




 シュルルルルル




 僕は、急いで破滅ちゃんの後についていく。




 白く燃える焔を、背中に宿して、飛ぶ。




 ビュゥゥゥゥ




 「みえるだろ。○△原子力発電所の建屋だ。」

 破滅ちゃんは、前方を指さした。




 「へえ。大きいですね。」

 僕は、返した。




 「旧来式の沸騰水型原子炉だね。ま、破壊すればOKだよ。」

 破滅ちゃんは、手の平を前にして、顔の前で、右手の人指し指と、親指で、円を作った。




 破壊すればねえ―。





 「よし、中に入るぞ。」

 破滅ちゃんと僕は、地面に降り立った。




 入口には、警備員の男が2人いた。




 「中に入るには、許可証をお見せください。」

 警備員の男Aは、言った。




 「ふふ。ごめんなさいね、持っていないわ」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「では、お帰りください。」

 警備員の男Aは、頭を下げた。




 「さようなら。」




 ブシャアアア




 警備員の男Aの首が、真っ二つとなり、飛んでいった。




 血が噴き出す。




 「え?」

 警備員の男Bは、目を見開き、停止していた。




 顔が青ざめていく。




 「ひえええ。」

 腰を抜かし、転げまわっている。




 「あなたも、死んでもらうわね。」




 グサり




 胸を、右手で、一突きされて、貫通し、死んだ。




 「さあ、行くわよ。」

 破滅ちゃんは、○△原発の敷地内に入っていった。




 「建屋に行くわよ。」

 破滅ちゃんは、歩いて、大きな四角い建物に向かって行った。




 中に入ろうとすると、黒づくめの男たちがやってきた。




 「特別警備部隊ね。殺し甲斐があるわ。」

 破滅ちゃんは、ニコニコ笑った。




 数は30人ほどだ。




 「おい、あれ、軍事施設壊滅事件の犯人の男じゃねえのか?」

 警備隊の男Aは、困惑と絶望の色を露わにして、僕をみた。




 「ああ、終わりだ。俺たちの人生も、おしまいかな。」

 警備隊の男Bは、苦笑した。




 「腑抜けどもが、俺たちは、何としてでも、阻止せねばならんのだ。行くぞ。」

 警備隊の部隊長らしき男は、喝を入れた。




 「はい。」

 警備隊の男たちは、返事をした。




 「ふふ、威勢があっていいわね。」




 ブシャ、ブシュ、グさ、ぐりょりょりょおおん




 警備隊の男Aは頭をスクイーズされ、脳みそと眼球が飛び出し、顔が粉々になって死んだ。




 辺りは騒然としていた。




 「次は、どれにしようかな?」

 破滅ちゃんは、二カりと、微笑む。




 「美しい。」

 警備員の男たちは、見蕩れていた。




 「狂暴で、残虐なのに、なんと美しいことか。」

 警備員の男たちは、恐怖と、美しさで、涙し、ブルブル震えていた。




 「うわあああああああ。」




 バン!バン!バン!―




 警備員の男たちは、拳銃で破滅ちゃんは、撃ちまくる。




 シュパ、パパパパパパ―


 


 チリン―。




 破滅ちゃんは、すべての弾丸を、右手の親指と人差し指で、取って、地面に落とした。




 「に、人間じゃねえ、はははははははH。」

 警備員の男たちは、驚愕の表情を示し、もう笑ってしまっていた。




 「夢でもみているみてえだ。」

 警備隊の男たちは、混乱を極めていた。




 ぐしゃ、ブリュ、グそり、ブシャアアアアア、グリョンリョン―




 警備隊の男たちは、破滅ちゃんによって、粉々に砕け散り、血が飛び出し、内臓が飛び出て、ぐちゃぐちゃになって死んだ。




 死体から、誰か判別することも困難なほど、ぐちゃぐちゃだ。




 「これが、デスティ二ィ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 建屋の中に入る。




 「制御室に、技術者たちがいる。殺して差し上げましょう。破壊くん、できるわよね。」

 制御室に入る。




 中は、アナログな感じだった。




 壁一面に、制御装置が取り付けられている。




 「な、なんだ、御前は。」

 技師の男Aは、僕の方をみて、言った。




 「おい、ありゃ、まさか、今日の朝に、軍事施設壊滅事件を起こした、犯人じゃないのか。」

 技師の男Bは、顔を青ざめ、地面に膝をついた。




 「そ、そんな、妻と子供がいるんだ。俺の人生は今日でおしまいなのか?」

 技師の男Aは、涙を流した。




 「あ、あたし、まだ、死にたくない。」

 技師の女Aは、泣いた。




 「さようなら、ごめんね。」




 グリョり。




 技師の女Aの首を絞めて、千切った。




 目が飛び出し、首から上が地面に落ちる。




 時間が止まったかのように、あたりはシンと静かになり、絶望が走った。




 グリョ、グさ、ゴリ、ゴチ、グリュリュんリュ―




 血塗れだ。




 中にいた、13人の職員は、ぐちゃぐちゃに潰されて、跡形もなくなった。




 ぼ、ぼくが、殺ったのか、ハハハ。




 「よしよし、破壊くん。いい子ねえ。」

 破滅ちゃんは、僕を抱きしめた。




 プニプニが、顔に当たって、気持ちい。




 破滅ちゃんのいい匂いがする。




 「ご褒美に、いいところに連れて行ってあげるわよ。」

 破滅ちゃんは、建屋の奥に入っていった。




 「ここは?」

 下を覗くと、青白い光が放たれていた。




 水が張ってある。




 「綺麗でしょ?。チェレンコフの光って言ってね。あの水の中に、楽園が広がっているの。」

 破滅ちゃんは、ニヤニヤ、愉快そうに、興奮した様子で笑った。




 「飛び込んでよ。原子炉のプールに飛び込んでよ。ふふふ。」

 破滅ちゃんは、僕の背中を指で、なぞった。




 「ほら、落ちちゃえ。えい。」

 破滅ちゃんは僕の背中を、押した。




 バチャーン




 「あ、え?」

 身体が溶けていく。




 メルトしていく。




 美しく、青い光に細胞が、分解されていく。




 死んでいく。




 「放射線に耐えられなかったら、あなたお終いよ。不死身といえど、生き返れる保障はないの。ふふふ、見物ね。」

 破滅ちゃんは、ニヤニヤして、僕が、青い白く光り輝く原子炉のプールに、焼かれているのを、みて、喜んでいた。




 ご満悦の表情だ。




 うぎゃああああああああああああ。




 何度死んでも、細胞が、放射線にやられて、死滅していっても、再生していく。




 死んでは生まれていく、を天文学的な回数、繰り返すのだ。




 細胞が、進化していくのだ。




 痛み、苦しみを通り越して、無である。




 身体の感覚が、もう、なかった。




 どうして、僕は、存在しているのだろうか。




 意識とは、魂とは、命とは、僕とは、いったいどこからやってくるのだろうか。




 空を感じていた。




 自然だ。




 僕は、はじまりに還ろうとしていた。




 「破壊くん。まだ逝っちゃダメよ。」

 誰だ、僕の名前を呼ぶのは―。




 「破壊くん、約束したじゃない。一緒に世界を滅亡させるって。あたしを一人にする気なの?」

 僕は、誰だ。




 「破壊くん。」

 破壊くん。




 僕の名前、破滅ちゃんが付けてくれた、大事な名前―、僕はまだ、終われない。




 やるんだ。




 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。」

 僕は、原子炉プールを泳いでいた。




 クロールで、泳いでいた。




 「上手、自由形クロール、お上手!!!よ、水泳選手。」

 破滅ちゃんは、両手をあげて、喜んだ。




 僕は、泳げるんだ。




 「タイムは、29秒01。凄い、自己ベスト更新ね。」

 破滅ちゃんは、右手の拳を握って、前に出した。




 「よく、やったわね。」

 破滅ちゃんは、僕を強く抱きしめた。




 「諦めないこと、君は、やり遂げた。」

 破滅ちゃんは、僕に頬ずりして、涙を流す。




 よかった、ほんとうに、よかった。




 さようなら、僕の青春。




 



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