13 爆弾になりました。

 「破壊くん。国会爆破には、君が爆弾になってもらうよ。」

 破滅ちゃんは、優しく、微笑んだ。




 「僕が、爆弾?」

 わけがわからなかった。




 爆弾になるとは、どういうことなんだ。




 「君を爆弾にして、砲台から撃ち、国会で、大爆発させるのよ。」

 破滅ちゃんは、愉快な様子で説明した。




 「死んじゃうよ。」

 僕は、俯いた。




 「いいじゃない、生き返るんだし。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「ミサイルを撃つのはダメなのですか?」

 僕は、きく。




 「ミサイルじゃ、つまんないでしょ?君が爆発するのが、みたいんだよ。」

 破滅ちゃんは、ニッコリと悪びれもなく、言った。




 破滅ちゃんは、爆発して、死ぬ所がみたいらしい。




 「やってくれるよね?」

 破滅ちゃんは、目をキラキラさせて、僕をみる。




 破滅ちゃんの期待に応えたい。




 褒められたい、喜んでほしい。




 よし、爆弾になろう!



 

 「やるよ。」

 僕は、覚悟を決めた。




 「いい目ね。」

 破滅ちゃんは、僕の頭をポンと叩いた。




 「早速、爆弾になる薬を飲んでもらいましょうか。」

 破滅ちゃんは、冷蔵庫から、200mlのガラス瓶を持ってきた。




 「爆弾になる薬?」




 「ええ。飲んでみなさい、ほら。」

 破滅ちゃんは、ガラス瓶の蓋を開けた。




 薬は、透明な液体であった、ドロドロとしている。




 僕の口の中に、流し込む。




 うああああああああああああああ




 口の中が、焼けこげ爛れる。




 食道を通ってくる。




 喉が、大火傷。



 

 胃を突き破り、内臓を破壊する。




 心臓、肺に液体が染み渡り、溶かされていく。




 血液を介して、身体中が焼け、爛れる。




 身体が溶けるううううううううう




 「うわあ、いあああ。ううぅ!ううぅ!ひぃ、ひぃ。」

 僕は、頭が割れる、痛みを感じ、声が漏れる。




 「いたいねえ、くるしいねえ。」

 涙を流しながら、僕の背中をさすった。




 ドロドロに身体が溶けていく。




 「液体になっちゃったねえ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 液体?




 僕は死んでいた。




 「再生できるかな?」

 破滅ちゃんは、液体を触った。




 破滅ちゃんが、身体の中に入り込んでくる感覚を覚える。




 内臓まで、ドッロドロに溶けて、液体になっているのだ。




 僕は、意識を失った。




 「お、漸く、再生したようだねえ。」

 破滅ちゃんの声がきこえる。




 長い間、死んでいた気がする。




 「破壊くん、おはよう。」

 破滅ちゃんは、僕を抱きしめた。




 「3日、死んでたよ。よく、帰って来られたね。えらい、えらい。よしよしい。」

 破滅ちゃんは、僕の頭を撫でて、頬ずりを、した。




 破滅ちゃんに、褒められて、嬉しい。




 3日、死んでたのか―。



 

 「僕は、爆弾になれたのか?」

 僕は、きいた。




 「ええ。あなたは、念じれば、爆発する、爆弾人間になったわ。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「庭で、出ましょう。」

 破滅ちゃんは、外に出た。




 「ほら、念じてみなさい。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 念じてみる。




 「ダメだ。爆発できないよ。」

 僕は、俯いた。




 「ねえ。あなた、死ぬのを、コワがっているんじゃなあい?。」

 破滅ちゃんは、ニコりと、口角を上げた、目は笑っていない。




 死ぬのは、痛い。




 自爆すると、どれだけの苦しみがあるだろうか、考えただけで、ゾっとする。




 死にたくない、心の奥底で、爆発する事を拒んでいるのだ。




 「ちゃんと、できるよね?」

 破滅ちゃんは、耳元で、囁いて、優しく、微笑んだ。




 できないと、見捨てられる。




 破滅ちゃんの為に、俺は、死んでやる。




 みてろよおおおおお、破滅ちゃあああああああんんんんっ。




 僕は、庭を走り抜ける。




 バゴーン!ドカ、ドカ、ヒューン、バッコン!




 僕は、爆発した。




 辺りを真っ白にするほど、強烈な、光が、放たた。




 鼓膜がはち切れる、轟音が鳴り響く。




 衝撃破で、空間が揺れる。




 「おお。いいですよ破壊くん!。」

 破滅ちゃんは、手を叩いて、喜んだ。




 「破壊くん。きこえてる?粉々に爆散してて、君の灰さえ、確認できないね。」

 破滅ちゃんは、愉快に、笑った。




 「はやく、生き返ってよ。破壊くん、君には、まだまだ、死んでもらわなきゃね。」

 破滅ちゃんは、ご機嫌な様子で、荒れ地となった庭をみていた。




 庭には、大きな穴が出来て、クレータになっていた。




 ニョロ、ニュロ、ニョルロン―




 地面に散らばっていた、目に見えない程の塵が集まり、細胞となり、寄せ集まっていく。




 肉片となり、組織が形成され、身体が出来ていく。




 「再生しはじめたねえ。面白いなあ。ふへへ。」

 破滅ちゃんは、ニコやかに、微笑んだ。




 「ほら。どう、痛い?」

 破滅ちゃんは、再生しはじめた、僕の、肝臓を踏みつけた。




 ああああああああああ!




 痛いいいいいいいいいいいい。




 「あはは。君の臓器たちが、のたうち回ってるわねえ。ほら、ほらああ。」




 バン!




 バン!




 バーン!バン!バン!




 心臓




 腎臓



 

 肺




 脳




 肝臓




 大腸




 小腸



 

 胃




 身体中の、できはじめの内臓が、ピストルで、撃たれる。




 再生したいのに、ピストルで、撃たれて、できないよおおおお。




 バン!バン!バン!




 皮膚




 筋肉




 骨




 爪



 

 歯




 髪の毛




 バン!バン!バーン!




 「燃やすかあ。」




 ボアぁぁぁ




 「ガソリンって、よく燃える液体で、もっかい、死んでいいよ。」

 破滅ちゃんは、穏やかな優しい瞳で、僕の臓器、肉片たちを、みて、微笑んだ。




 ぎゃあああああああああああああああ。




 死んじゃうよおお




 再生できなくなっちゃうよおおおお




 うわあああああああ。




 「大丈夫かな?」




 破滅ちゃんは、ニコニコと、満足そうに、笑った。




 バチ、バチ、ニュ、ニュウ、ニョ




 ニョロ、ニュロ、ニョルロン




 「お、再生しはじめた。」




 破滅ちゃんは、僕の再生するのをみて、微笑んだ。



 

 「ほーら。はやく再生しないと、また、燃やしちゃうぞっ。」

 破滅ちゃんは、僕を急かす。




 ゾクゾクする。




 破滅ちゃんに、また焼かれるかも知れない―。




 はやく、再生しないと。




 ニュロ、ニュロ、ニュ、ニュ、ニュ二―




 「あら、再生速度が、はやくなったわねえ。」

 破滅ちゃんは、ニカ二カ笑顔で、僕が再生していく様を眺めている。




 「上手ねえ。ちゃんと再生できて、えらいねえ。」

 破滅ちゃんは、目を細めて、口角を上げる。




 「はやく、はやく、急げ、急げ、あと3秒で、出来なかったら、火つけるね。」

 破滅ちゃんは、笑った。




 「3 2 1― 。」




 はやく、しないと―




 再生してくれええええええええええ




 「ふふふ。ギリギリだったね。」

 破滅ちゃんは、二ヤ二ヤ、笑って、耳元で、囁いた。




 生き返った。




 どうにか、間に合ったみたいだ。



 

 よかった。




 「おめでとう!。爆発成功だね。えらい、えらい。」

 破滅ちゃんは、僕を抱きしめ、頭を撫でた。




 「まだ、爆弾は、完成してないんだよ。」

 破滅ちゃんは、二ヤりと笑った。




 「え。」




 「爆弾を食べろよおおおおおおおおお。」

 破滅ちゃんは、爆弾を胸から取り出す。




 「はい、お口を開けて、ああああああーーーーーーんんん。」

 爆弾を僕の口の中に、次から、次に、入れる。




 黒くて丸い爆弾だ。




 胸から、爆弾を取り出しては、僕の口に、流し込んでいく。




 おえ。




 もう、入らないよ―




 「んんっ。んんん。」

 苦しい。




 喉を通り抜け、胃の中が、爆弾でパンパンになった。




 お腹が、ポッコリと、爆弾で膨らんでいる。




 大腸、小腸にまで、下り、お尻の穴から、爆弾が、出てきそうだ。




 喉にまで、上り、口からも、出てきそうだ。




 「うん。蓋をしないとね。」

 破滅ちゃんは、僕の口と尻の穴に、熱い液体の金属を流し込んだ。




 あああああああああああ。




 皮膚が爛れる、焼けている、しぬうううううううううううううう。




 「ちゃんと固めておかないとね。」

 口と尻の穴の入り口が、金属で固められる。




 「よいしょ。」

 口と尻の穴に、液体を塗られる。




 「合成樹脂だよ。もう、二度と取れない。」

 破滅ちゃんは、ニコニコ笑顔。




 「よおし。最後の仕上げだ。」

 破滅ちゃんは、爆弾を胸から取り出すと、僕の身体にペタペタ張り始めた。




 「超強力な、接着剤で、くっつけてるんだ。もう爆発して死ぬまで、取れないよ。」

 破滅ちゃんは、ニッコリ、笑った。




 身体が、爆弾と接着剤で固定されて、丸いボールになった。




 自分が、正真正銘、爆弾になったのだ。




 「傑作だ!。」

 破滅ちゃんは、目をキラキラさせて、爆弾となった僕をみた。




 「明日の午前10時、国会に、君を爆撃特攻させよう!。」

 破滅ちゃんは、高らかに、声を上げた。

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