第41話 ヤンキーズを利用?
ギルマスの案内により、私達はヤンキーズが居る簡易牢に来た。
事前にギルマスが預かっている私のギルドカードに、投影魔法を更新してもらってからここに来ている。
「こっちだ」
ギルマスの誘導に従い歩いてるのだけど、牢に入れられてる男性からの眼差しがいやらしい……
女3人だからなのか、レイナとソルが居るからなのか、それとも私が居るからなのか。
分からないけど、見られて気分は良くない。
ギルマスが足を止めた、ここらしい。
「おいヤンキーズ共、お客様だ」
「あぁ?このスキンヘッズ様に誰……が」
スキンヘッズが、私とレイナ、ソルを見るなり顔が青ざめていく。
「え、炎風に……あ、あの時の……ガキ」
そう言った瞬間、レイナの拳が牢屋の柵となっている鉄骨を殴り付けた。
「ひぃ!!」
「貴様か?私達の大事なカオリを傷付けた愚か者は」
あの高圧的な態度は何処へやら、スキンヘッズは完全にレイナ相手に萎縮していた。
「い、いや……俺達はただ、殴られただけ……」
そう言った瞬間、2度目の拳が鉄骨に炸裂する。
「ひ、ひぃ!!!」
「事実を言え、さもなくば……冒険者としての地位を消し去ってくれる」
「し、証拠は何処にある!?俺達は殴られただけだぜ!」
「そーでやんす!証拠を出すでやんす!」
「ほぅ……?しらを切るつもりか?帝都に帰れば自分達は大丈夫だ、とでも思っているのか?」
「……」
図星らしい、奴らの顔が曇っていく。
「貴様ら、ギルドの登録は万国共通で嘘偽りなく登録されているのは知っているな?」
「ヒョ?そ、それがどうした?」
「カオリは完全記憶というスキルと、投影魔法を習得している。これは冒険者ギルドから証明を出す事も可能だ、これが意味する事……何か分かるか?貴様ら」
「それが何だってんだ!?」
「ま、待つでやんす親びん!」
レイナに抵抗しようとするスキンヘッズを、部下の1人が止めた。
「あぁ?なんだ?」
「完全記憶は見た物聞いた物を全て誤りなく完全に記憶するスキルでやんす!それに投影魔法が加われば、オイラ達がやった事全てバレるでやんす!」
その部下が言った言葉を理解した残り3名は、急にガクブルと震え出した。
「す、すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
スキンヘッズが高速土下座をして、頭を地面に付けている。
「バレるから謝る、だと?ふざけるな貴様ら!!!」
レイナがガチ切れ、大きな声が周りに響き渡る。
「貴様らが、どれだけカオリを傷付けたか、分かっているのか!?そして手紙を出してくれた人達が、どれだけ悲しい想いをしたと思っている!?指名依頼書がどれだけ大事な物なのか!考えた事があるのか!!!」
「ひぃ!すみませんでしたぁぁぁ!」
「欲しいのは謝罪じゃない!!考えた事があるのかと聞いている!!!」
「あ、ありません!すすすすみません!」
「……チッ」
レイナが……舌打ちをした、あんなに怒るレイナは初めて見た。
「ダメだ、話にならない」
「それじゃ、サクッとハゲにするわね」
そう言って、指先に風を発生させながら近付こうとするソルに、私は両手を広げて阻止をした。
「……カオリ?」
「すみません……これ以上怒り狂うレイナさんとソルさんを……見たくないです」
「「……」」
「私自身も怒りを覚えています、でも……体罰は、いけません。私と同じように、ならないでください……私の罪を、繰り返してはダメなんです……」
「「……っ!」」
レイナにソルは、私がこう言う事を予測していなかったようで、少し冷静になった。
「……ごめんなさい、カオリ。そうね……その通りだわ」
「すまない、頭に血が上っていたよ……」
「分かってもらえれば、いいです。これで嘘を付くメリットはあの4人にはないので、大丈夫だと思います。行きましょう、もうここに用はないです」
「あ、あぁ……」
「そうね……行きましょうか」
「ギルマスも、ありがとうございました」
「礼を言うのはこちらだ、2人を止めてくれて助かったぜ、配達屋の件は1度こちらで案を練っておく、もしかしたら頼み事するかもしれねぇから、期待しておけ」
「分かりました、お願いします」
私達が動き出す寸前、レイナが最後にアイツらへと一言添えた。
「2度とカオリを傷付けるなよ、許さないからな」
スキンヘッズ達は顔面蒼白なまま顔を縦に振る。
「ふん!」
私達は簡易牢から離れ、家に帰るのだった。
ーーークロモンドsideーーー
「さて、お前ら」
「ひ、ひゃい!」
完全にビビってやがるな、もうコイツらはもう炎風とカオリには手を出せねぇはずだ。
コイツらには、ひと仕事噛んでもらおうか。
「帝都マリンシスに帰りてぇか?」
「……ヒョ?本当に言ってるのか?」
「あぁ、お前らの罪はこの王都の冒険者ギルドに対する冒涜、ギルド員や冒険者への侮辱行為、そして指名依頼書を意図的に破りギルドと依頼主に多大な損害を与えた事だ。まず冒険者では居られねぇ、何だったら奴隷落ち、損害賠償金で借金奴隷も有り得るなぁ?」
「あばばばばばば」
スキンヘッズ達がガクブル震え出した、見てて面白ぇ。
「損害賠償は支払ってもらう、だが帝都に行ってひと仕事噛んでくれたら、冒険者としてはギリギリ仕事出来るように仕向けてやるよ」
「ヒョ!?何をすれば!?」
スキンヘッズが鉄格子にへばりつくように俺に縋ってくる。
「カオリと、その付き添いと共に帝都に行き、海の幸の流通問題解決に動いてもらう。帝都にお前らの事件をしっかり報告し、その賠償として海の幸の流通を再開させてやる」
「そ、それはそっちの管理が原因じゃねぇのか?帝都じゃそう言われてるぜ、なあ?」
「そ、そうでやんす……」
「ハッ!ちげーよ、お前ら帝都が使う保存魔道具に細工されてただけだ、こちらに来る頃には既に痛み始めてんだよ」
「ヒョ!?事実かそれは?」
「嘘だと思うなら別に信じなくても構わねぇよ、だが事実だ」
暫く無言の時間が流れるが、スキンヘッズが答えた。
「……分かった、その提案を飲むぜ。絶対に冒険者剥奪するなよ?」
「約束してやるよ、ちゃんと損害賠償と海の幸をこちらに渡してくれるならな」
「……分かった」
驚いた、こんな聞き分けよく聞き入れるとは……よっぽど冒険者を辞めたくないのか。
「やけに素直だな、お前達が冒険者に縋る理由はなんだ?」
「……これでしか働けねぇからだぜ、俺達のようなヤンキーには居場所がないのさ、金もねぇしな」
「……そうかい」
俺は、簡易牢から出て執務室に戻った。
これで帝都との問題に、1つ動きがありそうだ。
これが上手くいくかは分からないが、もしこれが成功すれば……カオリも仕事には困らない、そして王都としても海の幸が手に入る、そうなればあの神の舌のソルも黙ってはいないだろう。
この国の食文化を更なる高みへと昇華させ、新たな名物を生み出してくれるに違いない。
ソルの舌は誰もが認める神舌だからな、きっと公認店が増えるだろう。
「これが成功したら、カオリに褒美をやらねぇとな。店の件、考えといてやるか」
俺はこの王都の地図を開き、店を構えるに至っての準備を、良い知らせと共に動きだせるよう調整。
仮に失敗したとしても、ギルド内で配達屋の仕事を出来るようにと調整するのであった。
「まぁ、元々配達の指名依頼に集中してもらおうと考えてたからな、丁度いい」
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