第6話 スキル確認と下着は情熱的
「わ、若返った!?」
なるほど、気になったのはそっちね。
「はい、さっき水を汲んでる時に気付いたんですよ、顔が幼くなってると」
「なるほど……若いにしては受け答えがしっかりしているなぁと思っていたが、そういうことだったんだな」
「すみません」
「いや、気にしなくていいさ、歳なんて大した問題じゃない。カオリが何歳だろうと同じ事をしたさ」
そう言いながら、肉にかぶりつくレイナ。
「取り敢えず、王都トリスタに着いたら仕事探します!」
「うーん、貯蓄あるから家賃も食事代も別に大丈夫なのだが、カオリがそう言うなら……でも、これだけは出来るようになってほしい事があるんだ。仕事を探すのはその後にしてほしい」
「……?」
何だろう?家事とかかな?
皆で住むとなれば、やっぱりその辺は出来ないとね。
2人は冒険者、2人は家を空ける事が多いだろうから、その分は私が!って事かも?
そう予想しつつ、レイナの言うことに耳を傾ける。
「まずは家事を出来るようにしてほしい」
ビンゴ、予想通りだね。
「大丈夫です、ここに来る前は一人暮らししてましたから!」
「そうか、ならこれは安心だな。でも後もう1つ、さっきの事より大事な事があるんだ」
「……?何でしょう?」
「この異世界で生きていくのに大事な事だ、それは自分の能力をしっかり把握して使いこなす事、だ」
「自分の能力を……」
魔物が蔓延る世界なのは理解出来てる、でも街や国から出ないのであれば能力把握も急ぐ必要もないのでは?
「でも、王都トリスタから出る事は暫くないでしょうし……急ぐ必要はないのでは?」
「確かに【魔物の事だけ】を考えるならそれで良いかもしれない。でも考えてみろ?私達やカオリだって、みんな何かしらの能力を持っているだろう?それは街行く人達も、私達と変わらないと考えてみるといい」
「……あっ!」
そっか、よく考えてみればそうだよね。
ここは異世界……魔物を倒す魔法や剣があり、私のように仕事する際で活かせそうな補助スキルも沢山ある。
比較的治安が良いと言われる日本でも、悪事に働く人達が沢山いる。
それを異世界基準で考えてみると……血の気が引くのを感じる。
「分かったか?」
「……はい、街の中でも安全とは言えませんね」
「そうだ、国もルールを決めたり犯罪を取り締まったりはしているが、事件が起きてからでは遅い……自分の身は自分で守れなきゃいけない」
「そうね、まぁ王都トリスタは騎士団や国王が優秀で国民から慕われてるから、結構治安は良いのだけど油断は出来ないわね」
レイナに続いて、聞き手に回っていたソルも助言してくれた。
「なるほど……なら私の持つ雷属性や補助スキルをしっかり使いこなせるようになるべき、ですね」
「そうだな、ちなみに聞くが……ミルムから力を授かる前から雷属性と雷耐性を持っていたようだが、何故なのか分かるのか?転生の時も雷のように天界を移動したと言っていたが……」
「それはですね……」
私が転生したきっかけを全て話した、雷に打たれた事やその前後の話を。
「……雷に、打たれたのか」
「はい、即死だったのか転生の影響だったのか、痛みこそ無かったですけど……全身を襲った衝撃や熱は感じましたね、幸いにも一瞬だったのでトラウマになる程ではありませんでしたが」
「なるほど……それで最初から雷属性と雷耐性を持っていたのか。なら、雷属性を使う事に抵抗はないんだな?」
「はい、大丈夫です」
実際に1度だけ放電して、残っていた電流に触れたけど大丈夫だったからね。
「よし、ならトリスタに着いたら冒険者ギルドに行こう」
「冒険者ギルド?」
「あぁ、そこには訓練所があってな。どれだけ暴れても大丈夫な特殊な魔法が施されているから、自分の能力を確かめるには最適だ、誰にも見られないようになっているしな」
なるほど、確かにそこなら安心して能力を試し打ち出来そう。
魔物が蔓延る場所で能力練習なんてしたくない、出会っちゃったら怖いもん。
「それに、街の中に入るにも身分証明があるとスムーズになるんだ、冒険者ギルドで登録しておけば身分証明になるギルドカードを貰えるから一石二鳥だぞ」
なるほど、これまで読んできた小説とかでもそういう場面あったな。
入るのに仮入門審査があったり入場料が必要だったりで、ギルド登録しておけばカード掲示だけで通れる的なやつだよね?
「ちなみに、私が王都トリスタに入る時ってどうなるんですか?」
「仮入国として滞在目的に応じた申請をしなきゃならない。その際に位置把握の為の装備を付けさせられるんだ」
位置把握の為の装備……日本でいうGPSで位置が分かるみたいな感じでいいのかな?
異世界なんだし、多分その装備を探す為の探知魔法的なのがあるんだろうね。
「かなり厳重ですね」
「昔に外の人間が国内で悪事を働いて姿をくらます事件があったらしくてな、それからこの制度が出来たらしい。ちなみにその装備は身分証明を作った時に外されるから安心していいぞ」
「なるほど、分かりました」
私は着いてからすぐにギルド登録するから問題なさそうかな。
どの仕事をするにも、ギルド登録しておけば就職するまでの繋ぎとして、手伝い依頼とかも出来そうだしね。
こうして色々話している内に、お肉を全て食べ切ってしまった。
案外イケたから、おかわりして2本食べちゃった。
「さて、食べ終わった事だし汗を拭いて寝るとしようか」
「そうね、カオリとこれからどうするかも決めたし、私が最初に見張りするから寝てていいわよ」
「そうか、なら頼もうか」
「えっと……私は?」
「寝てていいぞ、私達が交代で見張りをするし、転生したばかりで疲れてるだろうからな」
魔物が現れる森の中だから、見張りが要るのは分かるけど……何だか申し訳ないな。
確かに疲れてはいるけど……
「寝てなさい、明日も忙しいわよ?」
「んー……分かりました。でも、まだ眠くないんですよね」
「まぁ、元の世界だとまだ寝る時間じゃないからな、それなら眠くなるまで私が補助スキルの説明をしようか」
「助かります、お願いします!」
補助スキルの名前からしてどんな効果なのかは何となく分かるけど、認識違いがあったらいけないから一応ね。
私とレイナはテントに入り、お互いに汗を拭いた後、ゆったりしながら話す。
「鑑定眼から順番に言っていくぞ」
鑑定眼
(目に見える対象の情報を詳しく見る事が出来る)
透視
(あらゆる物体を透かしてその先の物を見る事が出来る、限界距離5mから徐々に見えてくる)
観察眼
(様々な違いや違和感を見抜く事が出来る)
完全記憶
(記憶したい事を音声や映像として脳内に記録しておける、記憶の取捨選択も出来る)
力持ち
(物を持ち上げたり動かしたりする力だけが高まる、個人の力が高まる訳ではない)
遠視
(遠くまで見る事が出来る、所謂スコープ的な物)
危険察知
(自分の身体に危険が迫れば気付くことが出来る)
魔力探知
(魔力の流れを探知出来る)
コール
(通信魔法、人に触れながら発動させると、触れていた対象と通信を繋げる事が出来る。対象となった人からスキル使用者やその他の対象への通信も可能。術者の力量により人数制限の数と通信距離が決まる)
マッピング(行ったことがある場所が地図に記録される、自分の周り一定範囲が記録される)
「こんなものか」
「ありがとうございます!詳しいんですね」
「まぁな、誰かしらがそのスキルを持っていたり、本に載っていたりしたから覚えていただけだよ。まぁマッピングだけは知らなかったがな……」
それでもしっかりと覚えているのは凄いよね、私もしっかり覚えておかない……と?
「あっ」
「うん?どうした?」
「今の説明、スキルの完全記憶使っていれば覚えられたんじゃ……ないですかね?」
折角のスキルなのに、使わないと損だよねこれ……宝の持ち腐れってやつ。
「あれ、でも……思い出そうとしたらハッキリと鮮明に脳内に浮かんでくる、もしかして常時発動型?」
「ん?記憶したいと思った時に使うスキルだったと思うのだが……」
「え、でも今日歩いてきた道も映像付きで記憶しているみたいですよ?」
「そうなのか、なら常時発動型なのかもしれないな」
そう考えると、これってすっごく便利だよね!物忘れや記憶違いがなくなるんだから!
神様から貰ったスキルがこんなに便利なら、他のスキルも試してみたいかも!
「ならレイナさん、試せるスキルを試させてもらっていいですか?」
「あぁ、いいぞ」
「まずはこれから……鑑定眼!」
そう口にすると、右眼で見えている周りにある物の詳細が見えるようになった。
レイナさんが外して近くに置かれている鎧も名前と効果が見て取れた。
【ミスリルの鎧】ミスリルで作成された防御力の高い鎧
状態異常耐性、破損修復
「このミスリルの鎧、状態異常耐性と破損修復が付いてますね」
「うむ、正解だ!しっかり見えているみたいだな」
「はい!でも、ミスリルってかなり貴重な素材なんじゃ?」
「そうだな、なかなか取れる物でもないし、採掘場所も魔物が強くてなかなか行けない場所だったりもするが……私達はギルドランクAの冒険者だからな、強い魔物を討伐に向かった際に手に入る場合もあるんだ」
「Aランク!?凄いです!」
「あはは、ありがとう」
Aランクと言えば、どの異世界小説でも上位と言われる実力者だよね!?
凄いなぁ……私、魔物と戦う勇気なんかないから尊敬するよ。
「そうだ、ちなみに何ですけど……鑑定眼使った時の眼はどうなってました?」
「特に変わりはないな、鑑定眼が使われているとは分からないさ」
「なるほど、分かりました!次は……透視をしたいですね」
「なるほど、ちょっと待っててくれ」
レイナは、近くに置いてあった身を守る用のナイフを腰の後ろに隠した。
「これで透視すれば、私の姿を透かしてナイフが見えるはずだ」
「分かりました、やってみます……透視!」
またしても右眼で透視が発動し、レイナの服が透けて……
「あっ……」
透かし具合の調整が難しくて……パンツが、見えてしまった……
その……情熱的で赤いTなバックでしたね……
「む?どうした?」
「ひゃい!」
びっくりして更に透かし具合が狂ってしまい……大きくて綺麗なおっぱいまで透けて見えてしまった。
「あばばば!!」
「んん?」
「すみませんすみません!!!」
謝り倒す私に何事かとレイナが聞いてきたので、正直に答えました……情熱的な赤いTなバックですね、と……
それを聞いて、ズボンだから意味はないけど咄嗟に片手でデリケートゾーンを隠して、顔を真っ赤にさせたレイナだったが……
「ま、まぁ……その、初めてだから、調整が難しいよな……うん、仕方ないさ」
「その……すみません……」
「い、いや……大丈夫だ、これから練習していこう、な?」
お互い若干気まずい雰囲気だけど、まだ試したいスキルはあるので切り替えようと思う。
「……しかし、透視ってそんな細かい透かしまで出来なかったと思うのだが……」
レイナは少し気になりつつも、神様からの贈り物だからと納得するのだった。
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