第24話 双剣姫とスパークアクセル

 リサは私に秘密を1つ打ち明けた後、ツキミを元の待機場所へと帰していた。

 スッと現れてスッと消える……ホント忍者みたいだね、リサの村での血筋とかも関係あるのかな?


「ねー香織おねーちゃん、喧嘩は終わったの?」


 桜ちゃんが私の服の裾を握りながら聞いてきた。


「あぁごめんね、もう大丈夫だよ!」

「よかったー!ねーねー、これからどうするの?」

「あたし達、やること無くて暇なのー」


 梅香ちゃんと桜ちゃんは私の元に駆け付けるだけの為にここに来たので、私と再会してからのプランは何も考えていなかったらしい。


「んー、リサさんどうしますか?」

「そうですね……折角ですし、ウメちゃんとサクラちゃんにもカオリ様の特訓を手伝って貰いましょう!」

「香織おねーちゃん、特訓ちゅーだったの?」

「手伝う手伝うー!」

「お手伝い頑張っちゃうー!」


 2人は元気よく手を挙げて手伝うと言ってくれた、ほんと……いい子達だ。


「ありがとう梅香ちゃん、桜ちゃん!」

「「おねーちゃんの為だもん!」」


 あぁ、いい子過ぎて泣いちゃいそうだよおぉぉ……


「はい、では特訓再開致しましょう!」

「「「はーい!」」」

「はうっ!」


 次は私も混ざって3人で返事をすると、何故かリサが胸を抑えて幸せそうな顔をした。


「「リサ隊長ー!?」」

「リサさん!?」

「ふぁ……2人なら、我慢出来ましたが……3人は、卑怯です……よ……ガクッ」

「「リサたいちょーーー!?」」

「リサさーーーん!?」


 どうやら、双剣姫2人と私の13歳パワー(3人で可愛さ3倍)にリサが耐えられなくなったみたい。

 リサにもこういう所があったんだね、逆に今まで顔に出さずに我慢してたのか……凄いけど、普段からそんな感じでもいいのに。

 まぁ梅香ちゃんと桜ちゃんの可愛さに関しては私も分かるよ、なんなら私もリサと同じようになる自信もある。


「仕方ない、まだ昼過ぎだけど……今日は帰ろっか」

「だねー、あたし達も宿取らなくちゃ!」

「おねーちゃん、何泊する?香織おねーちゃんも一緒に泊まる?」

「あっ、私は今レイナさんとソルさんの家に住まわせてもらってるの、2人の返事次第だけど、良かったら家に来る?」

「「いいのー!?」」

「うん!2人がOKって言ったらね!」

「わーい!おねーちゃんとお泊まりだー!」

「3人で一緒にねよー!」

「くはっ……!」


 私にも限界が来たようだ、可愛い過ぎて心臓が持たない……!

 天使だ……いや、実際に梅香ちゃんは天使だったよ!


「「香織おねーちゃん!?大丈夫!?」」

「だいじょぶだいじょぶ……2人の可愛さに、胸がときめいただけだから……!」


 キュンとしている心臓を抑えながら深呼吸、そしてコールをレイナとソルに向けて発信した。


「レイナさん、ソルさん、今大丈夫ですか?」

『あぁ、カオリかっ、どうした?』


 声が滑らかではないような気がした、それに鉄がぶつかるような音やザシュッっといった音、そしてグオオといった魔物の声らしきものも小さく聞こえる、もしかして戦闘中?


「あぁいえ、手が空いているなら少し相談したい事があったんですが……忙しそうですね」

『別に構わないわよっ、確かに魔物との戦闘中ではっ、あるけど、数が多いだけでそれっ、それ程脅威な訳ではないから、問題ないわ』


 こうして会話している中でも、音から推測するに攻防が繰り広げられていると分かる。


「いえ、片付いたらコールください、急ぐ案件でもないので」

『分かった、すぐに終わらせっ、リフレクトシールドッ!す、すまないな、少し待っててくれ』


 レイナの口から、初めてスキル名らしき物が出てきた。

 リフレクトシールドって事は防御系スキルかな?レイナは大きい盾を持っていたから、納得だね。


「分かりました、2人共お気を付けて」

『ありがとう、カオリも無茶するっ、んじゃないわよ?』

「大丈夫です、リサさんが居ますから。ではまた後で」


 私はコールをオフにした。


「忙しそうなのー?」

「うん、魔物と戦ってるみたいだから、終わったら向こうからコールが来ると思うよ」

「じゃあ待機だねー!」

「そうだね」


 ふとリサを見ると、先程のツキミがリサの介護をしていた。

 私の目線に気付いたツキミは、大丈夫と言いたいのか指で丸を作った後に木の上を指さした。

 上を見ると、リサとツキミはスッと指さした方へ移動し、周りには暗部隊のメンバーだとすぐに分かるような黒装束の人が4名姿を表し、こちらに会釈してから木の影へと消えていった。

 多分、ずっと近くに居てくれて、そして見守ってくれていたんだろう。


「梅香ちゃんと桜ちゃんは、あの暗部隊みんなの隠れ場所って分かるの?」

「うん、分かるよー」

「今日は副隊長合わせて8人居るねー」

「な、なるほど」


 4人とツキミしか姿を見せていないのに、後3人隠れている事を見抜いていた。


「そんな事まで分かるなんて、凄いなぁ……」

「それなら、あたし達がリサ隊長の代わりに特訓してあげようかー?」

「いいの?」

「「もちろん!」」


 ゲームにもこの世界を良く知る梅香ちゃんと桜ちゃんなら、きっと色々教えてくれるに違いない、それに暗部隊の特訓にも付き合ってるって言ってたし。

 私は、今自分に置かれている状況とやりたい事を2人に伝えた。


「なるほどー魔物が怖くなっちゃったんだ」

「あたし達はゲームで慣れてたからねー、香織おねーちゃんが魔物を怖くないようにする方法……」


 2人は頭を傾げさせながら考えてくれている。


「無理して今案を出す必要はないよ、ゆっくりと慣れていくつもりだからね」

「「分かったー!」」


 うん、素直でよろしい。


「ねーねー、香織おねーちゃんって雷属性もってたよね?もう使いこなしたの?」

「まだ途中だね、一応スパークアクセルと、雷での攻撃と、雷の膜を張って身を守るくらいしか出来ないかな」


 そう、この一週間で初めてスキルと言える技を習得してたんだよね!

 ソルがお手本として見せてくれたアクセルスキル、それの雷属性バージョンを。

 初めての訓練室で発動するのは確認出来たけど、スキル習得するまでに少しだけ時間が掛かったんだよね。


「なるほどー、あたし達も雷属性持ってるから教えてあげるっ!」

「教えるよー!」

「ほんと!?雷属性持ちが少ないって聞いてたから助かるよ!お願いするね!」

「「任せてー!」」


 リサとの魔物への恐怖心克服特訓から、双剣姫2人との雷属性の強化へと舵を切った。


「まず香織おねーちゃんがどれくらい出来るか見ていーい?」

「いいよ、まずはスパークアクセルからね!」

「「はーい!」」


 梅香ちゃんと桜ちゃんから少し離れ、スキルを発動させる。


「スパークアクセル!」


 スキルが発動すると意識せずとも足回りが放電、私は走り出した。


「すっごーい!速いね、香織おねーちゃん!」

「!?」


 桜ちゃんの声が聞こえたので走りながら振り向くと、私と同じスキルを発動して同じスピードで追い掛けて来る双剣姫の2人の姿があった。


「香織おねーちゃん凄いね!でも、あたし達も負けないよ!」


 梅香ちゃんと桜ちゃんが、木々を避けながら私を追い抜いていく。


「抜かれた!?」

「えへへ、香織おねーちゃん!追いかけっこだよ!」

「あたし達を捕まえたら勝ちねー!それー♪」


 更に2人はスピードを上げていく。


「なっ、速い!?」


 魔物なんて居ないに等しいくらいのスピードで走る、私も魔物が居るとか気にせず走ってるけど。

 私も負けじとスピードを上げる。


「わっ!更に速くなった!」

「きゃー♪逃げろ逃げろー♪」


 次は木々を上手く利用し、糸を縫うように逃げていく2人。

 す、凄い……アクセルスキルで、あんな細かい制御まで出来るようになるの!?

 私もアレを真似出来るようになれば!

 ……いや、2人は敢えて見せてくれてる?

 こ、これってまさか……遊びと見せ掛けた、特訓!?

 私がそれに気付いた時、2人はニヤリと笑った。


「さぁ!」「あたし達を!」

「「捕まえてみて!!」」


 更に素早くなっていく。

 ……やってくれるね、2人共!

 遊びの中で学ぶなんて、小学校くらいの歳以来だよ!

 あはっ!楽しくなってきた!!


「あはははっ!じゃあ行っくよー!覚悟しろー♪」

「「きゃー♪」」


 私と双剣姫2人による、超スピード追いかけっこが、今始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る