第26話 夕飯の支度

 無事にトリスター王国に戻ってきた私、リサ、双剣姫の4人+暗部隊の皆さん。

 暗部隊は何故か門を通ること無く途中から姿を消してしまった、一体何処行ったんだろう?

 門を通らず中に?まぁ国に仕えてる部隊だから、もしかしたら専用口があるのかもしれない。


 私達は家に戻る前に、食材を買いに青果屋さんへ向かっていたんだけど……


「お、おい!あの子達って……!」

「天使の羽に悪魔の羽、間違いねぇ双剣姫だ!」

「あれが噂の双剣姫か!?初めて見たぞ!あんな小さい子供なのにSランクだなんて、ヤバすぎだろう!?」


「あぁ、我らがカオリちゃんと双剣姫2人が手を繋いで歩いている!」

「ファンクラブに通達よ!!新たな情報を皆に通達しなきゃ!」

「拙者が行ってくるでごさる!スサササ!」


「わたくし、双剣姫にも憧れていたんですわ!カオリ様とのコラボをお目にかかれて幸せですわぁぁぁ!!(卒倒)」

「お嬢様!?たいへん!お嬢様が尊死なされたわ!セバスチャン!急いで担架を!」

「承知!」


 あちこちでザワザワと騒ぎになっている。

 何を言われているかは聞こえないけど、何故か倒れてる人もいる……大丈夫かな?


「久しぶりに来たけど、やっぱり注目されちゃうねー」

「ねー」


 梅香ちゃんと桜ちゃんは、私を真ん中にして手を繋いで一緒に歩いている。


「当たり前です、世界にも2組しかいないSランクPTなんですから、貴方達は」

「今思えば私、SランクPTと個人Sランクと一緒に歩いてるんですね……びっくりです」

「ですが私は表に知られていないSランクですから、一般人だとおもってくださいね」

「内容が内容ですし、ね。」


 確かに、リサと歩いていても騒がれたりしないよね……折角のSランクなのになぁって少し思ってしまう。

 よくよく考えてみると、私ってSランクPTと個人Sランクの3人から色々教えてもらったり特訓に付き合ってもらってるって事になるんだよね、しかもAランクのレイナとソルも含めてもスーパー有名人達……

 私、冒険者達に恨まれたりしない……よね?

 冒険者ギルドに顔を出しても、何も言われない所か何だか優しい目をされる事が多いから、多分大丈夫だと思うけど……

 かなりの人気者で憧れの対象であるレイナとソルに連れてこられたから、私も凄く注目を浴びているのは間違いないし、少しだけ気を付けた方がいいかも?


 そんな事を考えていると青果屋さんに到着、ここでは新鮮な野菜や果物が沢山売られており、品揃えが多いのでリサもよく利用しているんだそうな。


「皆さん、今日は何が食べたいですか?」


 私が来てからは、私の口に合うように日本の物と同じ材料の食べ物ばかりで料理やってもらってたから、そろそろこの世界の料理も食べてみたいかも。

 あの肉サンド美味しかったしね!……じゅるり。


「この世界の食べ……」

「唐揚げーー!!」

「ハンバーグーー!!」

「「お肉ーー!!!!」」

「おおぅ……」


 梅香ちゃんと桜ちゃんからの子供らしい圧力に、びっくりして言葉が止まってしまった。


「ならメインディッシュはハンバーグ、サイドに唐揚げも用意致しますね」

「「やったー!!」」


 ピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶ2人、いくら戦闘が強いと言っても、やっぱり見た目相応の子供だよね。

 ここは異世界だけど、2人を見ていると日本とあまり変わらない光景だ。


「カオリ様はこの世界の食べ物、と仰いましたか?」

「あっ、はい」


 2人の声に埋もれた私の声もちゃんと聞こえてたんだ。


「……なら、この世界の食料を使った王国名物を出しましょう」

「王国名物!どんな料理ですか?」

「今言うよりも、実際に見て食べていただくほうが良いかと思います」

「むー秘密ですか……まぁいいです、楽しみにしてますね!」


 王国名物ってなんだろ?普通に考えるなら、この国の特産が使われた料理か何かだろうけど。

 一応配達依頼で色々納品やってるから、この国の食材流通は少し見てきたけど思い当たらない。

 これからこの世界で生きて行くのだから、この世界の食材とも慣れ親しんでおかないとね!


 こうして青果屋で野菜類と果物系を購入し、肉屋でハンバーグの為の牛らしき肉と豚らしき肉の混ざる合挽き肉を購入。


「唐揚げ用のお肉は良いんですか?」

「その肉ならレイナ様達が狩ってきているので大丈夫です、これで必要なものは買いましたし帰りますよ」


 レイナ達が買ってきた?いや、普通は買い物を二手に割ってやる必要はない、だって肉屋にも来てるもん私達。

 ……もしかして、買ってきたじゃなくて狩ってきた?って事は魔物??


「oh……魔物肉唐揚げ」


 と、少し外人風に驚きながらも、肉サンドが美味しかった事も思い出して、期待を寄せながら帰る私であった。



 家に帰ってくると既にレイナ達が帰ってきており、2人は洗濯物を畳んでいる最中だった。

 午前中に家事を終わらせて特訓に出ていたから、洗濯物の取り入れだけがまだだったんだよね。

 多分今まででも、リサが大変な時や居ない時は自分達でもやるようにしていたんだろうな。


「あぁ戻って来たか、おかえり」

「おかえり、ウメちゃんとサクラちゃんも久しぶりね」

「わーい!レイナおねーちゃん!久しぶり!」

「ソルおねーちゃーん!またもふもふさせてー!」


 桜ちゃんはソルに、梅香ちゃんはレイナに抱き着きに行った。


「もー桜ちゃん、後で触らせてあげるから今は邪魔しないのー、お洗濯も大事でしょ?」

「うん!分かった!」


 桜ちゃんはちょこんとソルの隣に座って洗濯物を畳むのが終わるまで賢く待っている。

 自由奔放だけど、ちゃんと聞き分けいい子達だからね。

 昔からちゃんと待っててと言えば待っててくれるし、手伝ってと言えば喜んで手伝ってくれたし。


「ウメも元気だな!これが終わったら遊んでやるから、少し待っててくれ」

「やったー!待ってる!」


 今の時間は夕方5時頃、私とリサは台所に立ち、レイナとソルは洗濯物を片付けて梅香ちゃんと桜ちゃんの相手をしてくれている。

 庭でレイナが梅香ちゃんを肩車しながら走り回り、ソルが桜ちゃんを膝に座らせて2人の走り回る姿を見つめながらお話しているようだった。


「梅香ちゃん元気だなぁ」


 キッチンの小さめの窓から皆の様子が見えるので、それを見てボソッと呟きながらも料理の手伝いをしている私。

 基本料理はリサ主導で進めているので、私はその補助と食材の下準備等をしている。

 野菜を刻み、唐揚げのお肉を下処理して唐揚げ粉らしき物をまぶしたり、その他諸々の準備を指示受けながら用意していく。

 しかし、このお肉は何の魔物肉なんだろう?肉塊の状態じゃ私には分からない。


「リサさん、この唐揚げ用のお肉は何の魔物なんです?」

「普通に教えるのもあれですし、クイズにしましょう」

「クイズ?」

「4択出すんで、当ててみてください。まず1番、ワイバーン」

「ワイバーン」


 ワイバーンって鳥と言うよりはドラゴンだよね?

 基本的に小型の竜で、異世界作品によってはドラゴンライダーとかで、ワイバーンに乗って空を駈けたりするのもあるね。


「2番、コカトリス」

「コカトリス」


 コカトリスって確か……石化とかしてきたり、尻尾は蛇で毒を持つ大きい鳥だっけ?

 確か異世界小説で度々出てきてたような気がする。

 目を見たら終わりとかって聞いたような?あれ……それ違う魔物だっけ?


「3番、ロックバード」

「ロックバード」


 これは初めて聞くね、名前から推測すると岩の鳥かな?

 多分岩に包まれてるから硬そうだけど、岩を剥げば柔らかい肉が出てきそうだね!

 グラ○○ス?知らないね。


「4番、ヤタガラス」

「ヤタガラス」


 八咫烏って、確か三本足あるって言われてるカラスだったかな?

 ここでは魔物として生息してるんだね、この世界のカラスもゴミ漁りしたりするのかな?

 いや、何か魔物の死体突っついてそうだなぁ……


「カオリ様、どれだと思いますか?」

「うーん……」


 唐揚げ用に2口サイズ程になった肉塊を見つめる。

 一部の肉には皮も付いているので、この皮がヒントになると考えた。


「皮があるって事は、ロックバードは違う……のかな?」


 実際にロックバードを見た事がないから分からないけど、岩の鳥だと仮定すれば皮を形成する必要がないよね。


「そして八咫烏は、皮の色が黒ではないから違うはず」


 私の知る八咫烏は肌の色が黒色のはず、異世界だから黒だけじゃない可能性もあるけど……現状の知識じゃ分からない事だから、日本水準で考えてみた。


「そしてワイバーンは竜だから、基本的には鱗があるはずだよね……」


 皮を見ると、鱗を剥いだ痕がないようにも見える。

 そうなれば答えは1つ!


「2番のコカトリス、これですね!」


 グイッとリサに迫り、正否を求める。


「……流石の推察、正解です」

「やった!」


 台所で騒げないので、小さくガッツポーズ!


「随分と頭が回るのですね、皮1枚で推測するとは」

「肉質では判断出来ないですから、それに私はこの世界の魔物もあまり知りません、なので元世界の知識で皮を頼りに推測したまでです」

「……なるほど、元世界の知識ですか」


 リサが少しばかり考える仕草をしてから聞いてきた。


「手伝いの手際を見るに、カオリ様自身もある程度料理が出来ますよね?ならば、そちらの世界の料理にも詳しいのでは?」

「そうですね、向こうでは1人で自炊していましたから……そこそこは」


 実際はク○○○ッドとかを見て作ってたからあれだけど、毎日作ってたから割と知識は頭に入ってる。


「ならばカオリ様にお願いがあります、カオリ様やレイナ様が居た世界の料理のバリエーションを増やしたいのです、よろしければご教授願えますか?」

「私が、ですか?レイナさんから色々聞いて再現していたのでは?」

「それはそうなのですが……レイナ様は実は料理がした事が無いらしく、食べた物がこんな感じの物だーとしか分からないのです。今日までお出しした料理も頑張って再現させた物なので……実際に料理が出来るカオリ様から聞きたいのです」

「oh……なるほど」


 今まで食べてきた物は、レイナが教え込んだのではなく、リサが頑張って再現してくれた物だったんだね……

 めちゃくちゃ苦労したんだろうな……


「私で良ければ、教えますよ!」

「ありがとうございます!」


 リサに料理を教える約束をし、私達は今日の夕飯を仕上げるのであった。

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