第12話 雷を扱ってみよう
『カオリさん、冒険者カードが出来ましたよ!』
「あっ、出来たみたいですね」
私はドア開けて、セイラさんから冒険者カードを受け取った。
「冒険者カードは失くすと再発行費が2000ノルンかかりますのでお気を付けください、発行費として500ノルンなのですが……大丈夫ですか?」
「はい!えっと、銅硬貨が100ノルンだから、5枚っと」
ポーチより銅硬貨5枚取り出してセイラさんへ手渡した。
「確かに500ノルン頂きました。事前に教わっていたんですね」
「はい、レイナさんからしっかりと!」
「それは良かったです、手首のバングル装備外させてもらいますね」
セイラさんはバングルに手をかざすと、カチッと音がして外せるようになったので回収した。
「はい、これで終わりですね」
「ありがとうございました!」
「いえいえ、それでは失礼します」
セイラさんは持ち場へと戻って行ったので、ドアを閉めて鍵も閉める。
「よし、続きと行こうか。次は身を守る方法だが……」
「主に街中での身を守る方法でしょ?なら雷を纏っちゃえばいいんじゃない?大抵の人は逃げるわよ」
「雷を……纏う?」
「ええ、全身から放電してしまえば誰からも触れられなくなるし、局所的に放電を強くすれば魔法だって弾けるはずよ」
なるほど、痴漢とか変な奴に絡まれたりした時には便利そう。
私の雷で魔法を弾く、想像してみたら少しだけ……ほんの少しだけ、ドキドキしたのは内緒です。
でも魔物を相手にはしたくない、だって魔物怖いもん。
ただ、こうして戦う力や守ったり逃げたりする力を身に付けられたら……怖さがネックではあるけど国から外に出てもいいかもしれない、マッピングを使いこなす事を考えればね。
この世界を知る為の旅も……選択肢に入るかもしれない。
もし旅をするのなら、2人も付いてきてくれないかな?2人がいれば安心なんだけどね。
「……カオリ?」
「ご、ごめんなさい!考え事してました」
「考え事?大丈夫?」
「はい!大丈夫です」
もし魔物への恐怖が取り除けたら、この国でしっかりお金稼いで力を付けてから2人に話してみよう。
「そうか、なら特訓を続けるとしよう。しんどかったら言ってくれよ?」
「はい」
私はこくりと頷き、再度特訓再開だ。
「さてさて、全身から放電だったよな?」
「はい、ちょっと自分で試してみたいんですが良いですか?」
「構わないぞ、自分なりにやってみるといい」
「はい」
私はとあるアニメを思い出していた、あのキャラが今の私に1番近い気がする。
身体に雷をバチバチと纏わせて攻撃や防御に使っていたし、普段からも電磁波を放っていてその電磁波で何かを感じ取ったり電磁系工作を妨害してた……あれをイメージしてみよう。
「すぅ……ふぅ……」
深呼吸を行い、目を瞑って身体の魔力に意識を集中させる。
身体中の魔力をじわじわと外へ放出するイメージ……初めてだから少しずつ、少しずつ……
パチパチパチッ……
「……ほぅ、雷が身体に纏われていく」
「こんなすぐに使いこなすなんて……そう言えば、レイナも魔力を扱うコツを掴むのが早かったわよね、転生者だからかしら?」
「どうだろうな?実際日本に魔法なんて無かったが、アニメや漫画という文化があってそれが今いる魔法の世界を描かれていたりしていたからな。イメージがしやすいのは事実だな」
「あにめやまんが、ねぇ……前々から聞いてたけど、よく分からないわ」
「カオリのスマホが復活したら見れるかもしれないぞ?」
「そうなの?なら少しだけ楽しみにしてるわ」
2人の話し声が聞こえるけど、気にせず放電していく。
完全耐性だからこそ分かる、今自分の身体にどれだけ雷が帯びているのか。
更に放電の放出量を増やしていく、纏っていた雷が膨れ上がり、バチバチッと強い弾け方へと変わっていく。
「うむ、良い感じだな。カオリ、それを維持したままに出来るか?」
私は目を開いて、改めて自分がどんな感じになっているか目視で確認する。
身体中からバチッバチッと雷が弾け、静電気の時に見えるような小さなギザギザな稲妻が多数発生していた。
こういう落雷でもない小さなギザギザな雷って正式名称あるのかな?落雷時の稲妻と規模が違うだけだから、そのまま稲妻でいいのかな?よく分かんないや。
まぁ取り敢えず、深い意識をせずとも維持は出来そうかな。
「はい、大丈夫そうです」
「使うコツを掴めば、深く意識せずとも使えそうか」
「ですね、魔力の操作?も急にやりやすくなった気がします」
先程から身体中の魔力を、深く意識せずとも分かるようになった。
コツを掴む、これが最重要だったんだね。
「なら電気?雷撃?なんと言うか分からないが、弱くしたり強くしたり繰り返して欲しい。加減を覚えないと凶器になるからな」
「分かりました」
体内の魔力調整や操作をして、雷の強弱を素早く変えられるように、そして魔力の操作も早く出来るように繰り返し繰り返し練習していく。
練習を始めて暫く時間が経った頃、少しお腹が空いてきた。
レイナに今の時間を聞くと、アイテム袋より懐中時計を取り出した。
「懐中時計ですか?」
「あぁ、これ自体は日本の物だが、組み込まれた魔法により電池が要らない仕様になってるんだ。この世界も1日24時間で日本と変わらないから不便もないんだ」
「なるほど魔法か、凄く便利ですね」
時間を見ると12時半になっていた。
レイナ曰く、訓練室は後30分で出ないといけないらしいけど、お昼時だし丁度いいね。
「後30分で出来る事をやりましょう!」
「そうだな、後は逃げる手段だが……」
「それなら、レイナのフレアアクセルや私のウインドアクセルを参考にして、雷属性バージョンにしてみたらどうかしら?」
「あぁあれか、確かに火と風で使えるなら雷でも使えそうだな」
「でしょ?やるだけならタダだしやってみましょ!本当なら雷属性持ちの人に聞くのが1番なんだけど、雷属性持ちの人が少ないからね……」
「属性持ちが居ないのは仕方ない……そうだな、試してみるか」
「じゃあ私がお手本見せるわ!」
ソルが少し離れた位置まで移動た。
「カオリ、ソルの足元をよく見ておいてくれ」
「はい!」
「それじゃ行くわよ!」
ソルの靴回りに風が纏う、そして真上にかるーくジャンプしたかに見えたのに……足先が3m程の高さになるまで身体が浮かび上がる。
「!?」
ソルは狼人族だから身体能力が高いのもあるだろうけど、それだけじゃなさそう。
ジャンプの瞬間にフワッと風が発生し、着地の瞬間にも同じように風が発生していた。
地面を蹴る際に風を発生させて、その風の勢いでジャンプしている……?こんな事が出来るんだね。
興味津々に見ている私に気付いたのか、ソルはこちらをチラ見してニヤッと笑みを浮かべた。
「ふっ!」
ソルが足を踏み出したと思った瞬間、ブワッ!と風が発生し一瞬のうちに部屋端まで移動していた。
「……へ?」
今、何が起きたの?ソルが一瞬で向こうへ……
私は口を開けてポカーンとしてしまっていた。
「ふふ、初めて見る人皆そうなるんだよ」
そりゃそうでしょうよ……
私には見えなかったけど、レイナ曰く3歩で端まで行ったらしい。
ってか、お手本見せるって言ってたよね?
もしかして私……今からアレをやるの?
……嘘でしょ?
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