第18話 6神ミルムとカオリサポートシステム
また……この空間だ。
目の前には真っ白な空間が広がっていた……お昼ご飯食べて寝ちゃった時の続き、かな?
「カオリ、聞こえる!?カオリ!」
「ん……?誰?」
声が聞こえる方に振り向くと、前のように発光体が見えた。
「私!ミルムだよ!」
「……え?ミルム……様?」
「良かった、やっと繋がった!」
発光体が更に光りだし、身体が形成される。
出来上がった身体は、紛れもなくあの森で現れたミルム様だ。
「み……ミルム様!」
ミルム様に近付いて手を伸ばすと、手を握ってくれた。
「良かった……無事だったんですね」
「うん、何とか神落ちせずに済んだ。私は今、神の領域から離れて最高神フォルトゥナ様の別荘に居候してるよ」
「最高神、フォルトゥナ様……神様も別荘とか持っているものなんですか?」
「多分フォルトゥナ様だけだと思う、まぁあのお方は人が好きらしいから真似して暮らしたい時に使うとかって聞いたよ」
「なるほど……」
フォルトゥナ様は人が好きなんだ、あまり世界に干渉しないって聞いてるけど……
「あぁそうだ、フォルトゥナ様に届いてたみたい、貴方の祈り」
「えっ」
私の祈り……あれかな、冒険者ギルドの時に祈ったやつかな?
「あの祈りをきっかけに、フォルトゥナ様からの命令でカオリサポートシステムが組まれたよ」
「わ、私のサポートシステム……?」
「うん、詳しくはまた会えた時に話すよ」
「え?会えた時にって……」
「今から、そっちに行くから」
「えっ!?」
急に空間自体が光り出す、そして……夢から戻ってきた。
「んっ……」
ふかふかで温かい……ソファーで寝てた筈だけど、ここはお布団かな?
ミルム様が夢に出てきて、無事だって言ってた……本当かは分からないけど、本当ならいいな。
お布団の中で、私はぬいぐるみを抱き締めていた。
クマのぬいぐるみで名前はみーちゃん、20歳である私が小さい頃から毎日抱いて寝る程大好きなぬいぐるみ。
若干外が眩しい……朝か、起きなきゃ……
「ふわぁぁっ……」
欠伸を1発かましてから、お布団から出たくないという煩悩を捨てて身体を起こして立ち上がる。
寝惚けてぬいぐるみを持ったまま、顔を洗いに行こうとドアから出る。
洗面台に辿り着くと、寝間着姿のソルが丁度顔を洗い終わった所だった。
「あら、おはよう」
「おはようごじゃいましゅ……」
「まだちゃんと起きてないじゃないの……ほら、顔洗って目を覚ましなさい」
「ふぁい……」
ソルが洗面台を空けてくれたので、ぬいぐるみを濡れない場所に置いて顔を洗う。
冷たい水が顔に触れ、すっと目が覚める感覚があった。
「ふぅ……頭も起きてきたかも」
タオルを手に取り顔を拭く……そしてタオルを元の位置に戻すと、ぬいぐるみの姿が目に入る。
「……あ、れ?」
「ん?どうしたの?」
私の異変に気付いたのか、ソルが覗きにきた。
「み……みーちゃん?なんで、ここに?」
「みーちゃん?」
クマのぬいぐるみでみーちゃんと名付けている、私が小さい頃からずっと大事にしてきたぬいぐるみが……今ここにあった。
そう言えば、目覚めた時から抱いてた気がする。
「これ……みーちゃんて言うんですけど、私が小さい頃からずっと大事にしてたぬいぐるみです……この世界に来た時は無かったのに、なんで……?」
「えっ、転生の時に持っていた物じゃないの?」
「は、はい……昨日寝てしまうまでは無かったはずです」
意味が分からない、なんでここにみーちゃんが……?
「教えてあげようか?」
「「!?」」
私達の声とは別の声が聞こえて、慌てて見渡すも誰もいない。
「ここだよここ、このぬいぐるみだよ」
「「えっ!?」」
ぬいぐるみを見ても動いている様子はない、でも……声は確かにぬいぐるみから聞こえた。
「だ、誰!?」
「もー、今からそっちに行くって言ったよ?カオリ」
その言葉を聞いて確信した、その声の正体は……
「なっ……!?ま、まさか……ミルム様!?」
「えっ!?」
「うん!ごめーさつ!」
クマのぬいぐるみのみーちゃんが形を変えて1人の人となった、見間違える訳が無い……ミルム様だ。
「う、嘘……ミルム様!?」
ソルは慌てて跪く。
「ソル、堅苦しいのはいいよ。楽にして」
「で、ですが……」
「い・い・の!それよりレイナやリサはいる?みんなに説明をしたいから、リビングに呼んでくれたら嬉しい」
「す、直ぐに呼んできます!!」
ぴゅーっとレイナとリサを呼びに走って行ってしまった。
「もー、慌てなくてもいいのに……」
「あの、ミルム様……どうしてみーちゃんに化けて?」
「あぁごめんね、カオリが寝てる間に布団へ潜り込んで密着してたら色々記憶が見えちゃって……大事にしてた物に擬装しようと思った、小さい物質の方が魔力節約になるし」
「擬装……?」
「後で説明するよ、今は着替えた方がいいんじゃない?」
「は、はひぃ!」
私は慌てて着替え、みんなが集まるであろうリビングへと急いだ。
私とミルム様がリビングに着いた頃には、既にみんなが集まっていた。
「ミルム!」
姿を見るなりミルムに駆け寄り抱き締めたレイナ。
「レイナ、再会出来て嬉しいよ」
「本当に、ミルムなんだな!?」
「当たり前だよ!この姿の人が他に居ると思う?」
「ふ、ふふっ。そうだな、間違えようが無いな」
「でしょ?」
「しかし、神落ちするって話だったのでは……?もしかして、人間落ちしてここに!?」
「いやいや、神落ちはしてないよ。これから説明するから、聞いて頂戴」
全員椅子に座り、ミルム様の説明を待つ。
ミルム様はコホンと咳払いをして、説明を始めた。
天界で起こったこと、そしてどういう状況になって今こうしているのか。
そして分身体は魔力動かしているので、魔力の節約と長期維持する為に一時的にクマのぬいぐるみになって節約していた事も説明を受けた。
「なるほど……今居るミルムは分身体、なのか」
「うん、戦闘能力もかなり控えられてるし神の力も少ししか使えない、元を言えばカオリを守る役割でしかないからね」
「ふむ、要するに直接的に守るのがミルムで、周りでカオリを守るのがカオリシステムか……更には最高神様の介入まで」
「まぁフォルトゥナ様に関してはそこまで考えなくていいよ、本当にカオリを心配したってだけだし。カオリシステムに関しては話したけど、協力してくれる転生者5人を知っておく必要があるから紹介するよ」
ミルム様は宙に浮き、魔法で人の顔を映し出した。
「おお!これって魔法ですか!?」
「そう、見た物を映し出す事が出来る投影魔法、クリップってやつ!」
投影と言えば、水面やスクリーンに映る影の事だったと思うけど、ここだと若干意味合いが違う……あれ、そうだっけ?
合ってたような……間違ってるような気も……
まぁいいか。
「投影魔法か……知人にも使える人が居るが、使い勝手が悪いと聞いているよ」
「あぁーあの子ね!確か条件としてしっかり覚えている必要があって、いざって時に思い出せなくて使えないみたいな事例があるとかないとか……そうなると上手く使える人なんてあまり居ないでしょ」
あの子って誰だろう……?
まぁ、今気にしても仕方ないか。
「ところがどっこい、ここには完璧に使いこなせる子が居るじゃない?」
ミルムがちらっと私を見てきた、それに釣られてみんなが私の方を見る。
「えっ、え?」
急に注目を浴びて戸惑ってしまう。
その時レイナがハッ!としてミルム様の方に振り向く。
「……そうか!完全記憶か!」
「流石レイナ!正解よ!」
「あっ、なるほど!確かに私なら使いこなせそうです!」
投影魔法を使うには映し出す内容をしっかりと思い出して投影する必要があると言ってた、ならば完全記憶を使える私なら……見た物ならどんな事でも100%投影する事が可能だよね!
「後で伝授するよ、だけど今は先に転生者5人の顔と情報を覚えて欲しい。じゃいくよ?」
1人目
現代勇者ヨシヒコ、人界に転生した人族の21歳。
黒髪で曲がった事が嫌いな男性、光属性を主軸に基本属性全て使える。
今は魔界に近い人界の街に居着いており、魔界に転生したミラリアと交際中。
この2人が人界と魔界の共和へと導いた英雄カップルと呼ばれている。
2人目
ミラリア、魔界に転生した人族の19歳。
魔界に転生した黒髪女性、魔界の魔力のおかげで闇属性魔法に長けている、その他属性も多数所持しかなり高水準。
最初は魔界で生きる為に日本の名を捨てたのでミラリアとなっているが、今は魔界からも元の名を認められている。
しかし、私は生まれ変わったのだからとミラリアで通しているらしい。
人界に勇者として転生したヨシヒコと交際中。
3人目
サツキ、人界に転生した人族の30歳。
元の世界にあってこの世界にないような物を作り出す錬金術士、元研究者だったが為に様々な研究も行っていたりする。
カオリ以外の転生者全員と知人である唯一の人であり、元世界の物を作ってくれると大評判。
戦闘はからっきしなのだが錬金で作り出したアイテムで応戦は可能で、そのアイテムの威力は初級魔法をも凌ぐ。
ヨシヒコには装飾品を、ミラリアにはローブを、ウメとサクラにはペアルックの耳飾りを、レイナには鎧を作った。
4人目
ウメ、天界に転生した天使族12歳。
転生者の5人目であるサクラとは姉妹でこちらは姉の方。
元々人として転生だったのだが、オンラインゲームで使っていた天使がいいと頼まれて天使として転生した。
姉妹2人揃って双剣姫と言われるくらい強い。
それによって冒険者ギルドのAランクだが、妹とのPTではSランクとされている。
この姉妹2人はオンラインゲーム内で名を馳せていたプロゲーマーであり、この世界でもゲームを楽しむかのように放浪の旅へ出ている。
純粋な剣の強さや補助魔法の有用さでは姉のほうが一歩上手であるが、純粋な技術力や器用さでは妹の方が少し上手である。
5人目
サクラ、人界に転生した悪魔族11歳
転生者の4人目であるウメとは姉妹で、こちらは妹の方。
元々人として転生だったのだが、オンラインゲームで使っていた悪魔がいいと頼まれて人型悪魔として転生した、ただ小さくて若いのにいきなり魔界送りは気が引けたので、魔族に理解がある人界の場所へと転生した。
姉妹2人揃って双剣姫と言われるくらい強い。
それによって、姉と同様に冒険者ギルドのAランクだが、姉とのPTではSランクとされている。
姉妹の転生は一緒に行われてそれぞれ別々の場所に転生したが、持ち前のゲーム知識ですぐさま旅に出て僅か2週間で再会した。
11歳と思えぬ頭の回転の早さとキレで姉をサポートしている。
「で、6人目は言わずとも私の担当であるレイナだよ!」
それぞれの情報と顔の映像を映してもらったのでしっかりと覚えたのだが……
「ウメ……?サクラ……?子供?」
懐かしい感じがした、まるであの時の子たちのような……まさかね。
しかし、こうしてみんなが私を助ける為のシステムに協力してくれてるんだ……そう考えると嬉しくなる。
この映像を見たレイナ、ソル、リサ全員がびっくりして固まっている。
「す、凄すぎる……英雄の2人に、双剣姫すら味方……なのか」
「確かにこれはヤバいわね、カオリを敵に回す奴が仮に現れたら……瞬殺されるわよ、これ」
「双剣姫の実力はこの目で実際に見た事がありますが、見た目に反してこれ以上はない程の頼もしさがありますね(ウメちゃんとサクラちゃん、暫く会っていませんが元気でしょうか?また私の暗部隊の特訓に付き合ってくれたら嬉しいのですが……まぁ自由な姉妹ですからね、次に会えたらにしましょうか)」
「そ、そんなに凄い方々なんですね……」
それぞれ感想を漏らした。
「レイナ含めこの6名、そして神様である私と妹達の6神、更にはフォルトゥナ様もついてる。だから、安心してこの世界を楽しんでほしい!」
ミルム様が両手を広げて満面の笑みを私に向けてくれる。
その言葉に、私は少し涙した。
「……ミルム様、みんなもありがとうございます!」
そこまで私の為にと、感謝するほかなかった。
「カオリ、これから神である私もずっと傍にいる、ただ人の前に出るのはまずいから……普段はカオリのお気に入りであるぬいぐるみになっておくよ。いつでも話せるように背負えるショルダー風にしておくから、肩身離さずにお願いしたい。人目のない場所ならこうして人型になる時間も作るから」
「分かりました!」
「最後にカオリ、私に対して様を付ける必要はないよ。クマのぬいぐるみの状態がメインになるから、呼び慣れたみーちゃんって呼んで欲しい」
「えっ!?ダメですよ!神様なのにあだ名呼びだなんて……」
「い・い・の!クマのぬいぐるみにミルム様だなんて言っていたら、大変な事になるよ?」
「うぐっ……」
確かにそれはまずい、でもだからってみーちゃんは……
まぁミルム様だからみーちゃんというあだ名でも変ではないんだけど……
あー!でも良い案が思い付かない!
……仕方ないか。
「……分かりました、みーちゃんと呼ばせてもらいます」
「よろしい!それじゃみんな、よろしく!」
新たな仲間に、何と神であるミルム様……違った、みーちゃんが加わったのだった。
それにしても、みーちゃんの喋り方が何だか違和感があるような気がするのだけど……私だけ?
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