第33話 リサの過去、死のバトルロイヤル
私は捕まってしまい、奴隷の首輪を付けられてしまいました。
トリック王から『油断するな、決して付けるでないぞ』と言われていたのに……
両手を鎖で繋がれ、檻に入れられて身動きが取れなくなってしまった私は、事前に繋いでいた通信魔法でツキミに連絡しました。
『ごめんなさいツキミ、聞こえますか?』
『……リサ隊長?何かあったのですか?少し潜入が長い気がしますが、そんなに地下が広かったりするのですか?』
『……いえ、私……捕まって例の首輪を付けられてしまいました……』
『っ!?そ、そんな!?』
『速やかに、トリック王に伝えてください。中心に居るのは、ガリレイ商会創設者の息子……長男のレイザスの側近であるガルドロという男です』
『レイザス……魔界との境界にある街、ハイラダの支店責任者ですね、その側近ですか!?』
『はい、今すぐ暗部隊全員を引き連れて、対策を……あ"あ"っ!!』
ガルドロが檻に入ってきて、私の身体に鞭を入れてきた。
通信魔法を心の中で行う事は出来ているので、通信している事はバレていない。
『た、隊長!?』
『いっ……いいからっ!早く行きなさい!!多分ですが、私に尋問をして情報を吐き出させるつもりでしょう、ですので直ぐには売られません!!』
『ぐっ……待っててください!直ぐに戻って来ますから!!』
そこから通信はなくなりました、恐らく通信圏外に出たのでしょう。
「おい!聞いているのか!このネズミが!」
「いっ……つ」
鞭で叩かれ、私の服はどんどん破れていきました。
「テメェ、何処から来た!何が目的だ!」
「ぐっ……言うと、思いますっ……か?」
「クソが……さっさと吐け!!」
「あ"あ"っ……ぐっ……」
ピシン!バシン!と大きな音を立てて、私の身体に傷を付けていきました。
「強情な奴め……吐かないと、お前の大事な物も奪ってやるぞ」
「ふ、ふふっ……吐いた所でっ、奪うつもり、でしょう?……ならば吐きません、よ」
ガルドロが指をパチンと弾くと、首輪が光り出し……電撃が発せられた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
身体が少し焼ける程の、痛め付けるに丁度良い電撃が私を襲いました。
「ふん、今に見ておけよ」
ガルドロが檻から退室していく、私の身体は……随分な傷物になってしまいました。
それから3日……私は長い長い尋問を受け続けました。
鞭で叩かれ、身体を電撃で焼かれ、ロープで身体を縛られ……耐え抜きました。
ツキミであれば、毎晩ちゃんと寝て4日かけた道のりも、本気出せば2日で駆け抜けるはずです……
であれば、対策を立てて今、こちらに向かって来てくれているはずです……
耐え抜けば……私が何も吐かなければ、勝ちです。
暗部隊全員と王国の支援があれば、負けません。
「おい、情報を吐く準備は出来たか?」
「……誰が、吐きますか」
「ふん!これを見て、本当に吐かないつもりか?」
手に握られていたのは、注射でした。
「な、何をするつもりです!?」
「これで少し、素直になってもらおうと思っているだけだ」
ガルドロが近付いてくる、身体はもうボロボロで……鎖もあるから逃げられません。
「い、いや……やめっ!ぐっ!?」
腕に注射を刺されました、身体がじわじわと熱くなってくるのが分かります。
「な……何ですか、これは」
「気持ちよくなるクスリだよ、これで正直に吐けるようになるぜぇ?」
「このっ……クズが」
「ふん!暫くその感覚を味わうんだな」
ガルドロが退室していく……
私は、身体が言う事を聞かなくなっていくのを、必死に耐えました。
汗を大量にかき、汗でもない液体が溢れ出す。
そして1日後……
「ほう……まだ睨みつける気力があるか、大した奴だ」
「ま……負けま、せん……」
「ハッ!」
ガルドロが鞭を払い、私に叩き付けた。
「うぎぃぃぃぃあぁぁぁぁ!」
敏感になりすぎた私の身体は……過剰反応を起こしてしまいました。
「さぁ、楽しませてもらうぜ。吐くまで、毎日してやるよ」
私は……されてしまいました。
大事な人に捧げる、大事な物を……強引に奪われてしまったのです。
囚われて7日目、私含め奴隷15人が集められました。
売り物にならないくらいの、傷物奴隷ばかりな印象です。
向かった先は……地下に作られていた闘技場的なフィールドに集められました。
そして、私の身体の熱も冷めぬまま……私達奴隷全員でトーナメントバトルをさせられることになりました。
「全員トーナメント形式で死ぬまで戦え!優勝して生き残ったやつは、ここから出られるようにしてやる!戦わない奴は、俺が殺す!だから手を抜かず戦え!!」
どうやら、優勝者以外は死ぬようです……
これで、誰が生き残るかを賭けで楽しむようでした。
しかし、15名ではトーナメントで端数が……と思っていると。
「おい!さっさと歩け!!」
バシン!と鞭を叩かれる音と共に……私の暗部隊の1人であったシラヌイが、私と同じように傷まみれでやってきた。
歩いてきた道には、何かの液体が垂れたのか、水滴があった。
「ずみ……ませ……」
もう、精神すら保てていないようでした、私にも気付いていないようです。
多分、私と同じクスリをやられたのでしょう……っ!?
いや、待ってください……もしかして、私が生き残っていいように、シラヌイに情報を吐かせた……可能性が?
もしそうなら……私達の目的が、全て奴に……?
「……ま、まさか」
私が気付いてガルドロを見た瞬間、奴がニヤリと笑った。
やはり、知っている……奴隷の首輪に関する事で、今調査が入っていることを。
という事は……ここ以外で活動している所がある場合、既に逃げられている可能性が……!?
「さぁ!順番に戦え!!」
命令を受けた首輪が光り出し……こうして、武器のないバトルロイヤルが強制的に始まりました……
まずは、狼人族の男性と戦いました。
私は、Sランク冒険者です……クスリで満足に身体が動かないにしても、武器を使わずとも全員瞬殺すのは可能です。
ガルドロや周りに居る奴らは、それぞれ武器を構えていました……反逆した際に押さえ込み殺す用でしょう。
私は今、クスリで満足に身体を動かせない中、アレを回避は出来ません……
自分の心を殺しました、罪のない人達を殺すのですから……でないと、生き残りすら生まれない。
16人全員死ぬ事になります、手を抜かないのが条件にされているのですから……私が強いのを分かっている上で、です。
なので、このバトルロイヤルは賭けをしたかっただけで組まれた物ではありません……私が人を殺すのをみたい、そして……自分達が逃げた後に私が見付かり、殺人で捕えさせる……そんな未来が、見えました。
それでも、この戦いは止められません……首輪に命令されているので、そして全員死んでは証言が誰にも出来なくなります。
「……すみません」
「ひっ……」
私は、狼人族の首をへし折り……殺しました。
「はっはっはっは!良いぞ良いぞ!もっと殺れ!!」
私は、言われるがまま……
その死んだであろう死体に、更なる追撃を与え……確実な死を与えました。
私が即座に終わらせてしまったので、残り14名全員が恐怖の顔で私を見てきます。
普通は痛むであろう心は、既に自分で殺しています……周りにどんな目で見られようと、何とも思いませんでした。
2回戦、3回戦と進み……4回戦では、シラヌイが出番でした……
シラヌイは、ひょろっとした女性と対峙しましたが……お互いに手が出ません。
シラヌイは精神が壊されてしまっており、動けない。
女性も恐怖で何も出来ない。
「……つまらん、死ね」
ガルドロが剣を振るい……2人の首が撥ねられました。
「……っ」
私の、大事な仲間であったシラヌイの首が……私の足元に転がる。
心を殺した私でも……少し、涙が浮かびました。
「……生き残らなければ」
シラヌイの分まで、生きなくてはいけない。
私は、そう誓いました。
私は次に、若い熊人族の男性と戦いました。
熊人族は力があるので、1回戦では私と同様に首を一捻りで勝ち上がっていました。
でも、私の敵ではありません……熊人族の男性の腕を逆関節にして、首を締めました。
ガクッと頭が倒れ、息絶えた事を確認して……私は決勝戦に進みました。
決勝戦、そこには狼人族の女性が立っていました。
「私の……旦那の、仇!」
「っ!?」
どうやら、1回戦で戦った狼人族の男性が、この女性の旦那だったらしいのです。
彼女のパンチを……私は、顔で受けました。
「……!?」
女性は驚きますが、私はビクともしません。
旦那を殺した私に、一撃入れる権利が彼女にあると、そう思ったからです。
そして、私は反撃し……心臓に一撃、拳をねじ込みました。
彼女は倒れ……息絶える寸前に、声を出しました。
「ごめ、んね……ダリ、ス……ソル、ちゃん」
そう言って、彼女は……心臓が止まり亡くなりました。
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