第14話 お風呂と貧乳同盟
『…………り!お……ろ…………り!』
「んっ……んん?」
何処からか声が聞こえ、瞑っていた目をゆっくりと開く。
すると、目の前に広がるのは真っ白で不思議な空間だった。
ただ1つだけ、発光している球体が浮いている。
『お……たか!……の……!』
その発光体から声がした、何だか聞いた事がある声な気がする。
でも、レイナ……違う、ソル……でもなさそう。
『だめ……、パスが……わい……』
なんと言っているのか聞き取れない。
次第に発光体がどんどん遠ざかっていく……
「誰……?あっ、待って!」
その発光体に追い付ける事もなく……発光体が消えた瞬間、私は目が覚めた。
「んんっ……」
「あっ、やっと起きたわね」
まだ意識がハッキリしないけど、ソルの背中におんぶされている状態なのは分かった、ご飯食べて寝ちゃってたみたい。
密着してるからソルの温かさや匂いがダイレクトに伝わってくる、昨日汗を拭いただけだった筈なのに、凄く良い匂いがする……すんすん。
「……え?ちょ!匂い嗅いじゃだめよ!!臭いからぁぁ!!」
「んんっ、良い匂い……この匂いしゅき……すんすん」
「やぁぁぁぁぁっ!やっ、止めっ!早く起きなさいって!!寝惚けてる場合じゃないわよおぉぉぉぉぉぉ!!!」
「あっはっはっ!」
匂いを嗅がれて大慌てするソルを見て大笑いするレイナであった。
私はソルの背中から降ろされて、レイナと手を繋いで歩いている内に、段々と脳が起きてきた。
そして思い出す、私がすっごく恥ずかしい事をしてしまっていた事を。
「……失礼、しました……」
「い、いや……寝惚けてたんだし、仕方ないわよ、うん……」
ソルの顔が真っ赤で可愛いのだけど、きっと私の顔も真っ赤なんだろうな……。
「2人が顔を真っ赤にしているのをもう少し見ていたかったのだが……着いたぞ、ここが私達の家だ」
レイナが指差した先には貴族が住むような屋敷があった、あれが2人のお家!?大きい訳ではないけど、立派なお家だ。
柵で囲まれていて隙間からは庭が見えるんだけど、そこでメイドさんと思わしき人が植木の手入れをやっていた、メイドさん雇ってるんだね。
それを横目に門扉まで歩いていき中へ入ると、紫色の髪をした目付きの鋭いメイドさんが目の前にスタンバっていた、先程植木の手入れをしていたメイドだ。
「おかえりなさいませ」
私の素人目から見ても美しいお辞儀をするメイドさん。
メイド服はロングスカートとなっており胸元どころか首筋すら出さないタイプだった、あまり素肌を出したくないのかな?
そういえば、今さっきまで植木の手入れしてた気がするんだけど……いつの間に?
「た、ただいま……」
ソルは先程の匂いくんくん事件により疲れていたのか、気が抜けた挨拶になっていた。
「ただいまリサ。すまないが、今日からこの子を引き取ることになったんだ、面倒を見てやってほしい」
「かしこまりました」
リサと呼ばれるメイドはこちらを見て、スカートを両手で広げつつお辞儀する。
「レイナ様とソル様のお世話をさせて頂いている、リサと申します」
「か、カオリです!よろしくお願いします!」
こちらを見る眼力が鋭くてぶるっと身震いがする……
「カオリ、気にしなくていいぞ。元から目付きが良くないだけなんだ、カオリを嫌ってる訳じゃないからな」
「は、はい……」
レイナの手を握っているからか、私のちょっとした反応に気付いてくれて安心させてくれた。
「では、カオリ様用の部屋を準備してまいりますので、その間にお風呂にお入りください。カオリ様の服も洗って乾かしておきます」
「分かった、行くぞカオリ」
「あ、はい!」
レイナに連れられて家の中へ。
ドアを開くとそこはリビングだった、ソファーや机に椅子が並べられており、その脇にはキッチンがあった。
レイナとソルから、目に見える範囲の部屋の説明を受けつつ脱衣場へ。
「カオリ様、服はこの桶の中にお願いします。洗って乾かしておきますので」
「あ、あの……パ、パンツも……ですか?」
「はい」
「うぅ……」
パンツを見られるだけじゃなく、洗われるなんて……
恥ずかし過ぎて死にそうだよぉ……
でも、風呂上がりの服や下着がないと困るのは自分だし……私に合う服なんて、3人の容姿からしてないと思うし……
「お、お願いします……」
仕方なく、ほっっんとに仕方なく、胸や下半身を隠しながら脱いで、桶に服と下着を入れる。
まぁ、隠す程の胸は無いんだけどね……
「では、洗ってまいります」
リサは私の服と下着が入った桶を持って脱衣場から退室していく。
レイナとソルも別に用意してある桶に服を入れている、多分後でリサが洗うんだろうな。
レイナの例のTなバックと、ソルの白い下着もチラ見して浴室へ。
浴室に入ると、銭湯のような大きいタイプの湯船が真ん中の壁際でドンと存在感を放っていた、多分6~7人くらいなら間隔を開けて悠々と入れる大きさだ。
「おお……広いですね」
「だろう?気の知れた仲間が家に泊まりに来た際にも、皆で入れるように広く設計したんだ」
「なるほど……」
こうして説明してくれてるレイナだけど……ソル含め2人は、もうお互いに見慣れているのか身体を隠そうとしない、私が居るのに大丈夫なのかな?
私は未だに胸とお股を手で隠している、恥ずかしいもん……
唯一の救いは、無駄毛やお股の毛(陰毛)は生えていなかった事かな。
身体が若返ってたお陰だね、さすがに転生前は生えてたんだけど……割と薄い方だったの。
だからほら、長袖着てたらつい……サボりがちに、ね?
分かるよね?分かってくれるよね!?ズボラになる私の気持ち分かるよね!?やらなきゃってのは分かってるよ!?でも見られる訳じゃないから、ちょっとくらい良いよね!?ねっ!?
そんな私の脳内1人芝居を他所に……
「まずは頭と身体を洗うわよ!」
ソルが行く先にはシャワーが3つあったんだけど、全て隣同士なので私が真ん中になって3人並んで洗う事になった。
ふと右側を見ると、レイナが頭を洗い始めていたのだが……大きなお山(本人曰くEカップ)がぶるんぶるんと揺れているのが視界に入る。
私がレイナのお山に気を取られているのにソルが気付いた。
「凄いボリュームでしょ?私なんて全然胸ないし……少し羨ましいわ」
ソルは自分のあまり主張していない胸(Bカップ)をペタペタ触って肩を落とす。
「そう、ですね。私も殆どないですし、転生前……20歳になってもバスト変わらなかったんですよ……夢も希望もないみたいです……」
同じく私も胸(Aカップ)をペタペタ触りながら肩を落した。
「……小さい同士、仲良くしましょ」
「……はい」
私とソルは弱々しい握手をする、密かに貧乳同盟が発足された瞬間だった。
「む?何か言ったか?」
「「なんでもない!!」」
貧乳2人の声がハモる。
綺麗にハモったので、お互いに顔を見合わせてクスッと笑う。
そのお陰あってか、恥ずかしさが薄れて胸や股を隠すのを止めて自然体で居られるようになった。
それからというもの、お互いに頭を洗った後にソルと私で背中洗いっこする事に。
ソルの肌は凄くすべすべでキメ細かい肌をしていたが、私の肌もみずみずしくて良いなぁとソルが声を洩らしていた、私の身体は今15歳より若いはずから当たり前だと思うけどね……
ソルの背中を洗っていて気になるのは……やっぱり尻尾!
濡れているので毛がペチャっとしているけど、リラックスしてゆらゆらとしている……
腰を洗っている時に泡が尻尾に垂れ落ちてしまったので、その泡を取り除こうと尻尾に触れる。
「ひゃんっ!?」
びっくりしたのかビクッと身体が反応して、耳と尻尾がピーンと伸びる。
「ひゃっ!?ご、ごめんなさい!尻尾に泡が落ちちゃったのでつい……」
「だ、大丈夫よ!ちょっとびっくりしただけだから、気にしないで」
「は、はい」
少ししょぼんとしていた私を気に掛けてくれたのか、意外な問い掛けをしてきた。
「カオリ、尻尾のようなもふもふは……好き?」
「えっ?そりゃあ、好きですけど……」
「そうよね、前々からじっと尻尾を見たりしてたの気付いてたから、そうだと思ったわ」
「き、気付いてたんですか!?」
恥ずかしい……まさか尻尾を見ていたのに気付いてたなんて、大きい胸を見ているのに気付かれた男子の気持ちを理解する日が来るとは……
「ええ、さっきびっくりさせちゃったし……お詫びとして、今日は尻尾を触ったりもふもふしてもいいわよ、洗ってくれるとなお嬉しいわね」
「えっ……良いんですか?尻尾って大事なんじゃ……?」
異世界小説とか読んでても、狼人族の尻尾って狼の誇りだから信頼する人以外には触らせないって話もあった気がする、作品にもよるけどね。
「そうね、狼からすれば尻尾は狼の象徴であり誇り。一部の狼人集落では、この尻尾で狼として威厳を保っているとも言われているわ」
「それを私に……良いんですか?」
「私達、もう家族みたいなものじゃない。これから一緒に暮らしていくんだから、たまになら構わないわよ」
「ソルさん……!」
思わずぎゅっとソルを抱き締める。
「ふふ、よろしくね、カオリ」
「はい!よろしくお願いします!」
転生して暫くレイナが中心になって、私のあれこれを助けてくれたからレイナとは割と早く仲良くなれたと思うけど、こうしてソルとも直ぐに仲良くなれて良かった。
尻尾は敏感だと言っていたので優しく洗ってあげると、気持ちよさそうな顔をして「わふぅ……」と言っていた。
か、か、可愛いぃぃぃぃぃぃ!!
私ときめいちゃったよ!
ってか、後でちゃんと乾かしてあげなきゃね!ドライヤーとか櫛、ブラシとかもあったりするのかな?
あるならふわっふわに仕上げて、少しだけもふもふさせてもらおう!そう決めたのだった。
「……むぅ」
湯船に入りながら、私とソルがワイワイしているのを見ていたレイナだったが……混ざれなくて少しヤキモチ妬いていた事に気が付いたのは、私達の洗いっこが終わった後だった。
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