第18話 戦闘態勢

「はっ」


 ブレンは急に飛び起きて戦闘態勢に入る。ブレンの能力はチート級だから戦ったら負ける。


「ゼシャ、どうしましょうか」


 プトはブレンの様子を見ても、どこか余裕そうな雰囲気を醸し出した。


「余裕ぶっても無駄だぞ、プト、さっさと行こうか」


「そうですね」


 ゼブは起き上がると同時にプトはブレンとゼブに背を向け、進んでいく。

ブレンは驚いていた。


「ブレン、ついてきて」


 ゼブは歩きながら後ろを向いてブレンに声をかける。


「あ、うん」


 ブレンは戦わないでおこうと思い、ゼブについていくことにした。あとで聞くとして。





「いらっしぁい」


 長いくらいトンネルようなところを進んだ先には、明かりが漏れ出している空間があった。そこに着くとプトはそう言った。

 その空間にはいくつもの巨大な木があり、その木にはドアや窓があり、家だとわかる。ツリーハウスってやつだ。


「んで、他はどこ行った?」


 ゼブは今度もここに来ているためわかるのだが、普段はにぎやかな場所が今日は閑散としてた。気になって周りを見渡してみると、三人以外誰もいないことに気付く。


「それは、ひ・み・つ」


「とか、言っても無駄だからな、どうせいつも通りだろ?ただ今回はこんなにも人員を使うなんて珍しいな」


 ブレンだけはわかっていなかった。わかることがあるとすればゼブとプトがさきほどと変わらず親しそうに話しているだけ。

一方、ゼブとプトは気軽に話しているようだが実際は違う。だって他のアルルーンは戦争に参加しているのだ。二人はそのことがいつも通りであることを知っているのだ。


「そうわね...いつもよりも強いのね」


「なるほど、でどこだ?」


「ルブレ・プ・ザント公国のゲルド地方ってとこ」


 確か、ルブレ・プ・ザント公国はこの大陸で一番国土は大きいが政策がうまいこといかず知能ある人々と知能ある魔物の二つに内部分裂していると聞いたことが、つまりそこで戦争が起きているのか。ただ発展途上国なので敵が強いことには疑問になる。そのなかで言われて納得する訳は。


「強いのは戦術か?」


 人が装備をきるにしてもそれで差がでるとは思えない。


「…」


 当たりか、それなら俺はまた辛くなるだろうか。でも俺は辛くなることを回避できない。だって俺は介入できない、してしまうと国際問題になり、国外逃亡なんて話ではなくなる。


「おっ」


 プトが急に抱き着いてきた。アルルーンだからか花の匂いがしてくる。ただプトはアルルーンの中でも、でかいのね。


「ごめんなさい」


 俺は今ある、卑猥な気持ちを捨てるため、プトのことを直視せず、見上げる。

ブレンはわからずにいた。だから今はなにも言わないでおこうと。


「失わせてしまって」


「気にするな、同年の子から言われると余計に自分の無気力さがはっきりとわかってくるから」


「...そうね、でもゼシャ、あなたは私のことを救ってくれたじゃない、だから自分のことを無下にしてはだめ」


 プトはそう言い、俺から離れる。

その通りだ。きっと俺はまだとあるラインを越えていない。越えてしまってはいけない。そうしたらブレンもプトも困るだろう。


「ああ、そうだな」


 俺は作り物だってわかるほどの笑顔を見せながら言う。


「さて」


 プトは手をたたき、空気感を変える。


「お祝いしなくちゃ、ちょっと準備してくるね」


 そう言い残して、家に入っていった。

 俺も迷わず、入ることにした。そのことを見たブレンも入ってくる。

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