第31話 昼寝皇子は本気を出す。

 俺はキレイな夜空があることを確認してダンジョンに向かう。

ふとして風が吹くが、気持ち悪い風だった。

 だが気の迷いだと思い、気にしなかった。



 ダンジョンに着いたが、本当は自分しかいない空間にいたかっただけ。

やっと俺が婚約を強制された理由がわかってきたのだから。昔、この大陸では戦争が起きた。各国は勝つために鉱物など資源を大量に消費した。その時にレアメタルが大量に消費したことによって、現代に影響を及ぼした。そう、枯渇したのだ。レアメタルが。

 なぜ、そんなことが婚約と関係あるか?

簡単だ。このヘイト帝国にはレアメタルが大量に埋蔵されていることが最近になってわかってきたのだ。埋蔵されている一部の量でも戦争時以上あることが判明したのだ。他国にはレアメタルがない。つまりレアメタル争奪戦になる。だから各国、このヘイト帝国に何らかの恩を作ろうとしている。そして貿易をしようとしている。

 レアメタルを貿易で得ようとしているのは戦争をするためだろう。

しかしデューレン王国は婚約を結ぶことでヘイト帝国に近づいた。


 そんな自分に嫌気が指していた。見え透いた目的のためにひどい婚約しゅだんをとられて、その上、無様にも婚約者に惚れてしまったんだ。

 普通の婚約なら、俺はこんなにも苦しまないで済んだのに。俺の婚約のせいで戦争が激化することは避けたい。またあの野原でブレンと昼寝をしていたい。

 えっ?...今、ブレンと?何を言っているんだ。マナジャを失った時、ちゃんと理解したじゃないか!!

 俺はダンジョンの壁を思い切り叩く。


俺は自身に対する怒りを隠さないままダンジョンから外に出る。ダンジョンの一階層が崩壊していることは気にしていなかった。

 ダンジョンから歩きで屋敷に向かうことにした。空を見上げると青色の衛星が光を放っていた。どこからか聞いたことだがあの衛星のおかげで夜が明るくなっていると。だから人は夜でも明かりを持たずに外に入れるのだ。


 30分で屋敷についてしまった。こんなにも近かったんだ。そう思い、屋敷いや城壁を飛行魔法で飛び越える。中庭に着地して屋敷内に入る。

 自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、


「坊ちゃま!!」


 必死そうなクリスがこっちに走ってきた。どうした?普段なら執事らしく歩いてくるのに。


「どうした?」


「ブラッドレン令嬢が何者かに誘拐されました!!」


 え?嘘だろ?

 一瞬、思考をSTOPさせてしまったが再開する。


「それはデューレン王国に向かう途中か?」


「はぁはぁ、はい」


 つまり犯人はブレンだとわかっていたということだ。エンド公爵家の家紋をつけた馬車に乗っていった。

 犯人は死の公爵と恐れられているエンド公爵家に喧嘩を仕掛けにいくほどの馬鹿か勝てると思っている者のみ。


「エンド公爵家の対応は!?」


「明日の朝から捜索する、だそうです」


 それでは遅くなる。

俺は急いで部屋に戻り、ヘイト帝国とデューレン王国の地図を取り出す。そしてデューレン王国に向かう時に通ったであろう道に赤線を引く。ここから考えろ。犯人の位置を。

 時間がかなり経っている。アジトに戻られていると考えていいだろう。しかし犯行現場からさほど離れてはいないだろう。

 俺はコンパスを使い、赤線を中心に引いていく。この中で怪しいと思われる場所はどこだ?!

 俺は寝ることすらどうでもよくなっていた。


 そして...


「大体この辺りだ」


 俺は深夜だとか気にせず、屋敷から飛び出した。一刻も早くブレンを助けたくて。

その姿をクリスに見られようが民衆に見られようがどうでもいい。

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