第32話 スラム街を破壊する
俺はスラム街に来ていた。一番、ここが怪しかった。通るであろう道の近くにあり、そしてヘイト帝国最大のスラム街。人身売買や奴隷のオークションといった城下町ではありえないことが日常茶飯事の世界だ。いっそのこと異世界と思った方がいいかもしれない。
どこだ?!ブレンは?!
俺は着地するやいなや勝手に家のドアを開けたりする。バーやオークション会場を襲撃しても見つからない。だから俺はそこで飛行魔法を使った......
見つけた。やっとブレンを見つけた。俺はそっとブレンに近づいていく。どうやら地下の牢屋に閉じ込められていたみたいだ。でも檻はない。俺が消し飛ばした。
「ブレン...」
「えっ、ゼ...ブ?」
ブレンにつけていた目隠しをとる。きっとブレンが見る景色は破壊された街だろう。
「え?ゼブ?まさかあなたが...」
「......」
今見て思うがやりすぎた。スラム街の形はなく、隕石が落ちたかのようにへこんだ地面に崩壊した壁の下敷きになった人々が倒れていたりとひどい状況だ。しかし罪悪感はなかった。むしろ達成感があった。
「帰ろっか?」
「う...ん」
俺はブレンをお姫様抱っこして屋敷に戻っていく。一晩にしてスラム街が消えたことにより、ヘイト帝国が大きく変化するとはこの時誰も思っていなかった。
中庭に着地するとすぐにクリスが来る。
「坊ちゃま...」
「ワイズ・ゼシャラルブはこの件に関しては何もしていない、そうしておけ」
「はい」
ゼブは有無を言わせずほどの雰囲気を漂わせ、クリスはたじろぐ。
俺はブレンをお姫様抱っこしたまま部屋に戻った。
きっと俺は一時期的に興奮状態に陥ているんだ。そうじゃないとトラウマレベルのことをしてもこんなにも平然としていることがおかしいのだから。普段なら絶対にしないことなのに。
「降ろすね」
俺はブレンをゆっくりとベッドの上に降ろす。そしてブレンがベッドの上で座ると俺は横に座ることにした。ブレンにとっては今日は忙しかったんだ。
「寝てもいいよ、疲れているんだろ?」
「...」
するとブレンは倒れこむ。そして目を閉じた。素直に聞くほど疲れているんだろう。人はすぐに寝られるわけがないので、俺も何も発せずにいるとついつい眠たくなり、意識を手放した。
「...」
一体どうしたのでしょうか?坊ちゃま。坊ちゃまはそこまでして婚約者であるブラッドレン令嬢を大切にしているということなのでしょうか?これは普段なら喜ぶことなのですが、坊ちゃまは聡明な方だと私は知っていますから、自身に置かれている位置を正しく理解しているはずです。なのに自身をさらに苦しめられる悪い方向にもっていこうとするのですか?
婚約内容では暗殺することしかかかれていない。誰という指定もない。つまり婚約者が自身のことを殺す危険性があるというのに。
クリスは明けてくる夜を見ながら、そう考えていた。
国外逃亡を目論む第四皇子、周りにバレバレです~他国の令嬢と婚約させられました。 隴前 @rousama
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