国外逃亡を目論む第四皇子、周りにバレバレです~他国の令嬢と婚約させられました。
隴前
第1話 昼寝皇子
「クリス」
自分は屋敷の執事を捕まえる。周りでは慌ただしかったのを覚えている。
「なんの御用ですか?ゼシャラルブお坊ちゃま」
なぜ今、こんなにも忙しそうにしているのか。
あの頃は無邪気だった、だから本当のことを理解していなかった。
「第一皇子と第三皇子、いえあなたのお兄様たちは去られました」
…あの頃か。
少し坂になった野原の上で昼寝をしている。時折吹いてくる風が気持ち良い。
名残惜しいがゆっくりと目を開ける。
「坊っちゃん、起きましたか」
「ああ」
話しかけたきたのはクリス、屋敷の執事だ。
そして自分の瞳の中に映ったのは夕暮れ時で空はオレンジ以外はなにも染まっていない。もうこんなにも時間は経ったのか。
空をオレンジ色に染めた犯人の太陽はさもやって当然のように堂々としていやがる。
俺はヘイト帝国第四皇子ワイズ・ゼシャラルブだ。皇子なのにこんなところでのんびりしていても文句は言われない。
「なんで屋敷の執事がここにいるんだ?」
「夜に差し掛かる頃、ここは危険ですので」
「そうか、では意向を汲み取って帰ろうか」
「では馬車に」
クリスの後ろをゆっくりと歩いていく
馬車を乗り込む寸前に太陽を見る。この国で俺は生きていけない、そんな気にそれはいつも俺に現実として見せてくれた。余計なお世話だ。
「いよいよ、明日ですな、坊っちゃん」
「ああ」
微弱に揺れている馬車の中、クリスに言われる。
明日には、今年15歳になる人のみ受けれる『力の付与』という儀式がある。これ次第で俺の命は決まる。
『力の付与』は風魔法や身体強化などの能力を授かれる、つまり人生を左右する重要な儀式ということだ。
特に貴族にとって跡継ぎが決まる儀式でもある。
王族でも例外ではない。俺にとってはこの『力の付与』次第で王位継承する可能性があって恐怖でしかない。
王族では『力の付与』で得られる能力で王位継承者が決まるのだ。
飛行魔法、氷魔法、古代魔法があり、この順に王位継承権が得られる。
第二皇子は氷魔法を扱えるので俺は古代魔法が欲しいのだ。
飛行魔法を得ると兄と争うことは避けられないだろうな。
…俺としては第二皇子に王をしてもらいたい。だって王なんて面倒だ。
明日の『力の付与』の授かる能力についてどうしようかと考えながら屋敷に戻って明日に備えた。
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