第2話 国外逃亡は正式にしないといけない法

「あのお方がゼシャラルブ様」

「どんな魔法を授かるのでしょう」

「きっと飛行魔法ですわ」


 『力の付与』をする場所は貴族と庶民では別れている。貴族では大教会で行われる。

周りから噂をされるがどうでもいいので無視して教皇の前まで向かう。

 『力の付与』を受ける順番は爵位が高いところからなので最初は俺からだ。


「貴殿、ヘイト帝国第四皇子ワイズ・ゼシャラルブの『力の付与』を始める!!」


 教皇は力強く言い放ち、ギュッと目を閉じる。

俺もその時が来るまでゆったりと目を瞑る。

そしてやがて言い放つ。


「貴殿の能力は…………」










「お坊ちゃま、ご様子があまり良くないように見えますが」


「ああ、すまない、今は一人にさせてくれ」


 『力の付与』が終わるとすぐに屋敷に帰宅する。

そして部屋に篭ることにした。


 な、なんでよりにもよって飛行魔法なんだよっー!!

周りの貴族どもは『飛行魔法だぁー!』『次期王にふさわしい』とか言いやがって、そんなにも王の重圧を簡単に受けたくないわ!


 ふぅー、こういう場合を想定はしていたからこのぐらいで済んだけれども、これからどうしよう。

 第二皇子との対立は確定だろう、でも争いたくない。

しかも国外逃亡も正式にしないといけないので夜逃げはできない。

国外逃亡であるのに正式にしないといけないという法があるのだ。

正式に国外逃亡するなら、その国での評価を著しく下げ、不必要と評価されることが必要だ。ほかにもいろいろあるがこれがベターだ。


  だから俺はそのベターに乗っ取ろうと思う。

まず職務は昔からしていない。王族の風習である10歳になるとお披露目会をしないといけないのだが俺はこれをしなかった。

…あれ?もしかして俺、昔から昼寝しかしてないじゃん。


 世論からの評価はそもそも評価されていない。

 そして家族とはとある一件以降あまり関わらないようにしている。

屋敷内のメイドや執事からはクリス以外とはまともに関わっていないから多分なにも思われていないだろう。


 もう寝よう。まだ昼間だけれども。

明日から行動に移そう。

 そうしてベットに向かった。






「クリス」


 クリスは執務室に呼ばれていた。

クリスは静かに執務室に入り、第二皇子の方に向き口を開いた。


「なんでございましょう、ユーロント様」


「第四皇子はどうだった?」


「…飛行魔法でした」


 クリスは少しためらった。実の兄弟を殺すなんてことをする皇子はついに自分以外王位継承者をなくそうとしていることに気付いたから。

 ユーロントは手を鼻の下に置いて少し考えて言う。


「昔に決定した婚約を使うか、クリス」


「はい」


 クリスは冷や汗をかいた。だってその婚約は第四皇子ゼシャラルブを詰ますのだから。


「伝えておいてくれ」


 ユーロントは淡々言い放った。


「はい」


 クリスは内心苦しみながら返事をした。




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