第13話 第二皇子は見落とした
「ゼブ」
「ん?」
「ん?じゃありません、部活見学しないと」
「あ、ああそうだな」
周りを見渡してみる。ブレンと俺とスティモフしかいない。
「起きたか、さっさと外に出ろ」
「すみません」
俺は謝りながらブレンと一緒にクラスを出た。フティモフは担任であるから最後に戸締りをしないといけないのだろう。だからイライラしていたのだろう。
「どこから見る?」
廊下に出て、どこに行こうかと歩きながら話す。
「人体改造部とか...いや!他には...」
え?人体改造部とか言ってやん俺の婚約者。怖いわ。能力を知ってるからさらに怖いわ。あとしれっと隠そうとしているやん。
「俺は天体観測部に行きたい」
「今、それしか出てないので天体観測部に行きましょうか」
「ああ」
二人並んで天体観測部室に入る。
「見学の方かい?」
「はい」
入るとすぐにTHE研究員みたいな恰好した人に話しかけられる。
「見学か...とりあいず部活内容を説明しよう、説明といっても、夜の時間などの使い天体を見てみようって感じで、その代わり昼間の活動大抵は教師の手伝いをすることになってる。夜の学校で部活をするためだから仕方ない。ほかに気になることは?」
これ、得じゃね?学園内で国外逃亡の準備をしても誤魔化すことができるのだ。
これによって国外逃亡にかける時間が増えるのだ。学園内なら屋敷にいるよりも動きやすいはずだ。
「特にないですね」
「もう一人の彼は...ってなにやら考え事か?」
「ハッ、すみません」
「気にしないよ」
「では」
俺はそう言い、ブレンと部室を出ていく。
「次に行きたいとこある?」
俺は部室前でブレンに話しかけた。
「庶民としてやっていくのか...」
庶民といえば、破壊を授かった庶民がいたな。そいつもこっちの味方に取り入れたら糞弟も確実に死ぬだろ。
コンコン
「どうぞ」
ガチャ
執務室に入ってきたのは何者か一瞬でわかるおじさんだ。
「父君」
ユーロントの父、つまりワイズ帝国の現王だった。
「なんの御用ですか?」
ユーロントは席の移動をしようとするが。
「よい、移動など、ここには我とお主しかいないのだから。ユーロント」
「はい」
珍しい名前呼び。ユーロントは少し驚く。
「時々外に散歩でもしてみたらいいんじゃないか?」
「え、はい」
現王も継承者問題を野放しにするほど無能ではない。
もちろん、婚約のことも婚約内容も知っている。でも直接的なことを言わない。
「お主はこの執務室に多くの時間をかけているのは職務のせいであることはよくわかるが...少しは外に出るように」
「はい」
そう言い残し現王は出ていった。
現王も今の自国のことをよく知っている。だからだ。
「国外逃亡させた方がいいことをどうして気付かない?」
王室に戻るときの廊下にて独り言を呟いた。
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