第28話 惚れかけているところ
初めて遅刻したせいなのか知らないが疲労が溜まっていた。だから油断していた。というよりかはそこまで頭が回らなかった。
俺は湯煙上がる浴場の中で金髪、赤目の婚約者と会ってしまった。幸い、お互い広い湯船の端で湯に浸かっていたため距離はあり、顔のみが見えてくる。
「…」
「…」
気まずいのとりあいずお互い黙っていた。というか脱衣所にメイドさんがいるはずだ。俺はそんなことを思い出す。しかし俺が脱衣所に来たが悪いのかメイドさんとやらはいなかった。
「メイドは脱衣所にいましたよね?」
ブラッドレンが沈黙を破ってくる。
「いなかった...」
お互い気まずいので会話が広がらない。
「...気をつかわせて」
ブラッドレンは何か小声で言う。普段なら聞こえているはずがこの状況では聞こえなくなっていた。
「そういえば、」
ブラッドレンは何か思い出したようだ。だが俺は少々今、自分が置かれている状況下を理解したいのか、急速で頭を回転させる。
俺の常識が正しければ、普通貴族が入浴する時はメイドや執事を待機させているはずだ。この前、屋敷でブラッドレンのメイドを見かけているのでこの常識にブラッドレンもあてはまるだろう。俺は違うけど。
つまり、わざとブレッドレンのメイドさんは俺を浴場に入らせたかったように思われる。...もし...かして...これは...同衾をしろということなのか?
俺はブンブンと頭を横に振る。
そんなことはありえない!わかっているはずだ。あくまで俺を縛るための婚約だ。そこにはクソ兄の意図が入っていることは明確。政略婚約というものだ。だからそこには恋なんてものは存在しない。...でも...それなら、学校でも屋敷でも俺とよく話してくれるブレンは一体どんな気持ちなんだ?俺は知らない婚約内容のことだってブレンは知っている。それでもブレンは一緒にいてくれたんだ。
「なんで今日のお昼、プトに会ったんですか?」
ブレンの怒りの笑顔を見える。あぁ、この笑顔は嫉妬から来ているはずだ。政略婚約ならばこんな気持ちにならなかったのに。
「なに微笑んでいるんですか?」
ブレンは明らかに微笑んでいることを指摘してくる。
「なに、少しブレンに惚れかけているところだよ」
「なっ!」
ブレンは一瞬固まり、そして、
「も、もう先に上がります!」
と言い残して出ていった。俺はその時、ブレンのことを見たかったが我慢してブレンの気持ちをゆっくりと考えているのだった。
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