第二章 chapter2-2
みかさが雪声に話したその内容はほんの一ヶ月程前にみかさと私が体験したとあるいざこざの話であった
「桜夜ちゃん、部活どうする?」
私立音羽学園高校に入学したばかりの私とみかさは、これからの学園生活に対しての期待に胸を膨らませていた。
「部活は音楽系の部活に入ろうかなって思ってる、この学校の軽音部は結構活発だって聞いたし、そこにしようかな」
「桜夜ちゃんがそこにするなら私もそうしようかな?」
「じゃあまずは体験入部行ってみようか?」
「そうだね、多分そのまま入っちゃうと思うけど」
軽音部が部室として使用している教室に入ると、その知名度に対し部員が妙に少ないことに二人は違和感を感じた。
しかしその時にはまだ二人はこの後に起きることは想像もしていなかった。
「観音崎みかさです、キーボードをやってみたいです」
「私は凡河内桜夜です。ギターをやってみたいです」
軽音部への体験入部で、自己紹介をした私達のことを見た先輩達は明らかに嫌悪感を表していた。
「ギター?女が?」
部長を名乗った先輩の男子生徒が明らかに見下したような口調で言った。
その口調を聞いたときに私とみかさには嫌な予感が走ったが、気のせいだと思おうとした。
しかしその二人の予感は悪い方に当たっていた。
「バンドがやりたい?勝手にやれば?」
「俺達はおままごとに付き合う気はないから」
「そうそう」
先輩達の私達に対する態度は酷い物だった。
この辺りのライブハウスで、少し人気があるバンドの彼らからすれば、後輩の練習に付き合ったりするのはただの時間の無駄だとでも言わんばかりに私達に練習どころか、その場所すら使うなと言ってきた。
そんな部活とも言えない日々をしばらくの間過ごしていたが、突然私が立ち上がると、部長をやっている先輩の顔にビンタを叩き込んだ。
「もう耐えられません、こんな部活やめさせて貰います!!」
好きな楽器を弾くことすらさせて貰えない、雑用だけさせられるそんな状態にが続くことに対して私はついに耐えられなくなっていった。
そしてそのままみかさも一緒に軽音部を退部しすることになった。
既に軽音部にその時の先輩達は卒業していなくなってはいたが、さすがに戻る気にもなれず、今に至るというわけであった。
「……ということがあったんですよ、だから私も本当はもう少し誰かと一緒にやって欲しいとは考えているとは思うんだけど、それを言うわけにもいかないんじゃないかなって。桜夜ちゃんはあれで結構、意地っぱりだから」
「なるほど……」
雪声はみかさの説明を一通り聞いて頷いた。
そして机の上に置いてあるさっきのノートを開いてみる。
「そういうことがあったんですか、それは嫌な気持ちにさせてしまうのも当然ですね。でも……」
「でも?」
このノートを見る限り、そんな事を気にしないでも良いと思います。私が言うのも変ですが……」
雪声の声からは相変わらず本心を推し量ることが難しかったが、悪いと思っているのは間違いなさそうであった。
そしてそこへ私が戻ってきた。
「ごめんごめん、もう大丈夫だから」
私は廊下からばつが悪そうにしながら戻ってくる。
それを見た雪声が立ち上がり頭を下げるが、雪声の手にしているノートを見て慌てて奪い取った。
「だからこれは見ないでって言ったでしょ」
「そうね悪かったわ」
二人の様子を見ていたみかさはくすりと小さく笑い声をこぼしてしまう。
「な、なによ」
「ううん、なんでもない」
みかさは先ほど雪声がノートを見ていたときの様子を思い出し、わざと誤魔化した。
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