第八章 chapter8-2

 昼休み、私は詳しい話を聞くために雪声の元へと向かった。


「ねぇ、雪声、なんであの時いなかったの?」


 私は、一番聞きたかったことを、ストレートにまずはじめに聞いた。


「私はね、あの時、凄く楽しみにしてたんだよ。雪声とまた一緒にいられることを」

「……ごめん……。私だって嘘はつきたくなかった。でもあの時の私はああするしかなかったの、私は人間じゃないから、いてはいけなかったの……」

「いてはいけなかったって、じゃあなんでまた帰ってきたの?」

「それは……、桜夜と一緒にいたかったから……」

「……え?」


 想定外の言葉に私は動きが止まる。


「なんてね、桜夜と一緒にいた方が私の行動が安定するらしいの。だからね」


 その言葉に今度こそ私は残念そうに肩を落とした。


「でも一番は桜夜と一緒に私がいたかったから、これは本当だよ」


 それは本当に不意打ちだった、私にはその雪声の言葉が一番心に響いき渡った。


「そ、それじゃ事情はわかったからそろそろみかさの所に行こうか」


 そして照れ隠しをするかのように私は雪声の手を取るとそのままみかさの所へと向かった。

 私はお昼の弁当を片手にみかさの隣には座ると、雪声の事を紹介した。


「みかさ、新しい私達のバンドのメンバーを紹介するよ、調雪声さん」

「雪声です、よろしく、みかささん」


 私の唐突な紹介にみかさは唖然とする。

 しかし、『ああっ』とすぐ納得した表情に変わった。


「ひょっとしてその子があの子……なの?桜夜ちゃん」

「やっぱりみかさも覚えてないか、うん、私があの時探していたのが彼女だよ」

「覚えてない?私も前に調さんにあったことがあるの?」


 私は不思議そうにするみかさの頭をくしゃっと抑えた。


「良いの、気にしないで。もし思い出せるなら思い出すだろうし、雪声もそれで良いよね?」

「う、うん。私はそれで……」


 私はこの話は急いでも仕方ないと思い、無理に続けないように話を切り、話題を切り替えることにした。


「それじゃ、折角だし三人でお昼を食べようか」

「二人がそれで良いなら、是非……」


 雪声の言葉を聞いた私は、断るはずもないと思ったが、それでもみかさに聞いた。


「私は当然良いけど、みかさも良いよね?」

「う、うん」


 みかさの返事を聞いて、雪声は少しほっとしたように息を吐くと、空いてる椅子を引き寄せて、私とみかさ二人の間に座って手にしたお弁当の包みを開けた。


「あれ?雪声さんって一人暮らしだよね?お弁当は誰が作ったの?」

「……自分で作った……」

「へぇ、凄い。私なんて、たまに作る位なのに……、あれ?」


 みかさは箸を口にくわえながら不思議そうに首を傾げた。


「そんな事ないはずなのに、これと似た様なこと話したことがある気がする……」


 私はみかさのその言葉を聞いて、きっと大丈夫だと確信を持った。


「折角だし放課後、三人で音合わせやってみようよ、二人とも大丈夫?」

「私は大丈夫だけど、雪声さんは大丈夫?いきなりで」


 みかさの心配に雪声はコクリと頷いた。


「大丈夫、雪声は凄いボーカリストなのは私が保証するよ」

「桜夜の保証はいまいちあてにならないけど、信じることにするよ、改めてよろしくね雪声さん」


 みかさはそう言って雪声に向かって手を差し出し、その手を雪声と私が握りしめたのだった。



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