第七章 chapter7-1
「あそこ、あの車でみかさに待って貰ってるの」
雪声は少し先にある車を指差した。
「みかさの馬鹿……こんな所までこなくても良いのに……」
私はそう言いながらも嬉しくて口元が緩んだ。
そして私はかけだし、雪声もそれに続いて歩いてついてきた。
私達が近寄ってくるのを見て車の中からみかさが車のドアを開けて出てくるのが見えた。
そして私とみかさが後もう少し近づけば触れあえる距離まで近づいたところで、後ろから叫び声が私達の耳に届いた。
「桜夜、みかさを守って!!」
今までの経験からだろうか、その雪声の言葉に私はみかさの事に覆い被さるように地面に飛び込んだ、そしてそれは起こった。
――ドォン!!――
みかさの出てきた車、その車が激しく音を立てて炎上をした。
「ごめんね、約束を守りたかったよ」
私はその衝撃で徐々に意識を失っていく中で小さな雪声の呟きを聞いた気がした。
******
「……ここは……?」
私はうっすらと瞳を開けた、そして祖の先には真っ白い天井があった。
気だるさの中、私は自分が今どうなっているのか確認しようと視線を動かした。
「私……は寝ているの?ここは……」
私の目に入ったのは白いリノリウムの床や壁、そして簡素なベッド、どうやら私は病院にいるらしいと言うのは何となく理解できた。
「私……何で病院に……?」
体を起こそうとしたところに部屋に入ってきた女性の看護師が慌てて止めに入る。
「先生、患者さんが目を覚ましました」
そして枕元にある無線で、担当の医師に連絡をする。
「あの……私……入院していたんですか?」
まだ混乱する記憶のまま私は看護師に恐る恐る聞いた。
「そうね、でも詳しいことは先生に聞いて貰えるかしら、もうすぐ来るから」
「は、はい……」
あれからどの位たったのだろう?雪声やみかさはどうなったのだろう?それにここはどこなのか、聞きたい事は沢山あった。
もやもやする気持ちのまま、看護師が呼んでくれた先生がやって来るのを私は待った。
しばらくして初老の男性の医師が部屋にやってきた。
「ふむ、その様子だと、自分が何故この病院にいるかわかってない、そんな感じかな?」
入ってきてベッドの横の椅子に腰掛けながら私に聞いてきた。
私はその通りだと頷いた。
「君は……交通事故にあったんだよ、丁度歩道に飛び込んできた車があって、友達を庇ってそのまま意識を失いここに運び込まれた」
目の前の医師はどこか歯切れが悪く私の質問に答えた。
「え?交通……事故?」
「ああ、そうだよ。幸い怪我はたいしたことがなかったが、意識が戻らなかったのと確認のために、事故から三日程たってはいるが……」
「そんな嘘よ、交通事故じゃない!!私が巻き込まれたのは車の爆発で……、ううん違うアレは交通事故で……みかさを庇って……」
「まだ混乱しているみたいだね、大丈夫ここはもう安全だ。君は交通事故でみかさ君を庇った、そうだろう?」
医師は背中に手を置いて私を安心させようとしてくれた。
「…………みかさはどうしました?」
まだ私はどこか混乱したまま、自分の気持ちに整理をつけようと先生に聞く質問を変えることにした。
「みかさ君かい?君と違ってたいしたこともなかったし、意識もあったから軽い検診の後そのまま帰宅したよ」
その医師の言葉に私はほっとした。
しかし自分の覚えていることと医師の齟齬については自分の目で確かめないとどうしようもないと感じていた。
「先生、私はいつ退院できますか?」
「君も意識が戻るのを待って軽い検査をしようと思っていただけだから君が大丈夫ならこれから検査を受けて貰って、問題なさそうならそのまま退院できると思うよ」
「本当ですか?」
私はその言葉にほっとしていた、一刻も早く今自分が置かれている状況を確認したかったからだ。
「それじゃあ、大丈夫そうなら準備して貰えるかな?」
「はい」
そう確認を取ると医師は私の腕につけられた点滴の針を外すように看護師に指示をすると部屋を出て行くのだった。
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