第一章 chapter1-7
私は夕食を終えて部屋に戻ってくるとノートパソコンを起動させる。
そしてパソコンが立ち上がるとすぐにチャットソフトを立ち上げた。
机の上に置いてあったヘッドセットを耳にかけ、コンタクトリストからみかさがオンラインになっているのを確認すると、通話ボタンをクリックした。
しばらく呼び出し音が鳴り、みかさがコンタクトを受理したのを確認すると、私は彼女に話しかけた。
「こんばんは、今大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「じゃあ昼間のことなんだけど……」
「雪声さんのことだよね」
「うん……」
「本当に桜夜は雪声さんのことを見たの?」
改めて聞かれて、昼間のことをもう一度思い出そうとする。
瞳をつむってあの時の光景を思い出すが、走り去っていく後ろ姿と教室で見た雪声の姿を重ね合わせる。
「……うん、間違いないと思う」
「そっか、そこまで確信があるなら明日彼女に聞いてみよう」
「でもなんて言って聞くの?さっきもそこでどうしようって話になったじゃな
い」
「それなんだよね、やっぱりまずは普通に話をしてみてかな」
「うーん、でもなんだかあの子には話しかけにくくない?」
「それは……、アイドルだから仕方ないと思うんだけど」
「そう言う物かな……」
私は今朝の彼女の自分のことを見た視線を思い出し、ため息をついた。
「けどなんで桜夜の名前を知っていたんだろうね」
「その事を話したらみかさは自意識過剰とか言っていたじゃない」
「まさか名乗ってもないのに名前を知ってるとは思わないじゃない……」
「だからそれも言ったのに……」
「ごめんごめん、でも今朝の様子と私達のことを見ていたというのがどうにも繋がらないんだけどね、私には」
私にはみかさが画面越しに悩んでる表情が見えるような気がした。
「とにかく当たって砕けろしかないのかな?」
「じゃあその砕けるのは桜夜に任せたよ」
「……え?」
「だって、どうやら私よりも桜夜の方が関係ありそうだし、だったら任せた方がいいかな?って」
「何、それ……」
「何か手伝うことがあれば手伝うからさ、頑張ってね。それじゃお休み」
まるで人ごとのようにあっけらかんとした口調でそう言うとみかさに通話を切られる。
「何よそれ……」
私はパソコンのモニターを見つめながら、がっくりと肩を落とした。
そして気を取り直すと、楽曲を書いたノートを開いた。
「この曲のことまた相談できなかったな……」
ノートに書かれたまだ完成してない曲を指でなぞりながら私は小さく呟いた。
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