第15話 理想の休日

 幼い弟妹が元気に駈けていく。丘の上まで競争だとはしゃぐ姿に口許が綻んだ。慌てて小さく咳払い。母が転ばないようにと声を張り、父は心配ないよと笑って宥めている。


 ふわりと暖かな風が吹く。優しい陽光に目を細めた。きゃっきゃと響く楽しげな声を子守唄に、僕は木陰でゴロンと横になる。

 まぁ、お行儀の悪いと遠くに聞こえる声は無視をして。被っていた帽子を目深にずらすと深呼吸。


 近づきすぎてはきっと空気を壊してしまう。この幸せは全てが危ういバランスで成り立っていて、僕はそれを護りたい。両親は仲が良く、僕は彼らが少し手を焼く長男坊。弟妹は純真無垢で可愛らしい。この心地好い風が止まぬようにと願い、僕は夢の世界へ旅立った。

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