第31話 終わりの始まり(第九十二回 #Twitter300字ss お題「来る」)

 数ヶ月に一度、届く便りがあった。

 季節の挨拶に続き、近況報告と想いの滲む愛の言葉が書かれていて、体調を気遣う言葉で締めくくる。

 初めてそれを受け取ったのは学生時代。差出人の彼女とはろくな接点も無く、揶揄からかわれているのだろうと思っていた。けれど便りは届き続ける。

 一年が過ぎ、二年が過ぎて卒業を迎え、彼女と顔を合わせることが無くなっても。

 僕から返事を出すことはなかったし、その内途切れるだろうと放っておいた。


 そして今僕はかつての学舎へと続く道の途中、小さな公園でブランコに揺られながら、ひらひらと舞う葉を目で追いかけている。

 もうすぐ彼女が来る時間。伝える返事は決めてある。


── 待たせてごめん。友達から始めませんか。

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