第30話 君と出逢った世界

 君と二人で出かけるようになって、僕の世界は見るものすべてが変わっていった。

 毎朝溜息を吐きながら乗っていた通勤電車は、君が勧めてくれた映画や音楽を楽しむ時間になった。コンビニのおにぎりだったランチは、同僚に内緒の短いデート。帰りは時間が違って会えないけれど、寄り道をして贈り物の候補を探す。

 窮屈きゅうくつだった毎日が、やりたいことであふれていく。君と出逢うまで知らなかった世界の広さに、僕は何だか感動してる。

 ピコン、とポケットに通知が届いた。


『お仕事お疲れさま。早く帰ってゆっくり休んでね』


 他愛もないこんなやり取りが心をぎゅっと温める。次のデートのプランを練りながら、ありがとうと打ち込む僕の顔はきっと、笑ってる。

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