第29話 彼女の友達

 彼女はいつも光に包まれていた。比喩ではなく、彼女の周りには妖精達が飛び交って、暖かな光の粉が舞っている。

 けれどある日、彼女から光が消えた。辛いことがあったのか、悲しいことがあったのか、僕には知るすべもないけれど。彼女の目から涙が一粒落ちるたび、妖精達がそれを追う。悲しい滴は重たくて、高く飛べないと嘆く身体が沈んでいく。

 このままでは彼女も妖精達も消えてしまう。僕なんか、そんな思いを唇噛んで押し殺して彼女の前にひざまずく。


「お友達が、心配しているよ」


 揺れる瞳を覗き込み、ほら、と彼女の足元を示してみれば、ぽろりと最後の涙が溢れた。ぱっと集まる妖精達。彼女はそっと手を伸ばす。ごめんねと呟いた彼女は笑っていた。

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