第16話 僕の宝物(第八十五回 #Twitter300字ss お題「紙」)

 祖父母の家が取り壊される。整理を手伝うと昔隠した紙切れが出てきた。小さく畳まれた古い紙切れを丁寧に広げてみると近所の地図。花丸と冠マークが付いていた。これが宝、ということだろうか。すっぽり記憶が抜けていた。

 冠の横には『お姫様』と書かれていて、ご丁寧に一文添えてある。『いつかボクがお姫様を迎えに行く!』

 一瞬の間があって顔が熱くなる。片手で顔を覆い、勘弁してよと呟いた。


「何見てるの?」


 ドクッと鼓動が跳ね上がった。止める間も無く彼女はひらりとそれを奪って目を通す。

 ぼふっと音が聞こえるくらい、彼女の顔も紅くなった。

 これ私の実家よね、と上目遣いで揶揄い混じりに問うのは僕のお姫様。宝の地図はもう要らない。

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