第17話 創造の熱量

 陽が落ちてひんやりと肌寒い。灯りの残る校舎に人影はなくて、自分の足音だけが耳に響いた。

 遅くなってしまったなと、疲れた溜息を吐く。通りかかった教室のドアが少し開いていた。まだ生徒が残っていたのかと中を覗き込み、用意していた言葉が喉の奥に貼り付いた。

 そこには、こちらに背を向けて一心に手を動かしている同僚の姿があった。

 色を創り、筆に載せ、キャンバスに所狭しと花を咲かせていく。無から有が生み出される創造の瞬間。その熱量に圧倒された。

 カタン、と小さな音がしてようやく我に返る。扉に肩を当ててしまったようだ。

 同僚が振り返る。


「見たいんなら、中入って座んなよ」


 揶揄からかうようなその微笑みが、じわりと胸に焼き付いた。

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