第18話 玉石 

 花壇のわきにしゃがみ込む後ろ姿に足が止まる。照りつける陽射しに汗がにじみ、襟元えりもとを雑に拡げた時だった。

 手元をのぞき込むと、花壇のふちに敷かれた石を手に取って、これも違う、あれも違うと選んでいるようだ。

「何してるの?」

 彼女はひゃっと変な声をあげて振り返り、尻餅をついてしまう。謝罪しつつ助け起こすと玉石たまいしを探していたのだと答えてくれた。

「たまいし?」

「時々、石の中に結晶があるの」

 とても綺麗なのよと微笑ほほえむ彼女がまぶしくて、から返事で視線を彷徨さまよわせる。少し先にきらりと光が見えた。あ、とこぼれた声に彼女も僕の視線を追う。すぐに光を拾い上げ、満面の笑みで振り返った。

「これ!」

 きらきらと眩しく輝くのは石か、それとも瞳の方か。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る