第4話 憧憬
深く息を吸い込んで、吐き出す。膝を切り、重みを感じさせない動作ですっと立ち上がる。左右の手には弓矢を持ち、衣擦れの音だけを響かせて。感情の見えない瞳で的を見据え、優美な所作で構えに入る。
音の響きやすい場内が静寂に包まれた。すべての視線が彼女へ向かい、言葉にしがたい緊張感が空間を支配する。
ゆったりと丁寧に作法のお手本を見せるかのような、それでいて自然な所作で彼女は弓を引く。一つ一つに意味があり、己の心と向き合うその一瞬。
場内の空気が一つになる。彼女の放った矢は、吸い込まれるように的へと向かった。
湧き上がる歓声とは一線を画し、彼女は静かなまま去っていく。
その後ろ姿に、貴女の隣に立ちたいと強く思う。
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