第5話 星降る湖

 ぱちぱちとまきぜる音がする。水気を含んだ重たい煙の匂いが鼻を掠める。

 迷い込んだ夜の森でようやく感じる人の気配に、足は自然と早まった。一歩一歩と近づくごとに孤独な恐怖から解放されていくようで、気持ちが上向き鼓動が強くなる。

 木々の間を抜けると、ザッと強い風が吹き付けた。咄嗟とっさに腕で顔をかばう。風が止みそろりと腕を下げるとそのまま心を奪われた。

 暗闇に揺れる小さな炎を背に、少女がひとりたたずんでいる。長い髪を風に遊ばせて、ただじっと星を見上げていた。その姿が湖へと映しとられ、まるで彼女自身が星の中を泳いでいるようだ。

 すっと流れた輝きが、静かに湖へと沈んでいく。星か涙かも分からないその輝きは、只々ただただ美しかった。

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