第10話 光の微笑み

 早春の柔らかい日差しが眩しくて僕はそっと目を細める。いつもと同じ小道をただゆっくりと歩いているだけなのに、足取りはどこかふわふわしていた。若芽の薄い緑に日が透けて、見るもの全てが輝きをまとっているようだ。

 ほんのわずか、左の視界の端に一際ひときわ明るい光があって。心地良い緊張感と言葉にならない想いが溢れてしまわぬようにと胸に手を置いた。

 すうっと大きく息を吸い込んで左へと向き直る。あの、と言いかけ、ぱちりと目が合って。ぶわりと体温が上がっていく。

 言おうとした言葉は空に溶け、君の口もとがほころんだ。

 空気を読んだ小鳥が羽ばたいて、もう春ですねと君が言う。あまりに優しく微笑むものだから、僕は返事も忘れて見惚れてしまう。

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