第29話 もう一つの物語3
(はぁ…疲れたぁ)
(彼女、ホントは早く寿命を終える運命なんじゃ…。しょっちゅう事故に巻き込まれそうになるんだけど…)
「ツライ…死にたい」
(そりゃそうだよね。毎日毎日、暴言と暴力を受けてるんだもん。それでも家の外では、とても明るい人として振舞っているなんて…しんどいよね)
(それでも社長の為に生きて欲しい…。だから、私はあなたを守るよ)
「死にたいのに何かの力で死なせてもらえない。人生に生きろと言われている気がする…。生きて私に何をしろと…?」と彼女はソファーにだらんと座り天井を仰ぎ見ていた。
「負けない。負けたくない。どんなに禁止事項が増えたとしても私の心は誰も制限できない。心が自由である限り、私が私でいられるんだ。自分で心を縛らないようにしなきゃ…」
(あなたは、そうやって自分を鼓舞してきたんだね。心を自由に…なんてとても難しくてできないよ。だから、こんなに生活を制限されてるのに、とても楽しそうに見えるんだ)
そう思っていたら誰かが話かけてきた。
(ねーお姉さん、だれ?いつもウチの様子を見に来てるよね?母の知り合い?)と高校生くらいの女の子が立っていた。
(不法侵入で訴えるよ)
(あっ、ごめんなさい。私、あの人に出会って欲しい人がいるんです。だから、生きてもらわないと困るんですが、ちょこちょこ事故に巻き込まれそうになるので、いつも様子を見に来てるんです)
(あー、わかる。母っておっちょこちょいだから…)
(あなたは、あの人の娘さん?)
(そうだよ。私は、4歳の時に死んじゃったんだけど、母は、私がはっきり見えてて、まだ生きてると思ってるんだ。他にも、おじいちゃんと女の子がウチにいるんだ)と指を指した方を見ると、2人がニコニコしてこちらを見ていた。
(母の味方なら良いんだけど、父の部屋には近づかない方が良いよ。何か邪悪なものが住んでる気配がするんだけど何かわからないんだ。母が除霊してもダメだったから、いざと言う時は全力で逃げてね)
(わ、わかった)
(母に出会って欲しい人がいるって…何か人助けの依頼ですか?)
(まあ、そんなところかな…)と今までの事を全部話した。
(アニメのような話だね。そっか…母には幸せが待ってるんだ。こっちからは、切れてしまっているように見える赤い糸、社長さんからはちゃんと繋がっているんだね)
***
「母ー!ただいま!」
「おかえり。あずき、夕飯何が良い?」
「うーん、何でも良いよ」
「また、それだ。何でも良いよが一番困る」と言って彼女は冷蔵庫の中とにらめっこしている。
***
(ホントに見えてるんだ…)
(うん。母がはっきり見えてるのは私だけみたいなんだけどね)
***
「母?幸せ?」
「なに?急に…幸せに決まってるじゃない」
「そっか、なら良いけど。これからもっと大きな幸せが待ってるよ」
「大きな幸せ?何だろ?あずきの結婚とか?…まさか、彼氏ができたの?」
「やだー、彼氏なんてできてないよ」
「もしかして、未来が見えたの?あずきは予知夢が多いからねー」
「まあ、そんなところかな。でも、未来の事は教えられない。でも、母の幸せだけは決まってるから、母の思うように進めば良いと思うよ」
「やだ…涙が出てきちゃった。なんでだろ?」
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